バレーボールのポジション解説

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バレーボールのポジションは、未経験者にとってやや複雑だ。 この記事では、コーチがバレーボールのポジションを1つずつ解説する。

最終更新日:2024年5月24日
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バレーボールにはどんなポジションがある?

バレーボールの試合では、ジャンプ、スイング、スパイク、叫び声などが同時に進行する。ファン歴のまだ浅い人には、各選手の役割がわかりづらいかもしれない。 バレーボールの試合は両チーム合わせて12人。プレーヤーによって、コートでの立ち位置と役割が異なる。

コートはネットを挟んで敵味方で分かれ、各ゾーンはラインで2つに区切られている。 これが3メートルラインだ。 プレー開始時には、どちらのチームも3人のプレーヤーがこのラインより前に、他の3人が後ろにいなくてはならない。

守備の場合はブロック、攻撃の場合はジャンプ、スパイク、得点ゲットが前衛プレーヤーの主な役割だ。 後衛プレーヤーはセッターと、1人だけ別のカラーのジャージーを着ている守備のスペシャリストの「リベロ」で構成される。

まずは各ポジションの名称、役割、プレーヤーに求められるスキルを把握しよう。 バレーボールのコーチがこれらの詳細とローテーション方法を解説する。

バレーボールにはどんなポジションがある?

バレーボールのポジション

1. セッター

「セッターは司令塔のような存在です」とクレイトン大学ブライアン・ローゼン(女子バレーチームのアシスタントコーチ)は言う。「攻撃を組み立てる。 各選手の正しいポジション取りを促す。 的確に配球する。 プレーごとに得点が狙える選手を判断する。そんな複合的な役割を担います」

セッターは、各プレーの前に手でサインや数字を出して、ボールが来た後の移動先と動きをチームメイトに伝え、チーム全体に攻撃の指示を出す。

セッターはチームの中心なのだ。「セッターはチームを引っ張っていかなくてはなりません。 どのような攻撃を仕掛けるか全員に伝え、その準備が必要な人、必要でない人をコート上で決断する役割を担っています」とジョージタウン大学女子バレーヘッドコーチのデイビッド・ヘラーは説明する。

(関連記事:アメリカンフットボール初心者のためのポジションガイド

セッターがチームの中心といえる理由は他にもある。それは、毎回のプレーでボールに触れ、次の行動を決断することだ。 ボールがネットの向こう側に行ったら、プレーヤーは守備に回ってボールを「ディグ(掘る姿勢でレシーブ)」し、空中に浮かせる。 セッターは自分自身がディグする場合を除き、2番目にボールに触れるプレーヤーになる。 スパイクできる選手にトスを上げ、得点を狙う。

「(セッターは)動きながらすばやく考える能力を持ち、 慌てず、瞬時に決断します」とヘラーは説明する。 セッターは、ボールのセット、攻撃の組み立て、プレーヤーへの移動指示に欠かせないため、コートを去ることがほとんどない。 このポジションに向いているのは、エネルギーに満ちあふれたリーダータイプだ。

2. アウトサイドヒッター

アウトサイドヒッターはレフトとも呼ばれ、左側のネットポストの近くでプレーする。ローゼンによると、通常、スパイクによる得点力が最も高いプレーヤーが担当する。 なぜなら、レフトはセッターが最もトスしやすい位置にいるからだ。 そのため、トスされたボールをもらうことが多い。

ブリガムヤング大学(BYU)女子バレーチームのアシスタントコーチを務めるジョニー・ニーリーは、最初のパスが良くても悪くても、セッターがトスしやすい相手がアウトサイドヒッターであるからだと指摘する。

BYUの攻撃を例に説明しよう。レシーブがうまく返った場合は、セッターが正しい位置に移動してアウトサイドヒッターがスパイクしやすい場所にトスできる。 レシーブが崩れた場合でも、セッターがボールを左ポストに向かって高く上げることで、アウトサイドヒッターはジャンプして相手コートにボールを打ち込むことができる。

ローゼンによると、アウトサイドヒッターがジャンプとスパイクに秀でていなければならないのは、ほぼすべてのプレーに関与するからでもある。 バレーボールにはローテーションがあるため、アウトサイドヒッターはネットの近くだけでなく、コートの後ろ側からもスパイクを打てなくてはならない。

