専門家が伝授する、トレッドミルランニングの5つのメリットとデメリット

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安全に走れる、自信がつく、負荷を抑えるなど、トレッドミルランには多くのメリットがある。

最終更新日:2022年10月28日
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専門家が伝授するトレッドミルでのランニングの5つのメリット

できればトレッドミルで距離を積むより屋外を走りたいというランナーもいるが、 1週間のローテーションにトレッドミルランニングを加えることには複数のメリットがあると、専門家は語る。

トレッドミルに期待できる5つのメリット

  1. 1.ランニングテンポの改善に役立つ

    トレッドミルは、ランニングテンポの向上に役立つツールだ。 ランニングテンポはステップ頻度(ピッチ)とも呼ばれ、ランニング時の1分間の歩数(SPM)を表す。

    「多くのランナーにとって、最も手っ取り早くトレッドミルのメリットを実感できる方法は、ランニングテンポを変えることです」と話すのはジャック・マクナマラ。エクササイズに関する修士号、 ストレングスコンディショニング認定スペシャリスト、 NASM認定パーソナルトレーナーの資格を持ち、ランニングテクニックの指導を専門とする臨床運動生理学者だ。

    テンポが速くなる、つまり1分間の歩数が増えれば、ストライドが小さく、足運びがスムーズになり、関節や骨にかかる負担が減る。 「腰、膝、股関節にかかる負担が小さくなるため、けがのリスクが減るのです」とマクナマラは述べている。

    トレッドミルは一定の速度で動くため、決めたペースを維持しながら速いテンポで走る練習に適している。

    ただし、ランニングテンポの改善に取り組む前に、現在のテンポを把握しておく必要がある。 タイマーを20秒にセットして着地する回数を数え、 その回数を3倍した数が、1分間の歩数だ。 走っているところを動画に撮って、同じように歩数を数えてもいいだろう。

    それより5%速いテンポを 目標にしよう。 現在のテンポが150SPMなら、目標のテンポはおよそ157SPMになる。 「目標のテンポで5Kのペースを楽に保てるようになったら、さらにテンポを5%速くします。この繰り返しです」とマクナマラは話す。

    マクナマラによると、「理想のランニングテンポ」とされる180SPMの起源は、1984年に開催されたオリンピックにある。「スピードが速く、効率性の高いランナーは、1分間に180歩以上のテンポで走っていることに、(陸上競技コーチの)ジャック・ダニエルズが気付いたのです。体格や性別は関係ありませんでした」。とはいっても、マクナマラが指摘するように、180SPMというのは万人に当てはまる基準ではないことを覚えておく必要がある。気晴らしのために走るランナーは特にそうだ。

    たとえば、身長が高いランナーは1分間の歩数が自然と少なくなり、テンポも遅くなると話すのは、ASFA認定のランニングコーチ、クレア・バーソリック。

    「最適なランニングメカニクスの実現には遅すぎるテンポで走ると、ストライドが過剰に大きくなって膝が固くなり、かかとにかかる着地時の衝撃が強くなります」とマクナマラは語る。 その結果、弾むような足取りになって効率が低下し、筋肉、関節、骨に無駄な負荷がかかって、けがのリスクが増大するのだ。

    軽くすばやい足取りのほうが一歩一歩飛び跳ねずに済むので効率的だと、バーソリックは述べている。

    マクナマラはこう語る。「速いテンポで走れば歩幅が小さくなり、重心がある腰の真下で着地しやすくなります。 5%ずつテンポを上げることを目標にすれば、効率が全般的に向上し、自分の身長と年齢により適したランニングエコノミーの実現につながります」

    2019年に『Journal of Applied Physiology』で発表された研究によれば、エリートランナーも趣味で走るランナーも、好みのランニングテンポには160~200SPMの幅がある。 自分に合うテンポを見つけよう。

