急性不眠に負けないために

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眠れない日が2、3日続くだけでも、パフォーマンスや健康に悪影響が及ぶことがある。このヒントを参考にして睡眠を正常に戻そう。

最終更新日:2020年12月23日
急性不眠症とは:不眠症の原因と対策

現在、世界は大きな苦難に直面している。悲しみ、怒り、ストレスに加えて、これまでの日常が大きく変わってしまったことに未だ慣れない人も多い。以前の「普通の生活」が戻ってくる見通しは立たないまま。このような感情面の不安は睡眠に影響しがちだ。突然寝つきが悪くなったり、途中で目が覚めてしまったり、眠っているはずなのに疲れが抜けないと感じる場合は、急性不眠と呼ばれる短期的な不眠症かもしれない。

不眠症と聞くと深刻そうだが、あわてることはない。初期段階で対処すれば、慢性的な問題になる可能性は低いのだ。以下で詳しく説明しよう。

「急性」が意味するもの

急性不眠とは、眠れない状態が不定期に最大3か月続くこと。そう語るのは、シアトルにあるバージニアメイソン医療センターの睡眠医学医師であり、「Sleep Through Insomnia」の著者であるブランドン・ピータース-マシューズ博士。週に1~2回夜眠れなくなることが3か月ほど続くときはこれに当たる。これに対し、慢性的な不眠症は、週に3回以上眠れないことが3か月以上続くことで、医者の診断が必要となる(眠れない夜がこれ程続く場合は、かかりつけ医を受診すること)。

急性不眠はそれほど珍しいものではない。ペンシルベニア大学の医学大学院の調査によれば、毎年アメリカ人の25%がこの症状を経験している。また、世界の主要国においては、今後数年間で急性不眠の事例数が増加し続けると疫学者は予想する。

満足に眠れない状態が続くのはストレスだが、幸いなことに、その名の通り通常は一時的な問題である。さらに、ペンシルベニア大学の研究では、急性不眠の患者の約75%は、慢性の不眠症にならずに回復しているのである。急性不眠がどのように発生し、どうすれば抑制できるかが分かっていれば、より適切に対処できる。

急性不眠の始まり

かつて適応性不眠症と呼ばれていた急性不眠は、ほとんどの場合、一時的な金欠、大事なプレゼンテーション、ペットの病気といった短期的な苦しい状況が原因となる。「ストレスによって、眠る時間になっても脳のスイッチを切って休めることができないのです」そう説明するのは、UCHealth University of Colorado Hospitalの睡眠医療クリニック医長であるキャサリン・グリーン博士。特に、適切な対応を怠ったり、飲酒ややけ食い(どちらも入眠や睡眠の能力を蝕み、悪循環に陥る可能性がある)で心を癒すなどの不健康な方法に頼ったりすると、眠れない夜が続いてしまうことになりかねない。

急性不眠症とは:不眠症の原因と対策

少しの不眠が重大な問題になる理由

よく眠れないことが週に数回あるのは大ごとではないように思えても、その影響は仕事のパフォーマンスや健康状態に大きな打撃を与えかねない。満足に眠れない夜が頻繁に続くと、心が不安定になりやすい。その上、急性不眠になった人は、身体の自己治癒と修復を促す再生力のある深い睡眠が少なくなる傾向があることが『Sleep』誌掲載の研究で明らかになっている。これはワークアウト後のすばやいリカバリーを妨げるだけでなく、次のワークアウトに取り掛かるためのエネルギーも切れてしまう。

「高パフォーマンスのシナリオでは、睡眠が不十分な日が1日、2日あるだけで、判断と反応の時間に影響する可能性があることが研究で示されています」とグリーン博士は言う。 あなたがアスリートでも、車を運転するだけでも(車の運転には思っている以上に脳のパワーが必要だ)、頭が冴えていないと、ボールを見逃したり、ウェイトを落としたり、最悪事故のリスクに自分をさらすことになりかねない。

その理由はまだ正確には分かっていないが、おそらく合計の睡眠時間に関係があるとグリーン博士は考えている。「フルパフォーマンスのレベルで活動するために、成人は通常7時間以上の睡眠が必要であることが研究により明らかになっています。睡眠がいつもそれ以下であるか、短期間でも睡眠が大幅に少なくなれば、影響が出るのです」

「高パフォーマンスのシナリオでは、睡眠が不十分な日が1日、2日あるだけで、判断と反応の時間に影響する可能性があることが研究で示されています」

キャサリン・グリーン
医学博士、UCHealth University of Colorado Hospital睡眠医療クリニック医長

睡眠を取り戻す方法

ベッドに横たわっても眠れず、天井を見つめたことがある人なら、無理に眠ろうとするのは、くしゃみをするときに目をつぶらないようにするのと同じということが分かるだろう。急性不眠の場合、ストレスのせいで眠れないのが分かっていれば、それがさらにストレスになって悪循環に陥ってしまう。この場合、例えば給料日が来た、プレゼンテーションがうまくいった、子犬の具合が良くなったなど、ストレスの原因が解決されれば、いつもの眠りルーチンに戻れるはずだとグリーン博士は言う。

しかし、原因が解決されるまでの対処法として博士がすすめているのは、マインドフルネス技法。「特にストレスと不安が関係する不眠に効果があります」目を閉じ、つま先から上に自分のすべての感覚をひもとくフルボディスキャンや、ガイド付き瞑想(多くのアプリが提供している)が良いとのこと。これにより、自分を現実に引き戻して、副交感神経系を活性化させることができる。体の休息と消化が促され、睡眠に適したより良い精神状態になるのだ。

また、夜中の2時にSNSを見たり、ベッドの中でノートパソコンを開いて番組を一気見したりするなど、安眠を妨げる悪い習慣を断ち切ること。このようなことを行っていると、睡眠と覚醒のサイクルを司る体内時計である概日リズムが狂ってしまうとグリーン博士は警告する。「それが、急性不眠が慢性不眠症になる一番の原因です」

眠れないときは、デバイスに手を伸ばすかわりに「ベッドは睡眠のためだけのスペースにしておきましょう」とピータース-マシューズ博士は言う。20~30分で眠りにつけないときは、「ベッドから出て、椅子かカウチに移動し、本を読んだり瞑想を試してみましょう。画面を見ない静かなアクティビティを行うのが一番です」とグリーン博士。眠気を感じるまでベッドには戻らないこと。

実際のところ、ベッドを眠るだけの場所にすることは、そもそも眠れなくなることを防止する効果がある。結局のところ、急性不眠は一時的なもので慢性よりましだが、不眠にならないのにこしたことはないのだ。

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公開日:2020年11月6日