ワークアウト後に疲労感があるときに、 不足しているおそれがある重要なビタミンとミネラル
食事
不足するとワークアウト後に大きな疲労感を引き起こす可能性のある3種類の栄養素について、管理栄養士が解説する。
クールダウンに移るまでのワークアウトを、さらりとこなすことほど気持ち良いことはない。 一方で、ふだんは簡単だと思うワークアウトを終えるのに苦労を覚えるときには、何が起きているのだろうか? ワークアウトが絶好調に感じられない時もあるのはいたって普通だが、疲れ切った状態でトレーニングを終えることが多ければ、それは何かの変調の兆しかもしれない。
高負荷のワークアウトで疲労を覚えるのは当然だが、ワークアウト中に幾度となく限界を感じるようでれば、ビタミン不足やミネラル不足が原因となっているおそれがある。
十分に摂取しなければ疲労の原因になり得る栄養素
適切な食事をとらずにワークアウトをするのは、ガソリンを4分の1しか入れずに車で旅をするようなものだ。 初めは問題ないかもしれないが、やがてガス欠になってしまう。
習慣、体力、健康全般を維持するには、さまざまな栄養素を摂取し、ワークアウトで身体にかかる負荷を乗り切れるようサポートすることが欠かせない。 なかでも、運動能力を支える特に重要な栄養素として、2種類のビタミンと1種類のミネラルがある。それはビタミンB12、ビタミンD、そして鉄分だ。
1.ビタミンB12
ビタミンB12は、多くの食品に自然に含有されている成分で、加工の際に添加されることもある。 ビタミンB12が最も豊富に含まれているのは、ヨーグルト、チーズ、魚介類、牛肉、卵、一部の鶏肉などの動物性食品だ。 栄養酵母や朝食用シリアルのような植物性食品には、ビタミンB12が添加されているものもあるが、ベジタリアンやビーガンはビタミンB12不足に陥るリスクが高くなりがちだ。 米国医学研究所によると、19歳以上の成人(妊婦と授乳婦を除く)のビタミンB12の推奨栄養摂取量は、1日あたり2.4μgだ。
ビタミンB12は体内で起こる多くの化学反応に不可欠だが、エネルギーレベルについて言えば、健康な神経系と赤血球の形成をサポートするのに大きな役割を果たしている。 健康な赤血球は、全身に酸素を運ぶために必要だ。 赤血球が適切に形成されなければ、ワークアウト中の体のサポートに必要な酸素が、筋肉や組織に行き渡らない。 また、運動のモチベーションが低下している場合も、ビタミンB12不足が何らかのかたちで関与しているかもしれない。ビタミンB12不足は、抑うつのリスクとの相関関係が指摘されているためだ。
2.ビタミンD
ビタミンDは健康全般に重要な役割を果たすが、これが天然で含まれている食品は少ない。 牛乳や、一部のオレンジジュースと朝食シリアルといった多くの食品は、摂取量を増やすためにビタミンDを強化してある。 魚、卵、乳製品などの動物性食品に含まれるビタミンDの量は、その動物が食べていたものに左右される。
また、ビタミンDは食品以外にも、 日光から得ることができる。肌が日光を吸収すると、体内でビタミンDが生成されるのだ。 米国医学研究所によると、19~70歳の成人(ここでも妊婦と授乳婦を除く)のビタミンDの推奨栄養摂取量は、1日あたり600IU(国際単位)だ。 養殖の大西洋サケはビタミンDを最も豊富に含む食品の一つであり、切り身半分(178g)で936IUのビタミンDが含まれている。また、ほとんどのアメリカ人はビタミンDが不足していることがデータで示されているため、推奨摂取量を超えて摂取する日があっても心配はない。
正常な免疫機能と健康な骨や筋肉を手に入れるには、十分なビタミンDが必要であり、へばらずにしっかりとワークアウトをこなすためには、ビタミンDが極めて重要だ。 さらに、言うまでもなく、ビタミンDにはワークアウト後のリカバリーを促す効果もある。
3.鉄分
鉄分は、全身に酸素を運びんでエネルギーの生成を促し、DNA合成を補助する重要な役割を担う、必要不可欠なミネラルだ。 動物性食品と植物性食品のどちらにも含まれているが、吸収率は動物性食品に由来する鉄分の方が高いため、身体には好ましい。
米国医学研究所の食事摂取基準では、大半の成人男性の鉄分必要摂取量は1日あたり約8mg、月経のある19~50歳の女性は1日あたり18mgとされている。 50歳を超えると、女性の鉄分必要摂取量は1日あたり8mgに減少する。 鉄分は全身の臓器、組織、筋肉に酸素を循環させるために極めて重要であるため、鉄分が不足すると、ワークアウト中やその前後に疲労感や虚脱感が生じる場合がある。
栄養不足に陥るとどのような症状が現れるのか?
残念ながら、ビタミンB12、ビタミンD、鉄分が不足した場合の症状は、互いに似通っている。 これら3つの栄養素が不足した場合に共通する症状としては、疲労、いら立ち、虚脱感があげられる。 『Journal of American Family Physician』によると、ビタミンB12不足にしかみられない症状は、赤く腫れた舌、手足のしびれ、原因不明の体重減少だ。 また、ビタミンD不足の場合のみ現れる兆候として、骨や筋肉への影響から、怪我が多発するようになる。 運動の強度に関わらず、ワークアウト後によく疲労感が生じる場合は、医師に相談し、血液検査を受けることを検討しよう。 結局のところ、栄養不足を診断するためには血液検査を行うしかない。
ビタミンB12などの欠乏を防ぐことはできるか?
ビタミンB12、ビタミンD、鉄分は主に動物性食品に含まれているため、一般的にベジタリアンやヴィーガンは3種類すべての栄養素が不足するリスクが高い。 Academy of Nutrition and Dieteticsが2016年に発表した方針説明書では、ビーガンやベジタリアンは食生活を適切に計画すれば健康を保てるが、特にビーガンは鉄分、ビタミンB12、ビタミンDなどのサプリメントをとるとよいとされている。
ビタミンB12と鉄分に話を限れば、さまざまな食物に手を出した方がいいだろう。 他に基礎疾患がなければ、さまざまなタンパク源と栄養豊富な植物(葉物野菜、ナッツ、種)を含む食事をとっている限り、鉄分とビタミンB12の不足は概ね回避することができる。 ただし、ビタミンDは含有食品が少なく、日光を浴びる量によって血中濃度が左右されるため、事情が異なる。 冬の間や、日照時間の短い地域で暮らす人は、ビタミンDのサプリメントをとる必要があるかもしれない。
栄養不足からの回復には時間がかかる。管理栄養士に相談しながら、自分に合った理想的な食習慣やサプリメント摂取習慣を考えていくのがいちばんだろう。 また、幸いにも、 サプリメントが必要なのは短期間か、体内量が基準値に戻るまでの間だけで済むことが多い。
文:シドニー・グリーン(理学修士、 管理栄養士)