    毎回歩数を数えていてはランに集中できないと思う場合は、トレッドミル上でランニングテンポを把握できる別の方法を試してみよう。 たとえば、テンポを計測できるフィットネストラッカーを使う、メトロノームアプリをダウンロードする、目標の歩数とテンポが一致する曲のプレイリストを作成するといった方法だ。

  2. 2.安全に走れる

    トレッドミルでのランニングなら、いつでも安全に走ることができる。

    「仲間の女性ランナーや安全に気を遣う人、いつもとは違う時間に走る人も、トレッドミルなら犯罪や路上での嫌がらせを気にせず、安全な環境で運動できます」と話すのは、NASM認定パーソナルトレーナーで、USATFとRRCAの認定を取得したランニングコーチのマーニー・クンツ。

    さらに、トレッドミルなら天候にかかわらずワークアウトをやり遂げられる。

    「もちろん、風が強く、雪が降り、路面が凍っているような日でもランニングに出かけることはできますが、転んでけがをするリスクがあります」と、Blink Fitness所属のRRCA認定ランニングコーチ、ケニー・クルーズは指摘する。

    反対に、極端に暑い日のランニングは、熱中症や熱疲労のリスクを高める。 「気軽にトレッドミルを利用できるのであれば、こういった症状に悩まされることなく、距離を重ねることができます」とクルーズ。

    メリットは、それだけではない。 トレッドミルランニングなら、穴や路面の凹凸につまずく心配もないのだ。

  3. 3.関節に優しい

    トレッドミルは、関節を傷めやすいランナーにとって、安心できる手段になる。

    「トレッドミルのデッキは、屋外の路面より負荷が小さくなるよう作られているので、関節に問題があるランナーや、地面から受ける衝撃にまだ慣れていない初心者に適しています」とバーソリックは説明する。

    さらに、2014年に『Sports Health』に掲載された論文によると、多くのランナーは、トレッドミルで走るほうが、屋外でのランニングよりストライドが小さくなり、ピッチが全般的に上がることがわかった。 つまり、膝、足首、腰への負担が減る可能性があるということだ。

  4. 4.ワークアウトの条件をコントロールできる

    速度と傾斜を指定できることは、トレッドミルランニングの2大メリットだ。特に、スピードトレーニングや坂道でのランニングに取り組みたい場合に役立つ。

    「スピードトレーニングは、傾斜のない場所で行うのが最も効果的です。重力をあまり意識せずに最速のペースで走れるからです。 起伏の多い地域に住んでいる人にとっては、重力を気にせず走れる場所というと、トレッドミルしかないかもしれません」とバーソリックは語る。

    トレッドミルなら、目標ペースを設定するだけでトレーニングができる。

    一方、筋緊張やランニングエコノミーの向上に効果があるヒルワークアウトは、いつでもできるトレーニングではない。特に、平坦な地域で生活している人には難しいだろう。 トレッドミルは、緩やかな勾配からきつい上り坂まで、さまざまな角度で傾斜を設定できる。

  5. 5.運動能力に対する自信がつく

    屋外で走る前にトレッドミルを使うと、ワークアウトやペースに対する自信がつく

    「一定のペースに到達しても、そのペースを維持できるかどうか何度も不安に襲われます。 屋外で一定のペースを維持する自信がないときは、チャレンジしても辛くなって否定的な思考で頭がいっぱいになり、すぐにやる気が衰えてしまいます。 その点、トレッドミルなら、脚を動かしてランニングに集中できます」とバーソリックは語る。

    トレッドミルで一定のペースに到達し、そのペースをキープできるようになれば、屋外でも自信を持って同じペースに挑戦できるだろう。

    ただし、トレッドミルの使用に不安を感じるランナーもいることを忘れてはならない。ほとんど使ったことがない人であれば、なおさら躊躇するだろう。 動くベルトの上で走るときの手足の動かし方を身につけなければならない。 また、ランニング時は、モニターとの距離が近すぎても遠すぎても良くない。 トレッドミル初心者は、目標のペースに挑む前に、時間をかけてマシン上でのランニングに慣れるようにしよう。

