自分の感情が示唆するもの

Coaching

ネガティブな感情がポジティブな影響を与えることもある―不快なものを心地よいものに変えるシンプルな方法をエキスパートが紹介。

最終更新日:2021年2月15日
感情に耳を傾けて自分の内面と向き合うには

ストレスを発散しよう。楽しみを見つけよう。心配しないで、ハッピーでいよう。そんなセリフは聞きたくないと言うのは、Nike Performance Councilのメンバーで、Nikeパフォーマンスシニアディレクターを務めるライアン・フラハーティだ。時には不安になることもあるはずだとフラハーティは言う。「そうでなければ、少し心配になってしまいます」

強いプレッシャーに耐えているエリートアスリートたちにトレーニングを施してきたフラハーティは、やっかいな感情のこともよくわかっている。世界中が混乱していた今年の初め頃、フラハーティは自分のポッドキャストである「Trained」を使って、リスナーたちがまったく新しいレベルのやっかいな感情に対処するためのサポートを行った。彼はさまざま分野の専門家に電話をかけて、こう尋ねた。「あらゆる方向から恐怖、不安、悲しみが押し寄せてきたときに、私たちはどうすればよいのでしょう?」専門家たちの意見は一致していた。「やっかいな感情を受け入れてはじめてそこから成長できるのです」

メッセージに耳を傾ける

ほとんどの人が感情には良いものと悪いものがあると考えている、と言うのは、Headspaceの共同創立者であり、Nike Performance Councilのメンバーとして瞑想とマインドフルネスを専門とするアンディ・プディクームだ。「私たちは『悪い』感情によって呼び起こされる気分が嫌なので、悪い感情を持つことに抵抗します。しかし、実際には抵抗することで、悪い感情が強まってしまうのです」と、プディクームは言う。彼は、瞑想を通じて、不快な感情を持つことを受け入れることを提案する。「瞑想では、これらの感情を追い出そうとはしません。悪い感情と友だちになり、平静でいられるようにするのです」(毎日数分間、ただ静かに座って、それらの感情が行き来するのを観察することから始めれば良いと彼はアドバイスする)。

やっかいな感情を十分に体験することで、自分を取り巻く環境の重要な情報が得られることもある。「根本的に、不安は何かを示唆するシグナルなのです」と言うのは、スポーツ理学療法の臨床専門家で、Nike Performance Councilのメンバーとしてリカバリーを専門に扱っているスー・フォールソンだ。「それらは、『おい、世界の何かが変だぞ!』と告げているのです」それが必ずしも自分に関することではないと知っているだけで、その感情を受け入れるのがずっと簡単になるとフォールソンは言う。

「私たちは『悪い』感情によって呼び起こされる気分が嫌なので、悪い感情を持つことに抵抗します。しかし、実際には抵抗することで、悪い感情が強まってしまうのです」

アンディ・プディクーム
Headspaceの共同創立者、Nike Performance Councilメンバー

ベストセラー『Grit』の著者で、心理学者でもあるアンジェラ・ダックワース博士は、この「シグナル」は人類が進化する過程において重要だったと考えている。ストレスと不安は、人間が生まれ持つ闘争・逃走本能から生まれ、何百万年もかけて発達してきたという。「脅威に対するストレス反応を持っていなければ、先祖は生き残れなかったでしょう」と博士。「コロナウイルス危機について考えてみるとわかります。ストレスを感じていなかったら、20秒かけて手を洗ったりはしないのではないでしょうか。『大丈夫だ』と思っていたら、対策を取らないでしょう。これらは適応するための反応です。そして、ストレスがネガティブな感情であるという事実は、ストレスが役に立つ理由のひとつでもあるのです」実際のところ、本当に困難な体験をしているとき、「人間であれば、ストレスを感じるはずです」と博士は付け加える。

その他の不快な感情も、進化に役立ってきたのだろう。孤独を専門とする神経科学者でNike Performance Councilのメンバーでもあるステファニー・カシオポ博士は、「のどが渇いたと感じるなら、それは脱水症状を意味します。体は、生き延びるために水が必要だと知らせているのです」と説明する。「のどの渇きと同じように、孤独も何かが欠乏していることを知らせるシグナルです。孤独を感じるとき、それは他の人とのつながりを取り戻す必要があるのです」

やっかいな感情から逃げることはできなくても、それらの感情に影響を与えられないほどあなたは無力ではない。これをスタートラインにしてみよう。

会話に参加しよう

まず、自分を少し甘やかしてみよう。「OKじゃなくても大丈夫。まず、それを認めましょう」とフォールソンは言う。

次に、ある程度、自分の感情を解放してみよう。ダックワース博士は、「ストレスを感じていることに対してストレスを感じる必要はありません」と言う。負のスパイラルに陥りそうになったら、意識的に楽しい感情に切り替えればよい。これは、博士が「Three Good Things(3つの良いこと)」と呼ぶ30秒のエクササイズだ。「この24時間に起きた3つの良いことに注意を向けます。小さいことでも大きなことでもかまいません」と博士は説明する。「普段、私たちの注意はネガティブな方に向きがちです。私たちは水平線を見渡して脅威を探すように進化したのです。このエクササイズは、見落としている可能性があるものに注意を促してくれます」毎朝、目が覚めたら試してみてはどうだろう。

プディクームは、仏教徒が慈悲と呼ぶものを養うために独自の方法を実践している。「自分が気にかけている人たちをひとりずつ思い浮かべます」と彼は言う。「彼らがそれぞれのお気に入りの場所に座っているところを思い描き、息を吐くたびに、彼らがますます健康になり、幸せになり、リラックスしているところを想像するのです。彼らの幸福に焦点を当てることで、自分に足りないと感じている喜びとつながりがもたらされます」このようなエクササイズは、ポジティブな行動を取るための方向づけにもなると、プディクームは言う。「瞑想というと、人生からの逃避のように思う人がよくいますが、むしろ人生に駆け寄っていくこと。そして、その心のあり方を日々の生活に生かすのです」

最後に、カシオポ博士からのアドバイス。これまで説明してきたことをシンプルにまとめている。「自分自身の親友になりましょう」親友というのは、あなたが何を感じていても、偏見なくあなたを励まし、あらゆる面からあなたをサポートしてくれる存在ではないだろうか。「なぜそれを自分自身にしてあげないのでしょう?」とカシオポ博士は問いかける。

これらのアドバイスを読んだあなたは、「さっそく、今日から始めてみよう」と思うのではないだろうか。

感情に耳を傾けて自分の内面と向き合うには

Trainedで詳細をチェック

今シーズンの「Trained」をチェックしよう。この記事に登場するエキスパートをライアン・フラハーティがインタビューしたポッドキャストから、マインドセット、運動、食事、リカバリー、睡眠に関する全体的なアドバイスを入手しよう。

公開日:2021年1月4日