あらゆるレベルのランナーに効果があるトラック練習3種
スポーツ&アクティビティ
USATF認定ランニングコーチとNike Well Collectiveトレーナーが考案したスピード練習にチャレンジ。6週間でスピードを強化しよう。
ベテラン、ビギナー、マラソン挑戦者、ジム通い、あるいはただ向上心が旺盛な人。どんなランナーでも、トラック練習に取り組むことで効果が期待できる。スピードやパワーを強化できるし、ワークアウトのルーティンに変化が加わるからだ。
トラック練習がスピード向上の要になる理由
有酸素性持久力の向上には、長い距離を安定したペースで走る有酸素ランニング(無理なく会話ができるペース)が欠かせない。だがもっと高い負荷をかけて短い距離を走る練習も同じくらい重要だ。
スピードトレーニングは筋力トレーニングの一種である。 短いインターバルで速く走る練習(ダッシュやテンポランなど)は、無酸素運動の一つだ。速筋繊維を使って、瞬間的に大きなエネルギーを生み出す。 無酸素トレーニングは、酸素に頼らずに炭水化物を分解する能力を活用する。
無酸素運動能力が向上すると、筋肉が疲労に達する閾値が上がる。トラック練習やスピードトレーニングで、走力が強化できる理由はここにある。
トラックワーク練習では、一般的に高負荷の短距離ランを何度か繰り返すことになる。しっかり回復してから次のインターバルに臨めるよう、各インターバルの後には十分な休憩時間を取る。 休憩を取ることで、ワークアウト中に一定の負荷を維持しやすくなる。 トラック練習には、運動と休憩が交互に組み込まれていることが多く、さまざまな点でHIIT(高負荷インターバルトレーニング)によく似ている。
ランニングペースの設定方法
各ワークアウトでは、自覚的運動強度(RPE)を基にペースを決める。RPEは1~10の段階で強度を評価する指標。1が最も軽いランニングで、10が全力走を表す。
この主観に基づいた指標を使えば、ランニングがぐっと楽しくなり、続けやすくなる。それだけでなく、ワークアウト中の自分の体の声を聴けるようにもなる。 ストレス、疲労、天候などが体にもたらす日々の変化にも気付くだろう。 ランニング日誌をつけると、練習の種類、負荷、リカバリーについて記録できる。またトレーニングを重ねながら進歩していく過程を振り返る際にも役立つ。
今日は運動の負荷を10段階で7程度だと感じていても、明日は9のようにきつく感じるかもしれない。 あるいは、数週間前(トレーニング開始時)に9程度だと感じていた運動の負荷が、今では7ぐらいに感じるというケースもあるだろう。
自分のペースや直近のレース結果がわかっている人は、以下のペースがトラック練習の目安になる。
- RPE9:1.6キロレースのペース
- RPE8:5キロレースのペース
- RPE7:10キロレースのペース
- RPE6:テンポランのペース
- RPE6未満:有酸素持久トレーニングのペース、つまり会話が可能なペース
スピードの向上には一貫性と継続が不可欠
これから説明するトラック練習3種のいずれかを普段のトレーニングに組み込むと、スピードの強化が期待できる。 ベストの結果を得るには、トラック練習だけでなく、会話が可能なゆったりペースの有酸素ランニングと筋力トレーニングも取り入れたい(それぞれ週に1~2回)。質の高い食事や十分な睡眠のほか、ストレッチやフォームローラーでのマッサージといった筋肉のリカバリーも大事にしよう。
成功は、しっかり構成されたトレーニングがあってこそ。 ワークアウトごとに運動量(各セッションの走行距離)を増やし、2週を単位として6週間にわたって徐々に運動量を増やしていく戦略的な計画だ。
近所に使えるトラックがないのなら、 トラックの代わりになる場所を探そう。 近所の公園、サッカー場、通行止めの道路など、交通を心配せずにスピードを上げて走れる場所を見つけよう。 走れる場所が見つかったら、ランニングウォッチか、スマートフォンのNike Run Clubアプリで、走行距離を測定する。 あるいは、タイムから距離を見積もるやり方もある。インターバルの長さに応じて、各ワークアウトにおおよそのタイムが指定されている。
