エキスパートが解説する、最適なランニングテンポの見つけ方

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ランニングのテンポについてエキスパートが解説。ケガを防いでスピードをアップする方法を紹介する。

最終更新日:2024年6月24日
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最適なランニングテンポの見つけ方

ランナーが別のランナーのテンポを褒めているのを聞いてもピンとこないのは、あなただけではない。 ちょっとした会話で話題に上ることはないが、テンポはランニングの重要な要素の1つだ。 テンポが向上すれば、速いランナーへと成長でき、オーバーワークによるけがも防げる。

「トレーニングのために走るのではなく、走るためにトレーニングをする必要があります」と話すのはデイビッド・ジョウ。理学療法博士で ニューヨークを拠点とするMotivnyの創設者の1人だ。ランニングの基本を身につけることは見過ごされることが多く、込み入っており、難しい。そうしたことを踏まえたコメントだ。 レースに向けてトレーニングを始めるのなら、その前にランニングのテンポとは何かを把握しておかなければならない。

ランニングのテンポとは?

ランニングテンポの意味をよく理解していない人や、おさらいしておきたい人は要チェック。「テンポはランニング時の1分間の歩数です」と説明するのは、アンソニー・ルーク博士。 公衆衛生学修士号を持ち、RunSafeを創設。カリフォルニア大学サンフランシスコ校のヒューマンパフォーマンスセンターのディレクターで臨床整形外科学の教授でもある。

「生理学的観点、ランニングメカニクスの観点からすると、テンポはパフォーマンスだけでなく、けがのしやすさにも影響します。 これまでの経験から言うと、テンポが上昇すれば、体に加わる負荷が減ります。 だからテンポはとても重要なのです」とジョウは説明する。

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ランニングのテンポを重視するべき理由

ランニングメカニクスを理解してけがのリスクを減らすには、ランニング経験にかかわらず、誰もがテンポを深く知るべきだ、とジョウは話す。 初心者は足の最適な回転率が身についていない可能性が高いため、体への負担が増し、負傷しやすいかもしれない。時間を取ってテンポを身につけたい理由はここにあるとのことだ。

テンポが遅いと関節や筋肉に負荷が加わり、ランニングメカニクスに悪影響をもたらし(たとえば上下動が大きくなるなど)、立脚時間(足が地面に着いている時間)に影響を与える。このすべてがけがの要因になるとジョウは指摘する。

最初は難しいかもしれないが、テンポを意識するのは大事なことだ。ルークはその理由について、ランニングのテンポはスピードとストライドの大きさにも影響するためだと説明する。 スピードは歩数によって変動する。 たとえば、歩数が増えたら速く走れるようになるはずだとルークは話す。

「ランニングの知識が深まっても、距離やスピードを向上させたいのなら、テンポに注意しなければなりません」とジョウは指摘する。

スピードに影響を与えるもう1つの要素が、ストライドの大きさだ。 ストライドが大きすぎるということは、足が地面に着いている時間が長くなるということ。脚に過剰な負荷がかかる可能性があるため、望ましくないメカニクスで走ることになるとルークは説明する。

「ストライドが大きすぎるランナーは、脚への負担が大きくなり、オーバーワークによるけがを引き起こすおそれがあります」。 遅いテンポでのランニングを避けたい主な理由はここにある。

最適なランニングのテンポとは?

フィットネスの分野で、誰にでも同じようにアドバイスできることはまずないが、ルークによれば、最適なランニングテンポの平均値は、平均的な身長(米国では女性で約160cm、男性で約175cm)のランナーで、1分間に170~180歩だ。

1分間に180歩がテンポの基準になることは、ジョウも同意見。ましてトップレベルのランナーなら、この数値を参考にすべきだろう。ただ、標準レベルのランナーがこのテンポで走るのは難しい。身長、体重、シューズなど、数限りない要因に左右される。

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「最適なテンポには幅があると思います。[1分間に]165~180歩ぐらいでしょう」とジョウ。心臓になるべく負荷をかけずに速く走れるテンポが最適だと補足する。

