プライオメトリクストレーニングのメリット
スポーツ&アクティビティ
このエクササイズでワークアウトをレベルアップさせよう。
プロアスリートたちのパワーは、どうやって身につけるのだろう。答えのひとつがプライオメトリクスだ。 プライオメトリクスは、高負荷の激しいトレーニング。ボックスジャンプ、スクワットジャンプ、フォワードホップなど、瞬発力のあるすばやい動きを中心に組み立てる。 ここでは、Nike Well Collectiveコーチのデイビッド・カーソンが「最高のパワーエクササイズ」と呼ぶプライオメトリクストレーニングのコツを紹介する。
プライオメトリクストレーニングとは?
全米スポーツ医学協会(National Academy of Sports Medicine)によると、プライオメトリクスとは、筋力とコンディショニングを向上させて大きな力をすばやく生み出す能力を高めるエクササイズのこと。 数十年前に東欧の陸上競技選手のトレーニングに採用され、今ではバスケットボール、バレーボール、テニス、野球など、他のスポーツに取り組むアスリートにとっても定番のトレーニングになっている。 「プライオメトリクスは速筋を使うので、短距離走やオリンピック種目のウェイトリフティングのようなアクティビティでのスピードや筋力の強化に効果的です」と、Nike Well Collectiveコーチのベティーナ・ゴゾは話す。
プライオメトリクスの仕組み
- エキセントリック(伸張性運動):この段階(コッキング、ローディング、レディネス、プレパラトリーとも呼ばれる)では、まず筋肉が伸ばされ、エネルギーが蓄えられる。 バスケットボール選手がリバウンドシュートを決める前に、膝を曲げ、腕を下げた状態を思い浮かべるといい。
- アモティゼーション:ごく短いこの休止段階の間に、筋肉が安定し、蓄積されたエネルギーを放出する準備が整う。 休止時間が短いほど動きがパワフルになるため、プライオメトリクストレーニングでは、この段階の時間を短くすることを目指す。
- コンセントリック(短縮性運動):バスケットゴールに向かってジャンプする時のような爆発的な動きで、筋肉からエネルギーが放出される。
プライオメトリクスのメリットとは?
プライオメトリクストレーニングは、運動能力を高め、日常生活の向上にも役立つ。 この運動は、筋力とパワーの強化に最適。投げる、打つ、ジャンプする、走るといったスポーツのさまざまな動きを向上させるとカーソンは説明する。 全米スポーツ医学協会によると、プライオメトリクスは垂直跳びの高さ、走り幅跳びの飛距離、走るスピード、敏捷性のほか、投げる動きや打つ動き、打撃速度などを高める効果が期待できる。
自宅でも実践できるプライオメトリクスは、バランスや敏捷性を向上させるので機能的な動きの強化に役立つ。 プライオメトリクスで、日常の動作に安定性をもたらすことができるのだ。 プライオメトリクス運動をワークアウトのルーティンに加えるもう一つのメリットは、加齢とともに低下する骨密度の維持や増加に効果があることだ(カーソン談)。 プライオメトリクスは心拍数を上げる運動だが、有酸素運動と考えるべきではないとカーソンは言う。「短期間に負荷をかけ過ぎるとけがをしてしまい、やりたいワークアウトができなくなります」
ワークアウトの種類
プライオメトリクス運動には、ジャンピングジャックやスクワットジャンプといった下半身の運動が多い。だがメディシンボールスラム、プライオメトリックプッシュアップ、チェストパスなどといった上半身の運動も組み込める。 カーソンは、次の4つの用語を使ってプライオメトリクス運動を説明する。
バイラテラルこの運動では、両脚を同時に使う。 プライオメトリクスの導入に最適で、最も安全なスタート地点だ(カーソン談)。例:ジャンピングジャック、両足を使ったその場でのジャンプ。
ユニラテラル片脚ずつ使う運動だ。 あらゆるアスリート(特にランナー)に適したこの運動は、下半身のアンバランスに気付き、矯正するのに役立つとカーソンは言う。 例:左右の足を交互に使うジャンピングジャック。片足でその場でジャンプする。
エクステンシブ低負荷の運動で、ランニングなどの他のアクティビティの準備運動もなる。比較的長時間できるのも特徴だ。 例:ジャンピングジャック、縄跳び、その場でのジャンプ、1回のみのリニアジャンプ(プライオボックスジャンプ1回など)。
インテンシブ負荷が高めの運動なので、十分な休息をとりながら慎重に実践すべき運動。デッドリフトを最大限の力で10分間続けるのは無理だ(カーソン談)。例:ボックスジャンプ、スクワットジャンプ、スプリットジャンプ、多方向へのジャンプ、繰り返し行うリニアジャンプ(たとえばプライオボックスジャンプを連続して行う)、バスケットボールのダンクシュート。
徐々に難易度を上げる方法
プライオメトリクスのプログラムでは、安定性の向上からスタートし、筋力強化を経て、パワーを鍛える運動へと発展していく(全米スポーツ医学協会の推奨)。 自重のみで簡単に取り組めて、安定感があり、より馴染みのある運きから始める。たとえば、低いボックスやベンチを使った昇降運動などがいいだろう。
安定性を身につける運動をマスターしたら、徐々に難易度と複雑さをレベルアップさせ、未体験の不安定な運動へと移行できる。 難易度を上げるには、ウェイトを増やしたり、スピードアップしたり、負荷を高めたり(たとえば飛び越える障害物を置く)、さまざまな方向へ動いたりするとよい。 プログラムの作成やフォームの改善について、パーソナルトレーナーや運動生理学者に相談してみてもいいだろう。
プライオメトリクスに最適なシューズは?
プライオメトリクストレーニングでは関節に大きな負担がかかるため、サポート性のあるシューズを履くとよい。 土踏まずと足首をサポートし、十分なクッショニングを備え、着地の衝撃を吸収してくれるトレーニングシューズを見つけよう。 安定感を維持するために、ソールが高めのシューズは避けてフラットなタイプを選ぼう。ラバー製のソールで地面をしっかりグリップするものが望ましい。 加えて、プライオメトリクスには、通気性に優れ、高負荷のワークアウトでも汗を吸収してくれるシューズを選ぶ必要がある。 こういった条件を兼ね備えた一足を選んでから、トレーニングプログラムを開始しよう。
注意点
プライオメトリクスワークアウトはリスクの高い運動だ。 体力を大幅に向上させる可能性がある反面、けがという形で大きな損失をもたらすおそれもある。 いつものトレーニングに新しいエクササイズを取り入れる前に、必要に応じて医療機関に相談しよう。
文:ディナ・チェイニー