速く走るためにペースを落とそう
Coaching
もっと楽に長い距離を走りたいなら、リカバリーランに注目。体が求める適切なルーチンの組み方もチェック。
「フルマラソンのタイムは?」「インターバルのペースは?」「スプリットタイムはどうだった?」など、ランナー同士のおしゃべりはペースの話題が定番。そしてもちろん、速く走るほど称賛を浴びがちだ。
これに対して、ゆっくり走ることを褒め称える人は少ない。回復を促す大事なスキルなのに、まったく過小評価されているのだ。ゆっくり走るリカバリーランの練習を取り入れれば、ランニングの習慣はさらに強化できる。
「まったく何もしないよりは、楽なペースで走りに出かけた方が気分も良くなるはずです」
ジェイソン・フィッツジェラルド
(Strength Runningヘッドコーチ)
リカバリーランとは
「リカバリーランは、1週間のうちで一番短くて楽なランです」と定義するのは、米国陸上競技連盟公認コーチを務めるジェイソン・フィッツジェラルド(Strength Runningヘッドコーチ)。The Strength Runningポッドキャストのホストとしても知られている。
リカバリーランのポイントは、走るペースを意識しすぎないこと。「リカバリーランのペースは、数値よりも負荷のレベルで意識したほうがいいでしょう」とフィッツジェラルド氏は言う。リラックスしてゆっくり走るには、3つのCを意識すればい。つまり気分よく(comfortable)、力を温存して(controlled)、会話ができる(conversational)くらいのペースだ。フィッツジェラルド氏によると、リカバリーランの負荷は全力走の10-30%程度。余裕を持って楽に取り組めることから、「セクシーなペース」と表現してもいいだろう。
リカバリーランをわざわざ取り入れるべき理由
アクティブリカバリー(ハードなワークアウト後に実践する負荷の低い運動)は、ソファで何もせずくつろぐようなパッシブリカバリーよりも優れた回復法である。フィッツジェラルド氏も「まったく何もしないよりは、楽なペースで走りに出かけた方が気分も良くなるはずです」と、アクティブリカバリーを推奨する。気分が良くなるのには科学的な理由もある。激しい運動後のアクティブリカバリーには、パッシブリカバリーよりも血中乳酸濃度の低下を早める働きがあるからだ。血液が効率的に筋肉を巡り、筋肉の自己回復を助ける。これは学術誌「スポーツ科学ジャーナル(Journal of Sports Sciences)」に掲載された研究結果からも明らかだ。
リカバリーランは、メンタル面でも効果が期待できる。きついランのメニューをこなしたり、強度の高いワークアウトと同等のストレスを感じたりした翌日は、ゆったりしたペースのランニングが筋肉を鎮め、気持ちを和らげてくれる。これはNikeグローバルランニングのクリス・ベネット(シニアディレクター)からのアドバイスでもある。
回復の促進だけでなく、リカバリーランからはさまざまなフィットネス効果も期待できるとフィッツジェラルド氏は言う。まずは体の脂肪が燃焼しやすくなる。さらには組織内の毛細血管の密度を高め、持久力を向上させる(つまり筋肉にたくさんの酸素を運べるようになる)。体に過度の負荷をかけなくても、筋肉、骨、結合組織を強化してくれる。どれも嬉しい効果ばかりだ。
つまり最大のメリットは、強度を下げたトレーニングをすることで、全力で挑みたいときのパフォーマンスを上げやすくなることだ。これは米国運動協議会が後援した研究でも証明された。ランナーをアクティブリカバリーとパッシブリカバリーのグループに分け、リカバリーの前後に走ってもらった。その結果、アクティブリカバリーのグループは、ただ休憩していただけのグループよりも長時間走ることができたのである。走行時間の差は、なんと約3倍にも広がっていた。
リカバリーランは、1週間の走行距離を伸ばしたい場合にも有効だ。単純にトレーニングの量を増やしたいなら、走る日数を増やせばよい。その増やした日は、リカバリーランに当てるのがフィッツジェラルド氏のおすすめだ。「1回のランで距離を稼ごうという意識が、また次のストレスを生みます。だから無理のないように走れるリカバリーランがいいのです」
