自分のフローを見つけて、続けていこう

Coaching

特別なことをしなくても、自分の最高の状態に到達できる。そしてそこから自信、パフォーマンス、良い気分を味わえるという見返りを獲得し続けることができる。

最終更新日:2022年6月2日
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  • アクティビティに没頭する、つまりフロー状態に入ることは、最高のパフォーマンスにつながり、あらゆる種類の上達を促す。
  • ゾーンに入ることは、それほど難しくない。フローを促すアクティビティを毎日数分続けるだけだ。
  • 気が散ってフローに入れない場合は、瞑想にふけりながら散歩して心を落ち着かせよう。


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エキスパートが伝授する、自分のフローを見つけるための5つのヒント

回顧録をむさぼり読んだり、波に乗ったりして、活動に没頭しているときは、長いTo-Doリストや日常の悩み、そして携帯電話のことさえ忘れてしまう。まるで魔法にかかったようだ。しかし実際に経験しているのは、「フロー」という非常に現実的な心理状態だ。スポーツスキルや運動能力など集中力を要するものは、勢いが真の成長を促進する。この勢いを生む秘訣こそが「フロー」なのだ。

フローとは、内容にかかわらず取り組んでいることと完全に一体化している状態のこと。「その瞬間に完全に没入している状態、と定義できます」と説明するのは、フロリダ州ボカラトンの認定心理学者、モーガン・レヴィ博士。ストレス、不安、燃え尽き症候群を専門とする学者だ。「まるで、自分の行動と自己認識の融合を体験しているようなもの」で、私たちの多くがほとんどの時間を、これとは真逆の状態で過ごしている、と彼女は指摘する。

自分の精神状態を、ノートパソコンやスマホに例えるとわかりやすい。「デバイスの速度低下の原因となる、たくさんのタブやアプリを同時に開いていることが多い、」と説明するのは、バンクーバーの心理学者で『How to Be Miserable In Your Twenties』の著者でもあるランディ・パターソン博士。しかし、フロー状態にあるデバイスは、容量のほとんどを1つの高機能アプリの実行に費やし、最高の状態で動作する。

専門家たちは、少し努力すれば、意図的に、しかも頻繁に、フロー状態に到達できると考えている。そしてそれは、絶え間ない成長を促すものとなる。

フローは心地よい

フローという概念は1990年にある心理学者が作り上げたもので(ちなみに、その心理学者の名前はミハイ・チクセントミハイという)、彼は、それを最良の人生体験であると考えた。フローの状態にあると、人は自分の能力をフルに発揮して、やりがい大きな見返り楽しさをすべて同時に得ている。チクセントミハイによればそのようなときは、一般的に自分を「強くて、注意深く、楽にコントロールできて、自己を意識せず、最高の能力を発揮できる」と感じるのだという。問題があたかも消えていくようだ。

マーティン・セリグマンを始めとする他の著名な心理学者たちは、フローの状態になることが真に深い幸福感を得るための鍵であると考えている。良い気分になるのは、フロー活動をしているときだけではない。活動後も穏やかな気持ちになり、より深い充足感と達成感が得られるのだ(パターソン博士は、このフロー後の至福感は味わう価値がある体験だと言う。それは、慌ただしく次のことに移行せずに、今やり終えたことに意識を向け続けられるからだ)。

この背景には生物学的な理由がある。「フロー状態になると、ドーパミンやセロトニンなど気分をよくする神経伝達物質が脳から放出される」とレヴィ博士は説明する。そのため、フロー状態を日常的に体験することは、メンタルヘルスにも生産性の向上にも大きなメリットがあるのだ。

また、アスリートのフロー体験と最高のパフォーマンスにも直接的な関係があることが研究でわかっている。「スポーツ心理学の観点から言うと、フローは心と身体が完全にシンクロしている状態です」と言うのは、フィラデルフィアのスポーツ心理学センターでディレクターを務めるジョエル・フィッシュ博士だ。その状態こそが、毎日のワークアウトをこなしたり、サッカーで活躍したり、良質の炭水化物を摂取するなどの目標を達成したりする大きな原動力になる。

また、日常的なフロー体験は、自信や自尊心の向上にも大きな関連があるという研究結果も出ている。これは、フロー状態を誘発する活動は充足感をもたらす傾向があるうえ、その活動を実行することでさらに上手くできるようになっていくからだ。「日常的にこの状態を達成している人はスキルが向上し、それによってさらに自信を高めることができます」とレヴィ博士は説明する。

