トリガーポイントとは?その定義と治療法

健康とウェルネス

特定の圧痛部位に対処することで、回復と可動性への効果が期待できる。

最終更新日:2022年11月29日
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トリガーポイントとその治療法とは?

マッサージ、ドライニードル、鍼治療などのボディワークを受けているときに、筋肉の一部が凝り固まっているような、張りのある場所を感じることがある。 理学療法博士のジェイソン・カートによれば、その感覚は、実際に体で起こっている状況とあまりかけ離れてはいないそうだ。

トリガーポイントとして知られるこれらの凝りは、痛みを引き起こすだけでなく、可動域を制限し、ケガのリスクを高める可能性がある。 幸いなことに、治療と予防のための方策がいくつかある。

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トリガーポイントとその治療法とは?

トリガーポイントとは?

すべての臓器、神経線維、血管、骨は、膜と呼ばれる緻密で厚い組織に包まれており、筋肉の周りには筋膜というサブタイプがある。 この結合組織が構造を形成して体を動きやすくしているが、それには膜の中にあるヒアルロン酸という液体が関与している。

膜の水分が失われると、組織の一部が収縮しても自動的に弛緩しないことがある。ヒアルロン酸の循環が減少すると、膜の粘着性が増す。これがトリガーポイントを作り出すとカート博士は述べる。 その結果、その部分が痛んだり、つっぱったりして、それがその膜に包まれている筋肉全体に波及することがあるのだ。

「この線維の内圧が高くなるため、血行が悪くなるのです。 そのため、新しい血液が流入しにくくなり、組織内の古い血液が脱酸素化し、酸性化してしまいます。 そうすると、筋線維の痛覚閾値が下がり、かなり過敏になるのです」と彼は言う。

それは筋肉痛の症状と似ているが、トリガーポイントはより鋭く激しい痛みを感じる傾向があると彼は付け加える。 筋肉痛の場合は筋線維全体に鈍い痛みが広がるが、トリガーポイントは1ヵ所に集中した痛みを引き起こす。 とは言え、張りのある場所以外に影響を与えることもある。

カート博士は次のように言う。「特に厄介なトリガーポイントだと、体の他の部位に痛みが広がることもあります。 例えば、臀部の筋肉がハムストリングの痛みを引き起こし、それが軽い坐骨神経痛のような症状として現れることがあります」

この痛みが慢性化すると、筋膜性疼痛症候群につながる可能性があると言うのは、ノースウェスタン健康科学大学の統合スポーツケアコーディネーター兼助教授のメリッサ・マクドナルドだ。 その症状には、深部の筋肉の圧痛とともにトリガーポイントもかかわっており、特定の筋肉の使い過ぎで見られることが多い。 例えば、デスクワークで長時間座りっぱなしでいると、肩と首の間にトリガーポイントができることがあるそうだ。

ある研究結果によると、大半の人が筋膜性疼痛を患っていて、運動機能を損なうとともに、全体的な幸福感が低下する可能性があるということだ。 この痛みに対処しないと、再発や慢性化する可能性がある。学術誌『Pain and Therapy』に発表された2013年の研究では、これが反復運動損傷や体調不良などの問題につながることが示唆されている。

アスリートの場合、最も頻繁に問題が現れるのは、臀部(大殿筋)、大腿四頭筋、ふくらはぎの筋肉、回旋筋腱板、上部僧帽筋だとカート博士は語る。

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トリガーポイントとその治療法とは?

トリガーポイント形成の仕組み

コンピューターに長時間向かっていても、同じトレーニングを繰り返していても、体に起こる反応は同じだとマクドナルド助教授は言う。 同じ筋肉を使い過ぎると、筋膜が硬くなる。そのため、その箇所に張りが出て、凝りを引き起こす可能性が高くなる。

カート博士はこう述べる。「アスリートの場合、筋肉への過負荷が繰り返されたり、筋肉への負荷が不均一になったりすると、トリガーポイントが形成されます。 筋肉の能力を超える負荷をかけ続けると、筋肉が損傷し、トリガーポイント形成のリスクが高まるのです。 また、左右不均衡な動作により、筋肉の特定の部分が他の部分よりも早く損傷し、トリガーポイントの原因となります」 ゴルフやテニスなど、体の片側により負担がかかるスポーツでは、片方の肩をもう一方よりも酷使してしまうことがある。

場合によっては、関節や脊椎の機能障害が筋力に影響を与え、さらに別のトリガーポイントが形成されることもある。 例えば、腰痛があると、その部分の凝りを避けるために別の動きでカバーしようとすることがある。しかし、その場合に負担がかかるのが上背部で、繰り返し肩の筋肉の緊張を引き起こす可能性がある。 トリガーポイントについてヒントを紹介しよう。

トリガーポイントとその治療法とは?