各ワークアウトに期待できること
これから説明する3つのワークアウトは、どんなランナーのレベルにも対応できる。2週間単位で進行し、6週間で完了するメニューだ。
ランニングの経験に関係なく、週に1回スピード練習を取り入れるだけで効果が期待できる。 以上の原則を念頭に置いたうえで、すでにランニングが習慣になっている人、ハーフマラソンやフルマラソンを目標にトレーニングに励んでいる人、とにかく今後6週間はスピード強化に集中しようと考えている人は、次のワークアウトから2種類を毎週のルーティンに組み込むといいだろう。 ただし、スピード練習の間に、最低1日は休養日を設けることをお忘れなく。
スピード練習の初心者や、ランニングそのものに初めてチャレンジする人は、最初に紹介するワークアウトを6週間でマスターしてほしい。 2つ目と3つ目のワークアウトはやや難易度が高く、中級ランナーや上級ランナー向けに設計されている。
スピード練習はジョギングや軽めのランニングと比べて体への負担が大きいため、リカバリーの時間も重要であることを心に留めておこう。 トレーニングへの適応には、適切なリカバリーが不可欠だ。
各インターバルでは、同じ負荷とペースを保つようにしよう。 最初のインターバルがきつすぎたときは要注意。残りのインターバルではスピードを抑えること。 休憩時間は走るのをやめて、体の回復に努めよう。 各インターバルで、ペースと負荷を一定に保つことが鍵になる。 ワークアウトの後半はハードに感じるかもしれないが、最初のインターバルと同じタイムとペースを維持できるように意識して走る必要がある。 あなたは自分自身のコーチでもある。必要なときは、休憩を長めに取ってもよい。
スピード練習の効果を最大限に高めるため、筋力トレーニングや会話が可能なペースでゆったり走るロングランも毎週の予定に組み込もう。
基本のウォームアップを終えてからスタート
関節や組織への血行を促すため、セッション開始前に毎回5~10分のジョギングをしよう。 その後、以下の7つの動的なウォームアップで体をあたためる。 モビリティエクササイズで関節を動かし、アクティベーションエクササイズとランニングテクニックドリルをこなす。これによって筋肉が収縮し、必要な走力を生み出せるようになる。 まずは、会話ができるペースで5~10分間ジョギングしよう。
- ハムストリングスクープからニーハグ:片足で5回、左右を切り替えて繰り返し
- クアッドプルからリバースランジ:片足で5回、左右を切り替えて繰り返す
- ヒップのCARs(Controlled Articular Rotation、関節可動域改善エクササイズ):片足で5回、左右を切り替えて繰り返し
- シングルレッグスタンディングクラムシェル:片足で10回、左右を切り替えて繰り返し
- シングルレッグコントロールドランディング:片足で5回、左右を切り替えて繰り返し
- ポゴホップ:20回
- オポジットスキップ:左右交互に20~30秒
ウォームアップが終わり、スピードラン用のシューズに履き替えたら(持っている場合)、スピード練習の準備は完了だ。
ワークアウト
1.200メートル走を繰り返すビルディングブロック
このワークアウトは短めのインターバルなので、トラックでのランニングやスピードワークアウトに初めて取り組む人に適している。それだけでなく、スピードに磨きをかけたいランナーにもおすすめだ。 トレーニングの目的が短距離レースか長距離レースかにかかわらず、幅広いランナーに役立つ。
- 1~2週目:
- RPE8の負荷で、200メートル(一般的なトラック約半周)を6~8本、トラック以外の場所では45~60秒程度のランを6~8本。
- 各インターバルの間に90秒~2分の休憩を挟む。
- 3~4週目:
- RPE8の負荷で、200メートルを8~10本、トラック以外の場所では45~60秒程度のランを8~10本。
