デザインの舞台裏:Nikeレディースのプロ用トラック&フィールド キットの制作

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プロ用のトラック&フィールドキットの調査から発売までにかかった歳月は3、4年。

最終更新日:2024年7月12日
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デザインの舞台裏:Nikeレディースのプロ用トラック&フィールド キットの制作

パリでNikeが支援する代表チームの陸上用ユニフォームを作るのは、たやすいことではない。 デザインチームは、スポーツリサーチ、データ、アスリートからのフィードバックを組み合わせた多段階のプロセスを用いて、何年も前から計画を立てることになる。

多くのファンは完成品しか見ていないが、舞台裏では革新が続いている。 目標は、Nikeのトラック&フィールドキットが最新のテクノロジーを取り入れ、特に女性のニーズを念頭に置きながら、エリートアスリートの多様なスタイル嗜好に対応し、機能性とパフォーマンスを最大限に発揮できるようにすることだ。

「Nikeはアスリートと実にうまく連携しています」と長距離ランナーのキーラ・ダマトは、陸上競技専門ニュースサイトのCitius Magで語っている。 「何年もの間、私たちはテストと試着を繰り返し、フィードバックを提供してきました。 私たちはただ会議に参加して「こういうのがいいね」と言っているわけではないのです。ユニフォームを受け取ったらそれを持ち帰って、いつも通りに着用してテストします。 そしてアンケートに回答し、フィードバックを提供します。私たちはこのコレクションを本当に誇りに思っています。私たちのフィードバックを直接的または間接的に取り入れて設計されたものだからです」

ここでは、2024年夏の祭典を前に、デザインプロセスからアスリートによる着用テストまで、Nikeのトラック&フィールドユニフォーム製作のプロセスについて紹介する。

デザインの舞台裏:Nikeレディースのプロ用トラック&フィールド キットの制作

アスリートのためのデザイン:それはデータから始まる

2024スポーツコレクションは、Nikeがこれまでに製作したトラック&フィールドキットの中でも、最もデータに基づいたものだ。 このキットは、Nike NXTのコンピューターによるデザインとスポーツリサーチを活用しており、ウェアのデザインと構造においてピクセル単位、ステッチ単位の精度を実現している。 Nikeのチームは、スポーツリサーチラボで4Dモーションキャプチャデータを用いてアスリートの身体を研究。運動中のアスリート、熱がこもるゾーン、発汗ゾーンなどを調べ、理想的なフィット感と可動域を得るために必要な通気性と伸縮性をマッピングした。

ユニフォームには、高性能のマイクロファイバーとポリエステルの速乾素材を生み出す革新的なテクノロジー「Dri-FIT ADV」が搭載されている。 その目的は、試合中もアスリートをさらりと快適な状態に保つこと。

データ収集を終えたNikeのデザインチームは、さまざまな体型やサイズの要件を考慮しつつ、多様な種目のアスリートに対応できるようにさまざまなシルエットのウェアを作成するとともに、あらゆる性別のニーズに合わせた特別なユニフォームを作り上げた。

ウィメンズ向けトラック&フィールド用ユニフォームでは、女性アスリートがユニフォームの下に別のスウッシュブラを着用できるよう、デザインチームが内蔵ブラを再構築。その結果、複数のパーツが連動する仕様が誕生した。 メンズ用のウェアは、体のラインや種目ごとの特性に基づくシルエットに対応し、バリエーションに富む。

陸上競技がいかにダイナミックで多様性に富んでいるかを考えると、イノベーションは非常に重要だ。 たとえば、Nikeは以前のキットよりも軽い素材を使い、体にゆったりとフィットする投てき選手用のトップス(スローワートップス)を新たに発表した。 ウィメンズ向けのスローワートップスは、可動性と可動域を広げるため、背面肩部分にカットアウトを施している。 デザイナーは汎用性も重視し、ショートボトムのウィメンズ用ユニタードをラインナップに加えた。 既存のレオタードも、アスリートのスタイリングに合わせて、上にショートパンツを重ねて着用できるようにデザインされた。

Nikeのアパレルイノベーション担当副社長であるジャネット・ニコルは次のように説明している。「私たちは、あらゆる性別や体型、サイズ、機能性を考慮しています。 たとえば陸上競技では、マラソン、走り幅跳び、砲丸投げの選手がアパレルに求める性能は明らかに異なります。 データは、私たちが新たなデザインや方法を生み出すうえで、多大な影響をもたらします。 また、データをパフォーマンスの革新のために活用するだけでなく、アスリートのフィードバックもキットのデザインに取り入れました」

パリでの大会で使用される競技用キットのカラーディレクションは、「メタプリズム」と呼ばれる。 これは、光と動きを使って色彩を振動させることで、従来のフェデレーションキットの色合いを増幅させるものだ。 どのキットにも各国のナショナルカラーを使用し、代表チームの伝統的なスタイルと雰囲気を継承しながら、カラーパレットに新たな方向性を与えている。