これらの良い要素が重なると、あなたはワクワクしながら真剣に目標に向かって進むことができるのだ。

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フロー状態を体験する方法

意図したわけでもなく、自覚してもいないのに、ふとした拍子にフロー状態になることは珍しくない(数時間でパズルを解いてしまったことがあるなら、あなたは、ちゃんとフロー状態を経験しているということ)。

多くの場合、これは無意識のうちに起きる。しかし、次のようにすれば意図的にフロー状態に入ることができる。

1. フロー状態に入りやすくなるアクティビティを見つける。

本当に好きなことをしているときは、多少は手ごわくてもフラストレーションを感じるほどでなければ、フロー状態に入りやすくなる(フラストレーションに陥ると、その瞬間にゾーンから抜け出してしまう)。フロー状態に入るのに適したアクティビティは、それを続けたいと思うような、ある種の明確な手応えを即座に感じられるものでなければならない。たいていの場合、今やっていることに満足感を覚えるかどうかで判断できるとレヴィ博士は言う。

スポーツは、フロー状態を促すのにとても効果的だ。特に、ロッククライミング、ヨガ、サーフィン、スキーなど、注意力を必要とするものが適している。こういったアクティビティでは、「過去や未来のことを考えず、今この瞬間にいることができるからです」とフィッシュ博士は言う。その集中力こそが、ピークから次のピークへ、波から次の波へと渡る勢いを生むのだ。

しかし、正直に言うと、一時的に他のことをすべて忘れて、時間の感覚も失うほど夢中になれるアクティビティなら何でもフロー状態に導いてくれる。「お皿洗い、衣服の整理、チェス、ダンス、洗車、文章を書くことなどすべてそうです」とレヴィ博士は言う。家事のような日常的なことをするときに重要なのは、自動操縦で思考をマラソンさせるのではなく、意識的な状態を維持することだ。「お皿を洗っているときは、お皿の外観、手に持ったときの感触、流れる水の音などに集中します」と彼女は説明する(この最後のヒントは、マインドフルネスも向上させるという点で一石二鳥だ)。

2. 時間を区切る。

フロー状態に入りやすいアクティビティを行うための具体的な計画を立てると、実際にゾーンに入りやすくなる。「小さいことから始めましょう」とレヴィ博士はアドバイスする。「スマホにリマインダーを設定して、毎日5分だけでも良いので、一定時間そのアクティビティを実行してください」。アクティビティを実行するのは、一日のうちのいつでも構わないが、毎日同じ時間に実行するとより一貫性が保たれ、フローが自然に起きるようになると彼女は説明する。アクティビティを熱心にこなすことよりも、一貫性を保つことの方が成長を促す。

3. 気を散らすものを排除する。

フロー状態に入るには集中力が必要なので(当然だ)、静かな場所を見つけて、携帯電話を切り(あるいはマナーモードにして)、アクティビティを始めるのに必要なものを用意する。このステップは、集中力を高めるのに役立つので非常に重要だが、それ以外にも利点がある。道具を揃えるなど、ある程度決まった手順を行うと、脳がフロー状態に入るための準備ができるとパターソン博士は言う。たとえば、トレーニングウェアを着るときにいつも同じ曲をかけたり、キャンバスに向かう前に絵の具や筆をいつも同じ作業台に並べたりする、といったことだ。

4. 頭から雑念を追い出す。

気を散らすものを周りから排除するだけではアクティビティに没頭できないという場合は、脳内のおしゃべりが止まった状態に移行するためのアクティビティを試してみよう。臨床ソーシャルワーカーと心理療法士の資格を持つ、シカゴ在住のケリー・キトリーは、景色、音、匂いなど、周囲の環境に五感を使って集中できる短時間の瞑想的な散歩から始めることを提案する。アクティビティを開始する前に目的が明確になり、すぐ身の回りのことに意識を向けるのに約立つと彼女は言う。今その場に集中することができるのだ。

5. 無理をしない。

フロー状態に入るための準備を整えたからといって、必ずフロー状態に入れるわけではない(残念!)。だから、フロー状態は、気楽にパーティーに誘った友だちのようなものだと考えよう。歓迎され、望まれるが、メインゲストのように欠かせない存在というわけではない。「『もうフロー状態になったかな?これがフロー状態?』などと、ひっきりなしにチェックしてはいけません。なぜなら、フローとは自分の反応について考えないことだからです」と、パターソン博士は説明する。あれこれ気をもむと、脳のスペースからフローが遠ざかってしまうのだ。

つまり、ランニングに出かけたり、庭で土いじりを始めたり、ノートを開いたりするだけで良いということ。たいていの場合、後のことは自然に起きる。フロー状態に入ってしまえば、それを妨げるものは何もない。

文:マリーグレイス・テイラー
イラスト:モジョ・ワン

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公開日:2022年6月6日