トレッドミルランニングの3つのデメリット

  1. 1.稼働する筋肉が減る

    機能上、トレッドミルのベルトはランニングの動作を一部肩代わりする。 つまり、トレッドミルのワークアウトでは、屋外で同じワークアウトをする時に比べて、筋肉を使わずに済むということだ。

    「前進しようとする動きに対して、トレッドミルでは脚が後方に流れます」とクルーズは話す。

    つまり、足を運ぶために通常は機能する、安定性を保つための小さな筋肉やハムストリングの仕事が奪われるというわけだ。 ランニングはトレッドミルのみという場合、屋外で走るランナーほど筋肉は鍛えられない。

    Journal of Exercise Rehabilitation』で2017年に発表された研究では、足首の捻挫から回復途上にある若い成人を対象に、トレッドミルまたは屋外のトラックで、12週間のウォーキングプログラムを実施。 屋外でウォーキングを行ったグループは、トレッドミルのグループより、下半身の筋力と足首の可動域に大きな改善が見られた。 ここでの結果は、トレッドミルで走るランナーは足首の柔軟性が劣ることを示す過去の研究と一致すると、研究者は述べている。

    しかし、トレッドミルを使うとけがのリスクが増すというわけではない。 異なる路面を走ることが、最終的にプラスになるのだ。

    バーソリックはこう語る。「トレッドミルで走る場合は足運びが多少変わりますが、大した変化ではありません。特に趣味で走っているランナーにとってはわずかな違いです。 けがのリスクが下がるほどの効果があるという証拠はありませんが、 異なる路面で走ることは、トレーニングに変化を持たせるための良いアイデアです。屋外でのランニングと合わせて、トレッドミルでもトレーニングをするといいでしょう」

    要するに、トレッドミルと屋外でのランニングをバランスよく取り入れるのが得策だと言えそうだ。

  2. 2.単調でつまらない

    ランナーの多くは、トレッドミルランニングは単調で退屈だと感じる。

    「個人的には、トレッドミルで走るのは、屋外を走るときほど刺激がないので、退屈だと思います」とクルーズは語る。

    そのうえ、屋外でのランニングがもたらす気分を高める効果は、トレッドミルランニングでは得られないかもしれない。 2016年に『Scientific Reports』に発表された調査では、緑の多い場所(市街地で芝生などの植生が施されたエリア)で日常的に過ごす人は、うつ病になる割合が低いことがわかっている。 同じような研究が、2016年にもう一つ発表されている。『American Journal of Preventive Medicine』に発表されたこの研究では、外出とうつ症状の緩和に関連性があることが、多数の人に認められた。

    退屈だと感じると、ワークアウトが完了するまで続けるのは難しいかもしれない。 そこで、好きなテレビ番組を見たり、ランニングのバーチャルクラスに参加したり、美しい景色が楽しめるバーチャルランの配信を利用したりと、トレッドミルランニングを盛り上げる工夫をしてみてはどうだろうか。

  3. 3.屋外でのレースの準備には向かない

    トレッドミルではコントロールされた環境でトレーニングできる。速度と傾斜を指定でき、風、雪、雨を気にすることなく走れるのだ。 ここには利点もあるが、欠点もある。 特に屋外でのレースに備えてトレーニングを積みたい場合は、これがあだになる。屋外のレースでは、天候や地形の変化に対応できなければならないからだ。

    「レースの環境に体を順応させるために、ある程度屋外でトレーニングする必要があります。路上を走るときは、風が吹くことも、さまざまな天候に見舞われることもあります」とクンツは語る。

結論

トレッドミルは、ランニングテンポの改善、関節への負荷の緩和、自信の向上、速度と傾斜のコントロールに役立ち、悪天候でもランニングを可能にする。 しかし、トレッドミルにも限界はある。 効果を高めるには、トレッドミルと屋外でのランニングを組み合わせて行うことが大事だ。

文:ローレン・ベドスキー

専門家が伝授するトレッドミルでのランニングの5つのメリット

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公開日:2022年5月26日