エンプティカロリーとは?
食事
カロリーは体の燃料になる。しかしカロリーの種類によっては、体に必要な栄養素がほとんど含まれないものもある。
カロリー。 その世評は年々悪くなるばかりだ。おそらく、カロリーが少ないほど健康に良いと主張する低カロリーダイエットプログラム(と学説)がたくさんあることが原因だろう。
エンプティカロリーとは何かを考える前に、まずカロリーの定義を整理しておくのが重要だ。 端的に言うと、カロリーとはエネルギー単位のことだ。タンパク質、脂肪、炭水化物という3大栄養素すべてに含まれる。 食物が体内に入り、消化されると、栄養素はブドウ糖(炭水化物の最も単純な形)、アミノ酸(タンパク質の最も単純な形)、または脂肪酸として取り出され、細胞に届けられる。細胞ですぐに使われることもあるし、貯蔵されて後で使われることもある。 人体を構成する細胞の一つ一つがその機能を果たすにはエネルギーが必要なため、これは非常に重要なプロセスだ。
「カロリーはどれも同じ」は誤り
カロリーが人体、特に減量にどのような影響を与えるかについては、いろいろな議論がある。 長年、「カロリーはカロリーである」とされてきた。つまり、ケーキのカロリーとブロッコリーのカロリーに違いは無いという考え方だ。 少なくとも、体重管理をめぐる議論ではその考え方が主流であり、 それを支持する研究者たちは「カロリー収支がマイナスである限り、体重は減る」と主張してきた。
ところが研究が進んだ結果、最近では「カロリーはカロリーである」という考え方が覆されはじめている。 2018年に学術誌『JAMA 』で発表された論文によると、無作為抽出の臨床試験において健康的な低脂肪または低炭水化物の自然食品を摂取した被験者は体重が減少した。 その際、低脂肪タンパク質や野菜を多く摂取し、余分な糖類、加工食品、精製された穀物などを控えるようにした。
この研究結果は画期的なもので、 「カロリーの量よりも質が重要」ということが分かった。 この結論に至ったのは、自然食品を多めに取り入れるよう指示しただけで、どちらのグループにも体重の減少が認められたためだ。 ちなみに、どちらのグループでもカロリーは制限していない。
エンプティカロリーとは?
車のガソリンにいくつか種類があるように、カロリーにも種類がある。 栄養が豊富な食品から摂取されるカロリーもあれば、 ビタミン、ミネラル、タンパク質、抗酸化物質、食物繊維を含まない食品から摂取されるカロリーもある。 後者のタイプのカロリーは「エンプティカロリー」と呼ばれてきた。
とはいえ、エンプティカロリーの定義を1つに絞るのは難しい。
科学的な研究や政府の報告書では、食事の質を評価するためにHealthy Eating Index(HEI)というツールが使われている。 HEIは米国政府によって策定された『米国民向け食事ガイドライン』がベースとなっている。 2010年版のHEIでは、添加糖、アルコール、固形脂肪を含むエンプティカロリー区分が導入されたが、 最新の2015年版HEIでは撤廃され、適量を摂取すべき食品として添加糖と飽和脂肪酸が明記された。 この変更は、最新版『米国民向け食事ガイドライン』の推奨事項を反映したものだ。
エンプティカロリーの種類
1.添加糖
米国疫病予防管理センターでは、加工や調理によって飲食料品に添加される糖類やシロップをすべて「添加糖」と見なしている。
糖類と言っても、食品ラベルの成分表示には60種類以上の名称が記載されているので、添加糖がどれなのかを特定するのは難しい。米国では加工食品の約74%に添加糖が含まれていると推測されている。添加糖を含む一般的な食品例としては、焼き菓子、シリアル、プロテインバー、さらにはケチャップなどの調味料が挙げられる。
ちなみに添加糖のカロリーはグラム当たり4kcal。つまり、10gの添加糖を含む食品を食べると、添加糖だけで40kcalを摂取したことになる。この数字には他の成分のカロリーは含まれていない。
2.アルコール
ビール、蒸留酒、ワインなどに含まれるアルコールのカロリーは1g当たり7kcalだ。 たとえば、標準的な約150mlのグラスワインには、純粋なアルコールが約14g含まれている。つまり、アルコール分だけで約100kcalとなる。
こういった数字が重要なのはなぜだろうか? カロリーはエネルギーの単位であるが、アルコール飲料から得られるエネルギーは栄養価が非常に低い。 もちろん、ワインやビールなど一部のアルコール飲料には、適度な量の抗酸化物質が含まれている。 しかしながら、アルコール飲料の大半がほぼ栄養のないカロリーの供給源となる。
3.固形脂肪
超加工食品の多くはエンプティカロリー
アルコールはともかく、糖類や脂質だけを摂取することはまれだ。 糖類や脂質は主に超加工食品に含まれている。
超加工食品は食品会社で製造されるもので、塩分、添加糖、脂肪、香料、保存料などを過剰に使って食べやすさや味を追求しているため、栄養バランスが犠牲になっている。 超加工食品の例としては、コンビニエンスストアでよく見かける炭酸飲料などのパッケージ食品、パッケージに入った焼き菓子、柔らかいパンで作ったプレッツェルやホットドッグなどのホットバー食品、フライドポテト、多くの冷凍食品などがある。
エンプティカロリー食品の見分け方
固形脂肪や添加糖が含まれていても栄養が豊富な食品もある。 たとえば、ステーキには飽和脂肪酸が含まれているが、タンパク質や鉄分、ビタミンB群も含まれている。 確かに、ステーキを食べると栄養上のメリットがない飽和脂肪酸からのカロリーを幾分か摂取することになるが、 カロリーのすべてが、体に多くの栄養を運んでくれる肉に含まれている。
味の付いた製品では添加糖が多く含まれるギリシャヨーグルトでも同じ事が言えるが、 ヨーグルトはビタミン類、ミネラル、タンパク質、脂質が豊富であり、体の機能に必要な栄養を摂取できる食品だ。
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ステーキやギリシャヨーグルトと、パッケージに入った焼き菓子のカロリーを比べてみよう。後者には飽和脂肪酸と添加糖が含まれている。 後者のカロリーは精製炭水化物、ナトリウム、調味料にも含まれており、体にとってメリットが少ない。 エンプティカロリーはステーキとギリシャヨーグルトにも多少含まれているが、実際に比較してみると、パッケージされた焼き菓子のほうが断然多く含まれている。 たとえば、パッケージに入ったマフィンには栄養上のメリットがほとんどない。
とはいえ、程々に食べるのなら問題はない。むしろ、厳しく制限すると摂食障害などの問題を引き起こすことがある。
結論
エンプティカロリーという概念は茫漠としており、はっきり言って分かりにくい。 この用語が一人歩きすると、食べ物を極端に単純化する考え方が行き渡ってしまう。これは好ましい(健全な)ことではない。 カロリーは体の燃料になる。そのことは覚えておこう。 どんな種類のカロリーも体の機能に役立つが、一部のカロリーには、その機能をさらに高めるのに必要な栄養素を与えてくれるというおまけが付いていると考えればよい。
クッキーもフライドポテトも避ける必要はなく、それらをメインにしないという条件付きで、食生活の一部に取り入れるべきだ。 結局、重要なのは食生活を総合的に考えるということだ。 スーパーマーケットなど、食品を扱う店で最善の商品を選ぶようにすればよい。 その際、カロリーの大きさと質は別物であることをお忘れなく。
文:シドニー・グリーン(理学修士、 管理栄養士)