- 各インターバルの間に90秒~2分の休憩を挟む。
- 5~6週目:
- RPE8の負荷で、200メートルを10~12本、トラック以外の場所では45~60秒程度のランを10~12本。
- 各インターバルの間に90秒~2分の休憩を挟む。
- 1~2週目:
2.スピードと持久力に重点を置くインターバル走
このインターバル走では、スピードと持久力の双方を鍛えていく。長めの距離からスタートし、距離を段階的に縮めてスピードを上げる。 長めの時間を速いペースで走る力をテストするのが、このワークアウトの目的だ。
- 1~2週目:
- RPE7の負荷で800メートル(一般的なトラック2周)を2本。各インターバルの後に2分休憩(トラック以外の場所では3~4分程度のランを2本)。
- RPE7の負荷で400メートル(一般的なトラック1周)を2本。各インターバルの後に90秒休憩(トラック以外の場所では90秒~2分程度のランを2本)。
- RPE9の負荷で200メートル(一般的なトラック半周)を2本。各インターバルの後に90秒休憩(トラック以外の場所では45~60秒程度のランを2本)。
- 3~4週目:
- RPE7の負荷で800メートルを2本。各インターバルの後に2分休憩。
- RPE7の負荷で400メートルを4本。各インターバルの後に90秒休憩。
- RPE9の負荷で200メートルを4本。各インターバルの後に90秒休憩。
- 5~6週目:
- RPE7の負荷で800メートルを3本。各インターバルの後に2分休憩。
- RPE7の負荷で400メートルを5本。各インターバルの後に90秒休憩。
- RPE9の負荷で200メートルを5本。各インターバルの後に90秒休憩。
- 1~2週目:
3.トラックでのファルトレク(スピードプレー)
このワークアウトは、1つ目の200メートル走を繰り返すビルディングブロックと似ている。だが休憩時に足を止めるのではなく、トラック半周をジョギングでつないでリカバリーする。 スピードと負荷のギアを変えるアクティブリカバリーが、筋力とスピードの向上を助ける。
- 1~2週目:
- 1,200メートル(一般的なトラック3周)を2本。スピードランと負荷の軽いリカバリージョグを200メートル(トラック半周)ごとに交互に切り替える。
楽なペースのジョグを利用して、体を回復させ、心拍数を落ち着かせる。 1本目の1,200メートルが終わったら、3~5分間休憩してから次のインターバルを始めよう。
オプション:近所に使えるトラックがない場合は、RPE7とRPE4を1分ごとに変えるランを6分続ける。
- 3~4週目:
- 1,200メートルを3本。スピードランと負荷の軽いリカバリージョグを200メートルごとに交互に切り替える。
楽なペースのジョグを利用して、体を回復させ、心拍数を落ち着かせる。 1,200メートルの各インターバルの間に3~5分の休憩を挟む。
オプション:近所に使えるトラックがない場合は、RPE7とRPE4を1分ごとに変えるランを6分続ける。
- 5~6週目:
- 1,600メートル(一般的なトラック4周)を3本。スピードランと負荷の軽いリカバリージョグを200メートルごとに交互に切り替える。
楽なペースのジョグを利用して、体を回復させ、心拍数を落ち着かせる。 1,600メートルの各インターバルの間に3~5分の休憩を挟む。
オプション:近所に使えるトラックがない場合は、RPE7とRPE4を1分ごとに交互に変えるランを8分続ける。
- 1~2週目:
どのワークアウトも、終了後はクールダウンを忘れずに。
スピードランが終わったら、 体の回復に意識を向けよう。 5~10分の軽いジョギングの後、静的なストレッチやヨガ(コブラのポーズやダウンドッグなど)を実践する。フォームローラーでマッサージすれば、さらに効果が上がるだろう。
文:ダレン・トマッソ(Nike Well Collectiveトレーナー、NASM-PESおよびUSATF認定ランニングコーチ)