寝る前のワークアウトは睡眠を妨げる?

健康とウェルネス

エクササイズは、おおむね睡眠の質を上げる。だが人によっては、タイミングが重要だ。

最終更新日:2022年10月13日
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寝る前のワークアウトは睡眠を妨げる?

寝る前にワークアウトをすると、ぐっすり眠れる人もいる。だが一方で、それほど睡眠の質が上がらない人もいる。 実際のところ、エクササイズに取り組む時間帯はどれくらい重要なのだろうか? 寝る前にワークアウトをするのは良くないのだろうか?

一般的にいうと、エクササイズは間違いなく睡眠の質を上げてくれる。 「研究によると、決まったエクササイズのルーティンがあれば良質な深い睡眠などのさまざまな健康効果が得られます」と語るのは、C.S.C.S(認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)のジェイソン・マホフスキー氏(運動生理学者、スポーツ栄養士)だ。

学術誌『Advances in Preventive Medicine(予防医学最前線)』に掲載された2017年のレビューによると、分析対象となった研究の大半ではエクササイズが睡眠の質と量の改善につながっていた。

ワークアウトのタイミングについてはどうだろう?

学術誌『Sleep Medicine Reviews(睡眠医学レビュー)』に掲載された2021年の系統的レビューとメタ分析では、健康な若年成人と中年成人が夜に高負荷エクササイズをこなした場合の影響について15件のケースを分析した。 この調査では、夜間の就寝2~4時間前にエクササイズをしても、エクササイズをしなかった対照群と比較して睡眠が妨げられることはなかったと結論付けられている。 むしろ就寝2時間前にワークアウトをした人の方がスムーズに入眠でき、睡眠時間も長かった。また、30~60分のワークアウトが睡眠に最も良いことが分かった。

夜にエクササイズをすると、体が温まり、ストレスや不安が軽減されるため、睡眠が促進される(レビューの著者)。 体がクールダウンする際に眠気が生じることを「ウォームバス効果」といい、これによって睡眠が改善されることが研究で示されている。(寝る前に体は自然にクールダウンするが、温かい風呂に入ったりエクササイズをしたりすることでクールダウン開始のきっかけになる。)

おそらく、ワークアウト後にすぐに眠ろうとするのは避けるべきだろう。 就寝の1時間以上前にワークアウトを終えている限り、睡眠の質を表すパラメーターのいくつかは改善する。そんな事実が23件の研究を対象とした系統的レビューで明らかになった。 ワークアウト終了から就寝までの時間がそれより短いと、寝る前に心血管系を完全にリカバリーさせることができず、高心拍で神経系が高ぶっている状態のまま布団に入ることになって睡眠の妨げになる。

寝る前にワークアウトをするのは良くないのだろうか?

研究結果の内容に関わらず、寝る前のワークアウトが体に合わない人もいる。 そのため、夜のエクササイズによって睡眠能力が低下するかどうかは人によって異なる。そう語るのは、『The Woman’s Guide to Overcoming Insomnia(女性のための不眠症克服ガイド)』の著者であるシェルビー・ハリス氏(心理学士、臨床心理士)だ。就寝の数時間前に激しいエクササイズをすると、眠りにつきづらくなる人も一部にはいるとハリス氏は語る。「すべての人ではありませんが、この問題に悩まされる人は意外に多い可能性もあります」

重要なのは、エクササイズに対して自分の体がどのように反応するかを知り、それに基づいて(好みや生活上の必要性も考慮して)自分に最適なスケジュールを立てることだ。 自分にとっては、他のエクササイズよりも睡眠に影響を及ぼすエクササイズの種類があるかもしれない。 そのため、就寝前のエクササイズでどのような種類の運動をすればいいのか考えてみよう。

高負荷ワークアウトのHIITをこなし、寝る前に手早く軽食をとっても問題なく眠れるアスリートは一部にいる。 その一方で、ランニング後に興奮が収まらず、眠れなくなるアスリートもいる。 体の反応は一人ひとり異なるのだ。

「寝る前に超ハードなHIITワークアウトをこなすと眠れなくなる人もいます。そんな人は、夜遅くに激しいエクササイズを行うべきではない可能性もあります」とマホフスキー氏は述べている。

睡眠に問題があるなら、エクササイズのタイミングや種類を変えてみよう。 激しい運動より、適度な負荷の運動が睡眠の質の改善に有効である。それが14件の研究に関する2019年のレビューで明らかになったことだ。 より良い睡眠をとるには、ウォーキングがおすすめだ(歩数がやや多くてもよい)。

(関連記事:パワーウォーキングについて解説 - 毎週のワークアウトに加えるべきか?

学術誌『Sleep Medicine Reviews(睡眠医学レビュー)』に掲載された研究では、高負荷エクササイズなら就寝の1時間以上前にワークアウトを終えるように推奨している。そうすれば、睡眠や健康的な就寝前ルーティン(画面を見ないようにするなど)が妨げられることはない。

この原則をあなたの場合にも当てはめてみよう。 一般的にエクササイズは睡眠の質に良い影響を及ぼすという研究もあるが、一人ひとりの体がどんな反応を示すかは予測できない。 試行錯誤を繰り返し、自分に最適なワークアウトの時間を見つけるようにハリス氏は勧めている。 ハリス氏によると、ワークアウトをリラクゼーションに役立てたいなら、多くの人にとって夜にゆっくりとしたフロー、リストラティブヨガ、ストレッチなどで良質な睡眠を促すのが効果的だ。

もう一つ重要なことがある。マホフスキー氏によると、エクササイズはオーバートレーニング症候群に陥っている人の睡眠に悪影響を及ぼす恐れもある。 「オーバートレーニング症候群の代表的な症状として、体の自己修復に必要なエネルギーが不足しているため眠りが浅くなることがあげられます」とマホフスキー氏は述べている。

その場合、ワークアウトの時間帯が主たる問題ではない。 オーバートレーニングは、タフなトレーニング後に一度だけ栄養補給が不十分だったから生じるものではない。良質な栄養補給などの手段によって継続的に体をリカバリーするための十分な時間を体に与えてこなかった結果なのだ。

オーバートレーニングは、1回だけきついワークアウトをしたり、たまに食事を抜いたりすることで生じることはない。 次のワークアウトまでに、十分なリカバリーの時間を体に与えない習慣から生じる現象なのだ。 繰り返し食事を抜くことや、十分な栄養を含む食事をとっていないことも、オーバートレーニング症候群の一因になる。

文:ジェシカ・ミガラ

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公開日:2022年10月6日