眠れない日々を過ごすあなたに、 専門家のアドバイスをご紹介
健康とウェルネス
以下のアドバイスを実践すれば、入眠がスムーズになり、貴重な睡眠時間を確保できるようになるはず。
必要な休息を取ろうとベッドに入ったのに頭が冴えて眠れないと、イライラが募るものだ。
研究によると、全世界の成人の10~15%が短期的な不眠症だとされている。これは睡眠障害が数日から数週間続く症状だ。 さらに、全世界人口の1/3が睡眠に不満を感じている。
つまり、時々うまく眠れなくなるのは自分だけではないということだ。 しかし幸いなことに、専門家によると、速やかに眠るためのコツがあるという。
不眠症の主な原因
「睡眠障害の一番の原因は、不安、ストレス、頭が休まらない状態です」と、行動睡眠医学を専門とする心理学博士のシェルビー・ハリス氏は指摘する。
その他に入眠を妨げる要因としては、 睡眠衛生の悪さが挙げられる。 「睡眠衛生」とは睡眠を促す行動や習慣のことだ、と不眠症患者の治療をする精神科医、マシュー・ゴールデンバーグD.O.(オステオパシー医学博士)は話す。 アメリカ疾病管理予防センターによると、睡眠衛生を整えるには以下の方法がある。
- 規則的な睡眠スケジュールを設ける
- 暗くて静かな、リラックスできる睡眠環境を整える
- 寝る前に多量の食事、カフェイン、アルコールを摂取しない
- 寝る前に画面(テレビ、携帯電話、タブレットなど)を見ない
- 日中に体を動かす
睡眠障害の大半は睡眠衛生に起因する、とゴールデンバーグ氏は付け加える。 「自分がなぜ眠りにくいのか思い当たる節がないという人が多いですが、実は睡眠衛生の悪さが根本原因になっているケースが多いのです」とのことだ。 しかし幸い、その多くは自分で改善することができる。
眠れないときにすべきこと
なかなか寝付けないというあなたに、 専門家が勧める、すぐに眠れる方法を紹介しよう。
ステップ1:無理に眠ろうとしない
「眠らなくてはいけないと考えすぎると緊張が高まり、かえって眠りにくくなります」とハリス氏は指摘する。 「すぐに眠れなくてイライラしはじめたら、ベッドから起きて、本当に眠くなるまで、静かに落ち着いてリラックスできることをしましょう。」
「横になって時計を見つめる時間が長くなるほど、イライラが募るものです」とゴールデンバーグ氏。 30分経っても眠れなかったら、起き上がって別の部屋で日記を書くのがよいとのことだ。 「今考えていることを書いてみましょう。できれば紙に書くのがよいです」という。 注:他にも読書(明るすぎない小さな照明を使うこと)、編み物、その他に電子端末の画面を見なくてもできる、落ち着いて楽しめることなど、心が安らぐ行動をしながらこの時間を過ごそう。
「ただ時間をつぶし、無理に眠ろうとしないことです」とハリス氏は言う。 また眠くなったら、改めてベッドに向かおう。
ステップ2:決まった時間に寝る
「毎日同じ時刻に就床、起床することは非常に大切です」とハリス氏は指摘する。 学術誌『Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism』の2020年号に掲載された研究レビュー記事によると、一定の就床時刻と起床時刻を守って規則正しい睡眠パターンを続けることは、心血管代謝の低下や座位行動などに関して、健康状態の改善につながるという。
特に重要なのが起床時刻だ。 「起床時刻を固定すると、自然に就寝時刻も固定されます」とハリス氏。
睡眠障害を抱えているときほど、起床時刻を一定にするのは難しいものだ。しかし、続けていけばいつかは入眠が早くなり、規則正しい睡眠パターンができあがるはずだ。
ステップ3:午後はカフェインを控える
長い一日を切り抜けようとするとき、カフェインは眠気を防ぐ興奮剤として有効だ。しかし日中の遅い時間帯に摂取すると、夜の眠りを妨げてしまう。 「遅い時間帯」は人によって異なる、とゴールデンバーグ氏は説明する。就寝間際に飲んでも問題ない人もいれば、就寝8時間前には控えなければならない人もいる、とのこと。
