パワーウォーキングについて解説 - 毎週のワークアウトに加えるべきか?
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速いペースでのウォーキングが健康に大きなメリットをもたらすことは、さまざまな調査で明らかにされ、専門家からも指摘されている。
ウォーキングは、手軽に取り組むことができ、かつ効果の高い運動の1つ。パワーウォーキングは、この基礎的な運動をレベルアップさせたエクササイズだ。
AFAA認定グループフィットネスインストラクターと、FIA認定ファンクショナルエイジングスペシャリストの資格を持つグレッチェン・ゼレクは、こう説明する。「パワーウォーキングでは、腕を力強く振り、かかとからつま先へと体重を移動させて、速い速度で歩きます。一般的なウォーキングは下半身の運動と見なされますが、パワーウォーキングは、全身を使う有酸素運動で、体幹も引き締められるのです」
パワーウォーキングでは標準的なウォーキングと比べて速く歩くが、ランニングのスピードよりは遅い。 参考までに言うと、パワーウォーキングの一般的なスピードは、時速4~5マイルほど。
パワーウォーキングを行うことで、健康向上の要である1週間の運動目標達成に取り組めるというわけだ。 米国疾病管理予防センター(CDC)は、時速3マイル以上のペースでさっさと歩くウォーキングは、強度が中程度の有酸素運動に相当すると説明しており、このウォーキングを週に150分以上行うことを推奨している。
パワーウォーキング初心者や、自分に適したペースを探っている人は、さまざまなスピードで移動するときの自分の体の動きに着目してみよう。
「ランニングやジョギングと違って、パワーウォーキングでは、少なくともどちらか片方の足が常に地面に着いた状態になります」と語るのは、ACE認定パーソナルトレーナーのマリッサ・ミラー。 「だからパワーウォーキングは負荷が低く、膝に優しい運動として、ランニングの代わりに取り組めるのです」
さらにパワーウォーキングでは、足運びや歩幅を強く意識する。
ミラーはこう説明する。「パワーウォーキングでは、同じ時間当たりの歩数を増やすこと、あるいは、より短い時間で同じ距離を進むことが目標になります。 つまり、足運びを速くするか、歩幅を広げるかです。どちらか自分のフィットネスレベルに合うアプローチを選べます」
パワーウォーキングができているかどうかを判断する簡単な方法は、心拍数を測ることだ。 米国疾病管理予防センター(CDC)では、強度が中程度の有酸素運動を行うときの心拍数は、最大心拍数の64~76%の範囲内であるべきだとしている。自分に適した最大心拍数は、年齢から計算できる。
1分当たりの最大心拍数を推定するには、220から年齢を引けばよい。 たとえば40歳なら、年齢から推定される1分当たりの最大心拍数の平均は180。 この場合、強度が中程度の有酸素運動を行うときの目標心拍数は、115~136になる。
パワーウォーキングの正しい取り組み方
ウォーキングに出かける前に、数分間のウォームアップで筋肉を温めるよう、ミラーはアドバイスする。
「パワーウォーキングをすると、通常のウォーキングよりずっと大きな負荷が体にかかるので、まずはふくらはぎ、鼠径部、背骨(脊椎伸筋のこと)、大臀筋をストレッチして、柔軟性と可動性を高め、けがを防ぎましょう」
最初の一歩を踏み出す準備が整ったら、次のような歩き方で前に進んでみよう。かかとで着地し、つま先で地面を押しながら、反対の足で次の一歩を踏み出す。 どちらかの足が常に地面に触れていなければならないと、ゼレクは話す。
あごが地面と平行になるように、頭は常に上げておこう。 「肘を90度に曲げ、歩くときに脇に軽く触れるように、前後に力強く振りましょう。手は軽く握ります」とゼレクはアドバイスする。
さらに、コアを引き締めると姿勢が良くなるとミラーは話す。 「背中や肩が曲がると、骨盤が前に傾いて足運びの効率が悪くなるうえ、長期にわたってバランスを崩す可能性があります」
骨盤をニュートラルな位置に保つ(腰が前にも後ろにも傾かない状態)歩き方を目指そう。 背中や肩が曲がると骨盤が前に傾き(骨盤前傾)、股関節、膝、腰に痛みが生じるおそれがある。 一方、尾骨が後ろに傾き過ぎると(骨盤後傾)、座骨神経痛を引き起こすことがあるので注意しよう。 いずれの場合も、足運びの効率が悪くなり、長期にわたってバランスを崩す原因になる。
では、パワーウォーキングに取り組む主なメリットをいくつかチェックしよう。
パワーウォーキングが健康に与える4つのメリット
1.バランス感覚の向上
