プッシュアップはどの筋肉に効くか?
スポーツ&アクティビティ
プッシュアップで使われる筋肉について解説し、初心者でも安心して取り組めるようにアレンジする方法を紹介する。
人生のある時点でほとんどの人が行ったことのある(または試してみたことのある)定番のエクササイズといえば、プッシュアップがリストの最上位に挙がるだろう。それには十分な理由がある。
ホテルの部屋からお気に入りのハイキングコースに至るまで、この動きは事実上どこでも可能だからだ。 この動きを定期的に行うことのメリットを裏付ける研究結果も豊富にある。 また、言うまでもないが、この動きは健康を保つ手段にもなり得る。
たとえば、2019年に『JAMA Network Open』に掲載された男性消防士を対象とした調査によると、30秒間にプッシュアップを40回以上できる人は、10回以下しかできない人に比べ、心血管障害のリスクが大幅に低いことが明らかになっている(調査期間は10年間)。
ここでは、よりよいプッシュアップを行うための方法を解説する。まずは、それを達成するための筋肉の説明から始めよう。
プッシュアップはどの筋肉に効くか?
プッシュアップは上腕二頭筋に効くのだろうか? もちろんだ。しかしそれは、効果がある1つの筋肉群に過ぎない。そう語るのは、ストレングス・アンド・コンディショニングのトレーナーであるレダ・エルマルディ(The Gym Goatの認定ストレングス・コンディショニングスペシャリスト)。彼によると、最も鍛えられる筋肉は3つある。
· 上腕三頭筋:上腕の裏側に位置する筋肉群。肘関節を伸ばしたり手首を曲げる時に使われる。
· 上腕二頭筋:上腕の表側に沿った、腕の主要な筋肉の1つ。肘関節を曲げたり、前腕部を頭の方へ持ち上げる時に使われる。
· 大胸筋:胸部に位置する筋肉群。肩関節を伸ばしたり、肘関節を曲げるのをサポートする。
動きの大半を担うのは上記の筋肉だが、これら以外の筋肉も動きに関与している。 認定ストレングス・コンディショニングスペシャリストのギャレット・シーキャット(Absolute Enduranceの創設者)によると、体を落として持ち上げる際に、コアマッスルが鍛えられて姿勢をまっすぐに保てるほか、肩の上部で「キャップ」の役割を果たす三角筋も鍛えられるという。 また、大腿四頭筋(大腿前部の大きな筋肉)も、安定化のためにある程度関与することになる。
フォームを完璧に保つためのエキスパートからの助言
プッシュアップの成果を得て、筋肉をより効果的に鍛えたいのなら、他のタイプのエクササイズと同様に、良いフォームを保つ必要がある。 シーキャットによれば、基本的なフォームのヒントは次のとおり。
- まず、プランクの姿勢を取り、両手を肩幅より少し広めに開き、指をいっぱいに広げて体をしっかり支える。
- この時、肘は体の内側に入った状態になっていること。
- 体を上まで持ち上げたら息を吸い、落としながら息を吐き、下まで落としたら息を吸い、再び持ち上げながら息を吐く。
適切で安定したフォームであれば、プッシュアップは3秒ほどで完了すると、シーキャットは言う。 何よりも大事なのは、焦らずにゆっくりと、背筋をまっすぐに保つことだ。 彼によると、フォームに関して最も起こりやすい間違いは、体を落とす時に腰が下がってしまうことだという。これは通常、疲労が原因で起きる。 このような場合は、少ないレップ数をより頻繁に行うようにして、持久力をアップさせることに集中してほしい。 さらに、ワークアウトのルーティンにコアエクササイズをもっと取り入れてみよう。コアを強くすれば、運動中に腰が下がるのを防げるからだ。
(関連記事:トレーナーに聞く、効果的な自重胸筋ワークアウト)
適切なフォームで標準のプッシュアップを10回以上できたら、強度を増したアレンジを加えながらさらに続けてみよう。 たとえば、2016年に『Journal of Physical Therapy Science』に掲載された研究結果によると、両手を近づけることで、ワークアウトの効果は胸の筋肉により反映されやすくなるという。 そして、両手をより外側に置くと(両肩の真下か、さらに離れた位置)、三頭筋がさらに鍛えられるという。
また、プッシュアップのスピードやレップ数などで調整することもできる(たとえば、動きのスピードを可能な限り落としてコアに働きかけるなど)。 プッシュアップとプッシュアップの間にプランクジャックを加えて、持久力を高めることもできる。プッシュアップの最初の体勢から足を勢いよくサイドへ開き、体を持ち上げた時に内側へ戻すのだ。 あるいは、動きの間、片足を地面から数インチ持ち上げたままにすることで、バランスを鍛えながらより多くのインナーマッスルを使うこともできる。
初心者のスタートライン
プッシュアップをこれまで定期的に行ったことがない場合(またはこれから初めて行う場合)は、動きに慣れるために、少し手を加えたパターンではじめた方がいいかもしれない。
よくあるアレンジは、膝を落として行う方法。これは単純に、体を落として持ち上げる動きを、膝を地面につけたまま行うことだとエルマルディは語る。 ただし、膝を落とした状態で行うと腰が下がりやすくなるため、背筋をまっすぐに保ち、適切なフォームを維持できるようにゆっくりと行うことが肝心となる。
プッシュアップをサポートするもう1つの方法は、両腕をボックスやベンチの上に置き、高さを付けた状態でエクササイズを行うこと。 こうした方法なら、体が床から離れる時の強い抵抗をなくした状態でプッシュアップの動きができる。
アレンジをしてもしなくても、一貫性が重要であることを忘れずに。初心者ならなおさらのこと、とシーキャットは言う。 ある調査では、回答者の大半が、プッシュアップを連続で5回もできないことが明らかになっている。だから、なかなか2桁に辿り着かなくても心配はいらない。 他のタイプのエクササイズと同様、緩やかな進歩が鍵となり、やがて回数が増えていくかもしれない。そしてその過程で、筋肉がすっかり鍛えられることだろう。
文:エリザベス・ミラード