予選や準決勝用のユニフォームには主に無地のトップスを採用しているが、決勝戦用のキットは全面プリントが特徴だ。Nikeが決勝用に特別なデザインを制作したのは、今回が初めてとなる。 コンピュテーショナルデザインチームによるデータの視覚化に支えられ、Nikeは「emotion of motion」と呼ばれる独自のコンセプトを生み出した。

画期的なことに、チームはナイキスポーツリサーチラボによる長距離ランナーのモーションキャプチャを、色分けされ変化し続ける粒子フィールドに変換した。 そしてこれらのビジュアルが、「emotion of motion」グラフィックに直接変換された。 陸上競技の種類は多岐にわたるが、運動はそれら共通の要素である。これらのキットは、最高峰のアスリートの功績を称えるために作られたものだ。

その結果、約50のスタイルと12種類以上の競技用スタイルの中からアスリートが選択できるようになった。

デザインの舞台裏:Nikeレディースのプロ用トラック&フィールド キットの制作

アスリートとともに作る:重要なのはアスリートからのフィードバック

ユニフォーム作成プロセス成功の鍵は、アスリートからの継続的な意見であるとNikeは考えている。 「アスリートたちには、ユニフォーム作成プロセスに初めから終わりまで関わってもらいました」こう話すのは、Nikeグローバルアパレル部門のリードプロダクトラインマネージャー、サラ・ガードナーだ。 ガードナーによると、2024年の陸上競技用ユニフォームのデザインインスピレーションは、2021年にNikeが米国のオリンピック選考会でアスリートに相談し、前年のデザインに対するフィードバックを得たことに始まったという。 「そのときに収集した最初のデータによって、私たちはデザイン作業に着手することができました。分析用データの収集と、アスリートとのミーティングは、私たちが制作プロセスにおいて一貫して行ったことです」と彼女は語る

ガードナーによると、フィードバックの中でも、特に投てき選手からは、パフォーマンスに配慮した軽い素材のトップスが欲しいという意見が寄せられたという。 また、男女ともに、不要な注目を集めることなく自由に動ける、タイトフィットのボトムスが求められていたという。 「女性たちからは、競技当日に選べるよう、シルエットの選択肢が多く、必要に応じて、ブラや他のスタイルのユニフォームと重ね着できることが引き続き重要であるとの意見がありました。 これらをはじめとする多くのフィードバックが、新しいユニフォームに取り入れられました」

デザイナーが新しいプロトタイプを準備すると、アスリートにそれらをテストしてもらい、素材の重さや全体的な快適さなどについて意見を求めた。 Nikeは、長時間におよぶフィードバックプロセスの重要な部分であるこれらの回答を慎重に検討して、最終的なデザインに反映させた。

アスリートの意見を参考に、Nikeはウィメンズシングレットとスローイングトップスのデザインを変更し、より控えめな外観の新しいシングレットスタイルを作り出した。 一新されたウィメンズシングレットでは、以前のユニフォームよりも胸、脇の下、背面のカバー範囲が拡大された。 デザイナーはまた、メンズ用とウィメンズ用双方のマチに新しい裏地素材を追加し、ボディ前面までカバーできるようにした。 ウォームアップラインには新しい重ね着用のスタイルが加わり、防水レインジャケットとパンツの素材は、伸縮性のある防水ストレッチウーブン素材に変更された。

2021年の東京大会に出場したハードル選手のアナ・コクレルは当時のユニフォームについて、「本当に美しかった」ものの、体にフィットしすぎて、結局思うようには動けなかったと語った。 Nikeはこのフィードバックを2024年のキットに反映させた。 「今年のユニフォームは、柔軟性や動きやすさに関しては、かなり改善されています」とコクレル。

コクレルは、ウィメンズ向けの陸上競技用ユニフォームの1つである、ユニタードの高いヒップポイントのファンだと語る。「個人的にとても気に入っています。 私は、このユニフォームをテストしたときに推奨した人物の一人です」

デザインの舞台裏:Nikeレディースのプロ用トラック&フィールド キットの制作

アスリートのために、アスリートとともに作る:アスリートは競技前のテストに参加可能

米国代表チームへの参加資格を得たアスリートは、自分のサイズと希望するユニフォームのスタイルをフォームに記入する。 また、すべてを見て試着することもできる。

その後、事前に各選手にユニフォームが届けられる。 アスリートは練習中にユニフォームを使用したり、さまざまなスタイルを試して好みのものを決めることができる。

イノベーションはパリの後も続く。 「私たちはすでにアスリートと話し合い、ユニフォームに対する最初の反応を探っています。LAでの大会に先立ち、2028年のユニフォームのアップデートで何に焦点を当てるべきかを理解しようとしているのです」とガードナーは述べている。

文:コリン・ミラー

公開日:2024年7月3日

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