リカバリーランをわざわざ取り入れるべき理由
アクティブリカバリー(ハードなワークアウト後に実践する負荷の低い運動)は、ソファで何もせずくつろぐようなパッシブリカバリーよりも優れた回復法である。フィッツジェラルド氏も「まったく何もしないよりは、楽なペースで走りに出かけた方が気分も良くなるはずです」と、アクティブリカバリーを推奨する。気分が良くなるのには科学的な理由もある。激しい運動後のアクティブリカバリーには、パッシブリカバリーよりも血中乳酸濃度の低下を早める働きがあるからだ。血液が効率的に筋肉を巡り、筋肉の自己回復を助ける。これは学術誌「スポーツ科学ジャーナル(Journal of Sports Sciences)」に掲載された研究結果からも明らかだ。
リカバリーランは、メンタル面でも効果が期待できる。きついランのメニューをこなしたり、強度の高いワークアウトと同等のストレスを感じたりした翌日は、ゆったりしたペースのランニングが筋肉を鎮め、気持ちを和らげてくれる。これはNikeグローバルランニングのクリス・ベネット(シニアディレクター)からのアドバイスでもある。
回復の促進だけでなく、リカバリーランからはさまざまなフィットネス効果も期待できるとフィッツジェラルド氏は言う。まずは体の脂肪が燃焼しやすくなる。さらには組織内の毛細血管の密度を高め、持久力を向上させる(つまり筋肉にたくさんの酸素を運べるようになる)。体に過度の負荷をかけなくても、筋肉、骨、結合組織を強化してくれる。どれも嬉しい効果ばかりだ。
つまり最大のメリットは、強度を下げたトレーニングをすることで、全力で挑みたいときのパフォーマンスを上げやすくなることだ。これは米国運動協議会が後援した研究でも証明された。ランナーをアクティブリカバリーとパッシブリカバリーのグループに分け、リカバリーの前後に走ってもらった。その結果、アクティブリカバリーのグループは、ただ休憩していただけのグループよりも長時間走ることができたのである。走行時間の差は、なんと約3倍にも広がっていた。
リカバリーランは、1週間の走行距離を伸ばしたい場合にも有効だ。単純にトレーニングの量を増やしたいなら、走る日数を増やせばよい。その増やした日は、リカバリーランに当てるのがフィッツジェラルド氏のおすすめだ。「1回のランで距離を稼ごうという意識が、また次のストレスを生みます。だから無理のないように走れるリカバリーランがいいのです」
ランのルーチンにリカバリーランを加える方法
方法は簡単。ただペースを落とすだけ。いつもより平坦なルートを選んだり、距離を10-20%短くしてもいいとベネットコーチは言う。負荷としては、全力走の10-30%をキープすること。トレーニングを休む予定だった日に取り入れる場合も、強度の高いランの代替にする場合も、まずは元気の回復に必要な回数だけ取り入れよう。疲れるまでやりすぎてはいけない。
フィットネスレベルが上がるにつれ、楽なトレーニングの日数を減らしてもいい。「ランナーとして成長してくると、リカバリーに必要な日数は減っていきます。でも最高にタフなランナーでさえ、リカバリーの日を最低でも週に1日は設けます。その日は通常のトレーニングよりも距離を減らし、普段より遅くて心地よいペースで走ります」とフィッツジェラルド氏は語る。その良い例が、史上最速のマラソンランナーであるエリウド・キプチョゲ選手。1kmあたり約2分50秒ペースで42kmを走れるキプチョゲ選手でも、1kmあたり約5分30秒というスローペースで約10kmのリカバリーランをすることもある。
リカバリーランは必須なのかと聞かれれば、絶対に必要なわけではない。基本的には、好きなように走ればよい。でもいつものペース(速すぎず遅すぎず)で走っているだけだと、成長も頭打ちになって情熱も停滞してしまう。そして全力で挑まなければならない場合に、走れる距離も限られてくるだろう。
リカバリーランは、トレーニングとは別の浄化作用を心身にもたらしてくれる。そしてランニングに出かける回数も純粋に増えてくるるはずだとフィッツジェラルドは言う。「優れたランナーになるには、とにかく走ること。だから走る機会が増えれば、ランナーとして成長できます」
文:アシュリー・マテオ
絵:ジャスティン・トラン