姿勢の安定性、またバランス感覚の維持や回復に早歩きがもたらす効果に着目した研究がある。 2016年に学術誌『BMC Women’s Health』で発表された調査では、早歩きをすることで、対象者が目を閉じたときの姿勢の安定性が保たれることがわかった。これは、空間的な位置感覚や視認性が損なわれたときに転倒するリスクを低減する効果を示す結果だ。
この調査の対象者は、デスクワークに就く50歳以上の女性104人。 対象者には、フィットネストラッカーを装着した状態で、 パワーウォーキングまたは通勤ウォーキングを1日に合計30~35分、週に5回以上行ってもらった。 10週間後、対象者はセンサー付きの特別な測定機器の上で30秒の運動を行い、目を開けた状態と閉じた状態で、姿勢の安定性をテストした。
この調査結果から、早歩きによって、目を閉じたときの姿勢の安定性が保たれることが示され、ひいては空間的な位置感覚や視認性が損なわれたときに転倒するリスクを低減する効果があるということがわかった。
2.消化機能の改善
2020年に学術誌『PLoS One』に発表された1週間の観察研究では、毎日のウォーキングと女性の消化器系の機能改善に関連性があることが示された。
日本で行われたこの調査の対象者は、軽度の過敏性腸症候群(IBS)の症状がある(投薬治療はしていない)大学生101人。対象者は、1週間歩数計を装着し、症状の変化を把握するよう指示された。1週間後、女性の対象者から不快感が大幅に軽くなったとの報告が寄せられた。女性は歩数も多かった。
この論文では、1日に9,500歩歩くと、4,000歩しか歩かない場合と比べて、IBSによる不快感を50%減らせる可能性があると推測。 食後のウォーキングで胃腸が刺激され、食べ物が消化器系を移動する時間が短縮されるのではないかと論じている。 また、この結果は女性にだけ見られたという。これは、IBSの症状はそもそも性別で差があり、女性は膨満感や便秘に悩みがちだが、男性は下痢の症状がある人が多いということが関係していると考えられる。
3.血圧の低下
2018年に『PeerJ』で発表された研究によれば、習慣的なウォーキングは、高血圧の症状がある成人に効果をもたらす。 この研究では、6か月にわたる調査を実施。デスクワークに就く男女約300人をそれぞれの平均歩行速度にしたがってグループ分けし、変動的なウォーキングワークアウトスケジュールを課した。 ワークアウトは中程度(1日15~30分)からスタートし、徐々に負荷を高めた(週に5日、さまざまなペースで50~70分)。
調査の結果、対象者全員の収縮期血圧(心臓が収縮して血液を押し出すときに生じる圧力)が低下したことがわかった。 調査開始時に高い血圧値を示した対象者は、血圧が特に大きく下がった。 さらに、ウォーキングの速度が上がると、体重や腹囲の減少などが見られ、循環器系疾患の他のリスク因子の減少にも効果があることが示された。
ミラーはこう語る。「パワーウォーキングは、優れた有酸素運動の一つであり、心筋を強化できます。 心臓が血液を送り出す力が強くなれば、効率よく楽に血液を循環させられるようになり、動脈にかかる圧力が抑えられます」
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4.寿命の延伸
2019年に『Mayo Clinic Proceedings』に掲載された10年にわたる研究によると、早歩きの人は平均余命が長くなる傾向があることが示された。
英国で行われたこの研究では、ボランティアの歩行速度、ボディマス指数(BMI)、腹囲、体脂肪率など、成人474,900人超(平均年齢52歳)のデータを調査。 体重にかかわらず、習慣的にパワーウォーキングをする(時速4マイル以上のペースで歩く)人は、時速3マイル以下の人より、寿命が13~24年長くなる可能性があることがわかったのだ。
これは観察研究であるため、歩行速度は長寿の目安にすぎないと、研究者は補足している。 歩く速度にかかわらず、パワーウォーキングは一般的に優れたエクササイズであり、身体の健康を促し、寿命を数年延ばす効果があることがこの調査からも読みとれる。 また、ウォーキングが、ランニング、縄跳び、クロスフィットといった他の有酸素運動よりも負荷の低い運動であることは言うまでもない。
結論
パワーウォーキングを習慣にすれば、バランス感覚の向上、血圧低下、消化機能の改善が期待でき、さらに寿命を延伸できる可能性があると考えられる。 今の健康状態に合っていると医師のお墨付きをもらったら、試してみてはどうだろうか。
文:エイミー・カペッタ