トリガーポイントの解消法

『Pain and Therapy』誌に掲載された研究によると、筋膜性疼痛に対する最も一般的な治療法はNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)だが、その効果についての強いエビデンスがないことを研究者は付け加えている。

ただし、NSAIDsは、日常生活に影響を及ぼすような痛みに一時的に対処するために使用することは可能だが、たまに使用するだけにして、長期的な鎮痛を目的として使用しないほうがよい。 理由は、長期的に使用すると胸やけ、下痢、さらには潰瘍など、胃や消化器系の問題を引き起こす可能性があるからだ。 あまり一般的ではないが、長期的に高用量で摂取した場合、肝臓や腎臓の機能に影響を与えることがある。

また、高血圧症やそれを抑制するための薬など、他の薬や医学的な問題によって、NSAIDsによる合併症のリスクが高まる可能性もある。 これらの薬剤については、市販薬であっても、必ず医師に確認することを改めてお伝えしておく。

ドライニードルも鎮痛剤と同等の効果が期待できる。単にトリガーポイントに起因する不快感や痛みを軽減するだけでなく、トリガーポイントそのものを解消することができるからだ。これは、NSAIDsのリスクを考えると重要な発見だと言える。 カート博士によると、訓練を受けた専門家が行うこの方法は、25~75mmの長さの細いモノフィラメントの針を使い、皮膚を貫通して筋肉組織のトリガーポイントに直接挿入するものだ。 針がトリガーポイントに到達すると、筋肉が弛緩するときに痙攣反応と呼ばれる現象が起こり、筋肉の中で泡が弾けるような感覚を覚えることがある。

マクドナルド助教授によると、ウェットニードリングというものもある。これは、生理食塩水やリドカインを注射し、不足しているヒアルロン酸を回復させることによって、トリガーポイントに潤いを与え、痛みを軽減させるものだ。 その他にも、動的および静的ストレッチ、フォームローリング、マッサージ、リハビリテーションエクササイズなどの方法がある。 理学療法には筋膜リリースというものがある。これは、施術者が一点を集中的に手で圧迫したり、ストレッチしたりして、トリガーポイントを緩めるものだ。

マクドナルド助教授は言う。「最善の方法は、患者自身がケアを継続して行うことです。 休息や水分補給などのセルフケアも怠ってはいけません」

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トリガーポイントとその治療法とは?

トリガーポイントの予防

過去にトリガーポイントに悩まされたことがある人のためにも、単にトリガーポイントができないようにしたい人のためにも、予防のための方策がいくつかある。 カート博士によると、その中でも特に重要なのは十分なリカバリーだ。 この場合、オーバートレーニングが最大の原因であるため、トリガーポイントのリスクを減らすには、まずフィットネススケジュールの中で回復時間を増やすことだ。

関節の痛みが気になる場合は、関節周辺の筋肉を強化し、その部分の神経信号を維持するための具体的な動作の仕組みまで説明してくれる理学療法士と一緒に改善に取り組むべきだ。

さまざまな健康習慣を継続することも予防に役立つとマクドナルド助教授は言う。 例えば、ランナーには特に肩、上背部、脚など、全身に多くのトリガーポイントが存在する傾向があると指摘する。

「体に栄養が行き渡るだけの十分なカロリー摂取による十分なリカバリー、リフティングを含むクロストレーニング、走行距離の管理、シューズのメンテナンス、走る路面の変更、水分補給、十分な睡眠などができていないと、トリガーポイントが再発する可能性が高くなります」と彼女は言う。

ある意味、定期的に運動をしている人にとって、トリガーポイントは避けられないように思えるかもしれない。 しかし、回復時間を増やし、ケガの予防に注力することで、これらをコントロールし、場合によっては予防することも可能だ。

文:エリザベス・ミラード

トリガーポイントとその治療法とは?

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公開日:2022年11月22日