大腿四頭筋が優位なランナーとは?また、そのリスクについて解説。

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大腿四頭筋が優位に働いているかどうかを判断する方法に加え、その状態に対処してけがを予防し、パフォーマンスを高める方法をご紹介。

最終更新日:2023年5月30日
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大腿四頭筋が優位なランナーとは、またそのリスクについて解説。

走った後に大腿四頭筋にかなり張りや痛みを感じる、走行距離を増やすと膝に痛みが生じる、あるいはスクワットをしても大臀筋に刺激を感じられないといった場合は、大腿四頭筋が優位に働いている(つまり大腿四頭筋を使い過ぎている)可能性が高い。

大腿四頭筋が優位に働くランナーであること自体は問題ないが、負の連鎖反応が起きることも多く、フォームが崩れたり、膝の痛みやシンスプリントのようなランニングのけがに発展するおそれがある。 以下で、大腿四頭筋が優位に働いているかどうかを判断する方法に加え、その状態に対処してけがを予防し、長距離ランでのパフォーマンスを高める方法をチェックしよう。

(関連記事:エキスパートが教える、けがをせずにランニングの距離を伸ばす方法

大腿四頭筋が優位に働くとは?

大腿四頭筋が優位なランナーとは、またそのリスクについて解説。

「大腿四頭筋が優位に働く」とはどういうことだろうか? これは文字通り、太もも前側の4つの筋肉から成る大腿四頭筋が、ハムストリング、大臀筋、ふくらはぎの筋肉といった脚の裏側の筋肉より多く使われることでアンバランスを引き起こしている状態を指すと、C.S.C.S.(認定ストレングス・コンディショニングスペシャリスト)、登録栄養士、登録臨床運動生理学者の肩書を持つジェイソン・マホフスキーは説明する。

大腿四頭筋は、ランニングをはじめ、下半身を動かすあらゆる運動に欠かせない動力源であるが、過度に頼ると問題を引き起こすおそれがある。 「大腿四頭筋が優位に働いているということは、運動時の力の配分が大腿四頭筋に偏り過ぎているということです」とマホフスキーは指摘する。

大腿四頭筋が優位に働いているかどうかを判断する方法

大腿四頭筋が優位なランナーとは、またそのリスクについて解説。

ランニングを習慣にしていて太ももや大腿四頭筋にかなり強い痛みや張りを常に感じる場合や、その他の運動中に大腿四頭筋が働く感覚はあるものの、大臀筋、ハムストリング、ふくらはぎにはそれほど刺激を感じない傾向がある場合は、大腿四頭筋が優位に働いていることの現れだとマホフスキーは言う。

これが原因で、大腿四頭筋や股関節屈筋のストレッチをするときに極度の硬さを感じることもある。 ヒップエクステンションが十分にできないと感じる人もいるかもしれない。 こういった初期の兆候はとらえにくいが、連鎖反応をもたらし、最終的に痛みを引き起こすおそれがある。

大腿四頭筋が優位になっている証拠の一つになるのが「ランナー膝」。使い過ぎによる損傷を引き起こす膝蓋大腿関節痛症候群の俗称で、膝に痛みをもたらす原因としてよく見られる障害の一つだ。 なぜこのような障害が生じるのだろうか?

「大腿四頭筋が優位に働く人は、必ずと言っていいほど大腿四頭筋が硬い。そのせいで膝蓋骨が引っ張られているのです。 それによって膝蓋骨が膝の関節を圧迫し、歩くときや階段を下りるときに突然、膝に痛みが出ます」と説明するのは、理学療法博士であり、 C.S.C.S.でもあるグレイソン・ウィッカム。

大腿四頭筋や股関節屈筋の硬さは、すねの圧痛や疼痛(シンスプリント)のほか、腰の痛みやけがの原因にもなりかねない。 「腰の痛みは、腰の可動性に加え、特に大臀筋の筋力や活性化を導く能力が足りないことの現れとも考えられます。 大臀筋の筋力や可動性、活性化を導く能力が足りないと、腰で補う必要が出てきます。 このように多くの連鎖反応が起きます」とウィッカムは語る。

端的に言うと、大腿四頭筋が優位に働くことで、関節や筋肉に過剰な負荷がかかるということだ。

「体は機械のようなものです。ある程度は力に耐えられますが、力が度を越しているにもかかわらず使い続ければ故障につながります」とマホフスキー。 ウィッカムは、最終的に膝の軟骨組織がすり減るおそれがあるため、体の声を聴き、痛みを我慢しないようにすることが重要だと続ける。

他の筋肉より大腿四頭筋が常に「優位に働いている」なら、大腿四頭筋がとても強化されているに違いないと思う人もいるのではないだろうか。 一般的にはその通りなのだが、大腿四頭筋が優位に働くことで、その筋力が衰えている可能性もあるとマホフスキーは指摘する。

では、痛みや硬さ以外から、大腿四頭筋が優位になっているかどうかを知るにはどうすればよいのだろうか? 1つの判断材料として専門家が用いるのは、基本的な自重スクワットのフォームのチェックだ。 腰を落とすときに腰が後退せず膝が前に出過ぎている場合は、大腿四頭筋に頼り過ぎているサインかもしれないと、マホフスキーは説明する。

ウィッカムは、「ほんの少しでもかかとが地面から浮いているようであれば、それは大腿四頭筋が優位になっていることの現れです」と話す。 このテストに加えて、資格を持つ理学療法士や運動生理学者、パーソナルトレーナーに直接見てもらい、大臀筋やハムストリングをどの程度使えているかをチェックする筋肉のテストで、大腿四頭筋の優位性の判断を助けてもらうことも可能だ。

大腿四頭筋が優位になるのはなぜか? これは良くないことなのか?