「(プレー開始時)後衛の3人は、3メートルラインの前でボールに触れてネットの向こう側にボールを送ることができません」とニーリーは説明する。 プレー開始時に後衛(3メートルラインの後方)にいるアウトサイドヒッターは、ラインを越えたジャンプとスパイクができない。

後衛にいるときは、アウトサイドヒッターは上手にボールを返すスキルが必要だ(ローゼン談)。

3. オポジットヒッター

オポジットヒッターは、ライトとも呼ばれ、コートの右サイドにあるネットポストのそばでプレーする。 つまり、相手チームのアウトサイドヒッターと正対することになる。

「(オポジットヒッターは)敵のアウトサイドヒッターをブロックしなくてはならないため、ブロックの得意な選手が担当します。 相手のアウトサイドヒッターは、トスを受ける頻度が最も高い選手です」とローゼンは語る。 したがって、オポジットヒッターは相手のスパイクをブロックするプレーが最も多くなる。

コートにおける位置の関係上、左利きのプレーヤーがオポジットヒッターを務めることが多い。 左利きのオポジットヒッターは、右肩が右ネットポストに近いため、ジャンプしてスパイクする際にコート側に体を開き、トスされている間ずっとボールに向き合うことができる。 右利きのオポジットヒッターは、自分の頭上を越えてトスされるボールを打つことが多い。

オポジットヒッターには、パスやトスの能力も求められる。 想定どおりなら、守備のプレーヤーがボールを拾い、セッターがヒッターにトスを上げる。 ところがセッターが最初にボールに触れた場合は、オポジットヒッターが別のヒッターにトスを上げることが多くなる。

オポジットヒッターには、前衛と後衛の両方からジャンプしてスパイクを打つスキルも求められる。 アウトサイドヒッターほどトスを上げてもらう機会はないが、オポジットヒッターは勝利に欠かせない存在だ。

「ハイレベルな試合では、優れたオポジットヒッターが必要です。 トップクラスのナショナルチームには、必ず強力なオポジットヒッターがいます」とニーリーは語る。

バレーボールにはどんなポジションがある?

4. ミドルヒッター

ミドルヒッターはブロッカーとも呼ばれ、前衛のネット中央に位置する。

「ミドルヒッターは細かな役割を全て受け持ちます。 ネットの端から端まで守るため、左右に動いてブロックする必要があります」とローゼンは指摘する。 ブロックする際、ミドルヒッターはネット手前でジャンプして相手のヒッターによるスパイクを阻止する。

ミドルヒッターはブロックが役割の大きな部分を占めるため、最も背の高いプレーヤーが割り当てられることが多い。 「かなりの労力が必要なポジションです。 常にジャンプし、ブロックしなくてはなりません」とローゼンは付け加える。

ミドルヒッターは端から端にすばやく動く能力も必要だとニーリーは指摘する。

「ブロックするときは、右へ左へと大きく移動しなくてはなりません」 アウトサイドヒッターとオポジットヒッターはそれぞれの持ち場にいればよいので、それほど頻繁に左右の移動が求められない。 だがミドルヒッターは、サイドラインからサイドラインまでの範囲をカバーしなくてはならない。

攻撃時、セッターにとって最もトスを上げにくい相手がミドルヒッターだ。 中央よりも、オポジットヒッターやアウトサイドヒッターのいるポール近くに向かってトスを上げる方が簡単だからだ。 だからこそ、ミドルヒッターは的確なトスをもらったら、きっちりとプレーして得点する必要がある(ニーリー談)。

「ベストのパスでトスをもらっているため、効率的に動く必要があります。 パスを無駄にしないためにも、しっかり得点できる能力が求められます」とニーリーは言う。 バスケットボールと同様に、バレーボールでもネット際で得点した頻度を表す得点率が使われる。 優秀なミドルヒッターの特率は、0.375や0.380以上になる。

ミドルヒッターは得点を取るのが上手な反面、パスと守備が苦手なこともある(ヘラー談)。 ミドルヒッターはローテーション(説明は後述)で後衛に移動すると、前衛に戻るまでリベロや守備のスペシャリストに交代させられることが多い。