「テンポを意識することでランニングの効率も高まるのではないでしょうか。それから、心臓にかかる負荷に加えて、関節や筋肉にかかる負荷にどんな影響があるかもわかるようになるはずです」。

1分間に180歩のテンポで走るのは生易しいことではないが、トップレベルのランナーはほとんどこのテンポで走っていることを示唆する研究結果が報告されている。 このテンポは、ランナーにとって最も代謝効率が高くなりやすい回転率でもあるとルークは話す。 効率の悪さは広範囲に影響する。 テンポが速すぎたり遅すぎたりするとエネルギーを過剰に消費することになり、運動のパフォーマンスに悪影響を及ぼす。

ルークによると、1分間に170~180歩のテンポをキープして走れば、足が地面に着いている時間が短くなるため、けがのリスクが減る。 脚にかかる負担も最小限に減らせるため、シンスプリントといったオーバーワークによるけがを引き起こす可能性も小さくなる。

ランニングテンポを把握し、改善する方法

1分間に170~180歩のペースで走れないからといってうろたえる必要はないが、けがを防いでパフォーマンスを向上させるには、このペースに近づく努力をしたほうがいいとルークはアドバイスする。 そのためにジョウが勧めるのは、ランニングコーチを見つけ、「心臓に負担をかけ過ぎずに目標のスピードに到達できる」テンポを把握する手助けをしてもらうこと。

また、1分間の歩数を数える、メトロノームアプリをダウンロードする、テンポを記録する機能を備えたスマートウォッチを使うといった手段で、自分でランニングテンポを測ることもできる。

テンポが1分間に170歩未満であれば、テンポを上げることが目標になるが、必ずしもスピードを上げる必要はないとルークは話す。 推奨テンポより遅い場合、ルークはトレッドミルを使うことを勧める。 心地よいスピードで走り、テンポを上げていき、狭い歩幅でスピードを変えずに走る感覚をつかむのだ。 この方法は、ストライドが大きくて問題を抱えているランナーのランニングメカニクスを修正する際にも有効だ。

トレッドミルを利用できない場合は、屋外でランニングテンポを改善できる別の方法があるとルークは話す。 まず、自分が心地よく走れるペースを見つけてから、1分間、狭い歩幅で走る練習をする。 ルークは、この練習をランニング中ずっと続けることは推奨しない。1、2分の間、スピードはそのままで歩数を増やしてみよう(これがとても重要なポイントだ)。 プロからのアドバイス:GPSウォッチはスピードの維持に役立つ。

この方法で1分間走るのが難しいと思う場合、20秒走って数えた歩数を3倍することで、1分間の歩数を把握すればよいと、ジョウはアドバイスする。

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ランニングテンポがスピードを向上させる理由

テンポはこれまでおまけのようなものと見なされてきたかもしれないが、テンポを重視すればランニング体験すべてが向上する。ランニングメカニクスの改善やけがのリスクの低減につながり、結果的にランの効率が向上してスピードが上がるのだ。

ランニングテンポの向上に関して一番伝えたいアドバイスは、数週間かけて改善に取り組むことだとルークは言う。何と言っても、習慣を直すのは難しいものだ。

「けがの予防とランニング効率の改善を目指し、テンポを上げたいのなら、[1分間のインターバルで]テンポを上げる走り方を少しずつ、それが習慣になるまで続けましょう。 無理なくテンポを変えられるようになるには、大体6週間以上かかるでしょう」とルークは話す。

また、テンポは数か月ごとに見直し、たとえばペースを落として長距離を走るというようなトレーニングの変化に応じて、改善された点や悪化した点がないかどうかチェックするとよい。

また、テンポを意識することで、スピードの向上より重要と言えるけがの予防の対策ができる。

「効率のいい走り方ができれば、それほどけがをすることはなく、 けがのリスクが減るでしょう。逆のことも言えます。 ランニングの効率が悪いと、エネルギーを大量に消費し、フォームが崩れ、けがを引き起こすことになりかねません」とジョウは話す。

専門家からのさまざまなアドバイスをチェックするには、Nike Run Clubアプリをダウンロードしよう。

文:タマラ・プリジット

最適なランニングテンポの見つけ方

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公開日:2022年5月10日