大腿四頭筋が優位なランナーとは、またそのリスクについて解説。

大腿四頭筋が優位になることに限らず、あらゆる運動機能障害の原因は、可動性、安定性、フォームが関連する問題にあり、こういった問題はそれぞれ別の問題を生むきっかけになっている可能性があるとマホフスキーは語る。

なかでも足、腰、足首の可動性が不十分だと、ランニングで大腿四頭筋が優位に働く原因になりうる。 「これらの関節の可動性が足りない場合、体がそれを補おうとして運動パターンが崩れてしまいます」とウィッカム。

安定性の不足から大腿四頭筋が優位になる場合もある。安定性とは体の平衡を保ち、運動時に関節を支える機能だ。 「たくさん走っていても、可動性の向上や筋力トレーニングに取り組んでいないために臀部の活性化が不十分で、臀筋が全体的に弱いランナーを目にします」とウィッカムは話す。

そして、フォーム、つまりランニングの足運びの改善に取り組まなければならない可能性もある。 「膝を曲げるときにふくらはぎばかりに頼っていると、大腿四頭筋が優位になりやすいです」とウィッカム。 マホフスキーによれば、悪い姿勢や、脚を体の前に伸ばし過ぎるオーバーストライドも、ランニングのフォームが崩れ、大腿四頭筋でそれを補う原因になる。

ただし、「大腿四頭筋が優位に働くこと自体は、痛みや機能障害が起きない限り、悪いことではありません」とのこと。 たとえば大腿骨や脛骨の長さとの関係で、遺伝的に大腿四頭筋が優位になりやすい人もいると、ウィッカムは説明する。 また、マホフスキーによると、大臀筋やハムストリングの筋力が十分にあり、可動性の向上にも取り組んでいる限り、大腿四頭筋が優位になっているからといって必ずしも問題に発展するわけではないとのことだ。

大腿四頭筋が優位に働く状態を元に戻せるか?

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大腿四頭筋が優位に働く状態を元に戻すための第一歩は、大腿四頭筋に頼っている要因を、よくある3つの中から特定し、取り除くことだ。 複雑に考える必要はなく、「可動性、安定性、フォームのチェック」に着目することだと、マホフスキーは言う。

シンスプリントに対処しているのなら、ふくらはぎの可動性と伸縮性を改善しよう。 大腿四頭筋または股関節屈筋が非常に硬いためにヒップエクステンションができない場合は、フォームローラーでほぐしたり、硬い部位をストレッチしたりしてみるといい。 「見落としがちなのは、動作を正しく行うのに必要な可動性を身についていなければ、正しいフォームを習得するのは不可能だという事実です」とウィッカム。

可動性に問題があって大腿四頭筋が優位になっているランナーに役立ちそうなルーティンを、一つ挙げてみよう。 走る前に、まず、フォームローラーなどで筋肉や筋膜をほぐしてから、アクティブストレッチや筋肉を活性化させる運動を行う。 スタティックストレッチはけがをしやすくなるおそれがあるので避けたほうがよいと、ウィッカムはアドバイスする。

「体を積極的に動かす運動のためには、アクティブストレッチを行う必要があります。 関節を伸ばし、筋肉の活性化と収縮を促したり、関節を特定の位置に保って、可動域全体を使って動かしたりしましょう。 徐々に関節の可動域が広がるうえ、筋肉の活性化と収縮を導く機能も向上します。」

大臀筋やハムストリングが弱い場合は、背面の筋肉の運動連鎖を指すポステリア筋群を強化するエクササイズを取り入れてみよう。 ルーティンに組み込みやすく、絶対確実と言ってもいいエクササイズとして2人の専門家がそろってすすめるのは、シングルレッグ ヒップブリッジのほか、シングルレッグ ルーマニアン デッドリフトやバンドを使ったワークアウト。 ポイントは、基礎をおろそかにしないよう心がけることだ。

「根本的な原因を突き止めない限りは、運動パターンの定着に取り組み続けることになるでしょう。 大臀筋やハムストリングの動きをより厳密に区別し、筋肉を活性化させるテクニックやアクティブストレッチによって、筋肉の活性化を導き、筋力や安定性を向上させる必要があります」とウィッカムは語る。

つまり、「良いエクササイズも誤ったやり方で行っていては、何もしないのと同じです」とマホフスキー。

もう一つのポイントとしてマホフスキーが付け加えるのは、ランニングフォームだ。「一歩が大きすぎるオーバーストライドになっていたり、過度に上下に跳ねたりしている場合は、こういったフォームを修正することも、ひずみが生まれるような力を減らすことにつながります」とのこと。

何から始めればいいのかわからないなら、 プロのランニングコーチ、理学療法士、運動生理学者に相談し、大腿四頭筋が優位に働く根本的な原因を突き止め、自分なりに体の平衡を取り戻す手助けをしてもらおう。

文:カイリー・ギルバート

大腿四頭筋が優位なランナーとは、またそのリスクについて解説。

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公開日:2023年5月22日

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