「睡眠障害が深刻な人は正午からカフェインを避け、その効果を見てみましょう」と彼はアドバイスする(ただし、夜シフトで働く人はこの限りではない)。 「カフェインを摂る時間を1日30分ずつ就床時刻に近づけていき、その影響を探ってみるのがおすすめです。」
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ステップ4:早い時間帯に食事と運動を済ます
ゴールデンバーグ氏によると、就寝前2時間の間には多量の食事を摂取しないようにすることも有効とのこと。
「食べ過ぎによって覚醒してしまう人もいます」と彼は言う。 「直後は力が抜けて食べ過ぎによる眠気を感じることがありますが、その後に覚醒するのです。」
その反対に、お腹が空いた状態でベッドに入っても、なかなか寝付けない。ひどくお腹が空いていると、気持ちよく横になるのが難しいのだ。 就寝2、3時間前に食事を終わらせておくのがよい、とゴールデンバーグ氏は経験則に基づいてアドバイスする。
寝る直前は激しい運動を避けるのも有効だそうだ。 「こちらも就寝2、3時間前に終わらせておきましょう」とのこと。
研究では、負荷を中程度にすれば就寝時刻に近い時間帯に運動しても問題ないことが示されている。学術誌『European Journal of Sport Science』に掲載された2020年の論文によると、負荷が中程度の有酸素運動やレジスタンストレーニングを行っても、就寝90分前に終わらせれば寝付きを妨げることはない。
ステップ5:就寝時のルーティンを作る
就寝前の読書やリラックス、肌のお手入れなど、長い一日の終わりに気持ちを落ち着ける時間を省略することや、その時間を焦って過ごすのは禁物だ。
「仕事から解放されて緊張を解くための1時間を確保するようにしましょう」とハリス氏。 就寝前の(少なくとも)20~30分間はスマートフォンなどの画面を見ないように、と彼女は付け加える。 画面を見ないことで、体と脳を落ち着かせ、もうすぐ就床時刻であることを認識することができるからだ。
ステップ6:「思い悩む時間」をあらかじめ設定する
不安感のために眠れない場合は、就寝時刻のずっと前に「思い悩む時間」を設けておくとよい、とゴールデンバーグ氏はアドバイスする。
「この時間に、今日やり遂げたことを記録し、明日やらなくてはならないことを書き留めます。 気がかりなことをすべて書き出すことで、寝る前の頭を空っぽにするのです」とのことだ。
いざベッドに入ったときに心配事が頭に浮かんできた場合は、「すでに書き留めたのだから翌朝起きるまで考える必要がない」と、自分に言い聞かせるとよい。 頭の中で何度も繰り返されている「やることリスト」が消え、そのうちに眠りに落ちるはずだ、とゴールデンバーグ氏は言う。
ステップ7:瞑想を始める
「1日に5分でもいいので瞑想の習慣をつけると、大いに効果があります」とハリス氏はアドバイスする。 睡眠時間を削って瞑想する必要はないが、リラックスタイムのルーティンに瞑想を組み込むのは効果的だ。
(関連記事:研究者に聞く、瞑想とマインドフルネスエクササイズのメリット)
ゴールデンバーグ氏によると、マインドフルネスはベッドに入っても眠れないときに効果的だが、思いどおりにそれを活用するには定期的な練習が必要だ。 「必要な時に使えるようにするには練習が必要です」という。
何から始めればいいかわからない、という人にゴールデンバーグ氏が推奨するのは、Headspaceのような瞑想アプリ。 このアプリは瞑想の方法や自分に合った瞑想スタイルを知るのに役立つガイドだ。気持ちが落ち着かない夜、このスキルを使えば心をコントロールして落ち着きを取り戻せるだろう。
文:エイミー・マーツラナ・ウィンダール