5. リベロ

リベロはコート上ですぐに見つけられる。チームメイトとは別のカラーのユニフォームを着ているからだ。 リベロが特別なのはユニフォームの色だけではない。

「女子バレーでは、1セットで15回までの選手交代が認められていますが、リベロはその回数に含まれません」とヘラーは説明する。 イタリア語の「自由」が語源のリベロは、試合で自由に交代可能な選手だ。

そのため、ミドルヒッターや他のヒッターがローテーションで後衛に移動したとき交代で出場できる。このとき規定の選手交代回数にはカウントされず、何度でも交代できる。 リベロは交代を記録せずにコートを出入りできるため、試合もスピーディーに進む。

リベロはチームの守備に貢献する。 リベロと交代することの多いミドルヒッターは、守備やパスに劣るのが一般的だからだ(ローゼン談)。 「リベロは守備の要です。 一般的に、チームで一番パスと守備がうまいプレーヤーが務めます」

出入りが自由な一方で、リベロには後衛からプレーを開始しなくてはならないという制限が設けられている。そのため、3メートルライン前でのジャンプとスパイクは禁じられている。 オーバーハンドでのトスも禁じられており、アンダーハンドでのみ許される(ローゼン談)。

試合を開催する国によって、サーブが一切許されない場合と交代時のみ許される場合がある。 国際試合の場合、リベロはサーブできない。 米国の高校や大学ではサーブが許されているが、チームメイト(通常はミドルヒッター)との交代時に限られる。

6. 守備のスペシャリスト(Defensive Specialist=DS)

守備のスペシャリスト(DS)は、後衛でのプレーに秀でたプレーヤーを指す。

リベロと似たような役割だ(ローゼン談)。 守備のスペシャリストは、チームメイトがブロックしたときのこぼれ球をセッターに返球するのが上手い。 パスにも卓越している。 パスや守備がうまくないアウトサイドヒッターやオポジットヒッターがローテーションで後衛に回ったとき、守備のスペシャリストに交代して後衛の役割を任せることがある。

その時に問題になるのが、交代回数だ。リベロとは異なり、DSへの交代は上限15回の選手交代回数にカウントされてしまう。 したがって、ヒッターが後衛に移動する全ての機会で交代できる訳ではない(ニーリー談)。つまり、守備のスペシャリストがコート上でプレーする機会はそれほど多くない。

「通常は1セットで約15回ローテーションします」とニーリーは言う。 そのため、何度も守備のスペシャリストに交代すると、交代可能な回数を使い果たしてしまいかねない。 「使い果たすと、それ以降は交代できません。 攻撃の専門家ではないDSですが、ローテーションで攻撃の舞台である前衛に移動しなくてはならないこともあります」

バレーボールにはどんなポジションがある?

バレーボールにおけるローテーションの方法

アウトサイドヒッターは左端、オポジットヒッターは右端、ミドルヒッターは中央というように、それぞれのポジションには最適な選手が入る。しかしそれを妨げるルールがローテーションだ。

「前衛には3人、後衛にも3人のプレーヤーがいます。 得点すると、ローテーションしなくてはなりません。ローテーションとは、大きな円を描くように全員が位置を1つずつ移動することです」とニーリーは説明する。

サーブを受ける側のチームが得点してサーブ権を得たら、時計回りにローテーションを行う。 たとえば、1回目のローテーションではアウトサイドヒッターが中央に、 ミドルヒッターは、通常オポジットヒッターがいる右ポストのあたりに、 そして、オポジットヒッターは後衛の右側に移動しなくてはならない。

この問題を解決するため、サーブしたらすぐに全員が自分の持ち場に戻る。 この例の場合、アウトサイドヒッターは左に、ミドルヒッターは中央に戻る。

「サーブ権を得た側のチームは、サーブを打った瞬間に場所を変えるだけなので、とても簡単です」とニーリーは説明する。 難しいのは守備側だ。なぜなら、サーブを受けながら元の場所に戻らなくてはならないからだ。

もう1つ厄介なのが、3メートルラインの存在だ。 後衛に回ったプレーヤーは、ネットの近くでジャンプしてスパイクを打つことが許されない。 つまり後衛の右側にローテーションしたオポジットヒッターは、前衛に戻るまでネット際からの攻撃ができない。 3メートルラインの後ろ側からジャンプしてスパイクを打つか、リベロやDSに交代するかを選択することになる。

文:グレッグ・プレスト

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公開日:2022年8月22日

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