魔法のようなパワー:パリ随一のクリエイティブなクラブに旋風を巻き起こす女子サッカープレーヤー
Athletes*
フロリン・クエッサンはウィッチFCのメンバー。自分が住む世界を反映したチームにしようと力を注いでいる。
「Snap Shots」シリーズでは、世界中で活躍する地域のアスリートにスポットを当てる。
どんなサッカーチームにも、独創的なプレーヤーが必要だ。パリを拠点とするウィッチFCは、そんなプレーヤーであふれるクラブ。ベテランと初心者レベルの選手で構成されたチーム全員が、女性アーティストとクリエイターなのが特徴だ。
ウィッチFCのスター選手の1人、ライターでアーティストのフロリン・クエッサンにサン・ポール遊技場で話を聞いた。サン・ポール遊技場は、パリのマレ地区の中央にある17世紀に建てられたイエズス会の建造物、サン・ポール・サン・ルイ教会の向かいにある。フロリンはサッカーに対する情熱と、アーティスト兼サッカー選手が集まる珍しいチームに自らのコミュニティを見出すまでのストーリーを語った。
サッカーに興味を持ったきっかけは?
両親はトーゴの出身ですが、私はパリで生まれました。弟が2人いて、みんな年が近いので、かなり結束の強い家族なんです。子どもの頃の遊びといえば、いつでも弟や同じ建物に住む他の子どもたちと一緒でした。あの頃は、ボールさえあれば、みんな楽しく過ごせたんですよね。一緒に遊べる女の子がいなかったので、いつも弟や近所の男の子たちと、アパートの下でサッカーやバスケをしていました。
フランスにおける女子サッカーの成長についてどう思いますか?
小さい頃は、サッカーといえば間違いなく男の子のスポーツと考えられていました。弟たちでさえ、私を仲間外れにしたい時は、冗談ぽくですが「男子だけでサッカーしたい」と言っていたくらいです。でも、しばらくして、女性たちが正当な評価を求めて声を上げていることに気がつきました。最近関心が高まる女子プロサッカーから昨年の夏にフランスで開催された世界大会、そしてメディアでの注目度。女子サッカーが正当に評価されなかったり、話題にもならない時代もありましたが、今ではテレビや雑誌が大々的に取り上げる存在へと成長を遂げました。女性たちが奮闘した成果です。
女子サッカーのコマーシャルが流れて、それが自然に受け入れられるなんて、数年前には想像もできなかったこと。このような変化を目にすることができて、本当にうれしく思っています。私も定期的にプレーできる女子チームを探すモチベーションをもらいましたから。ただ、サッカーは大好きですが、まさか自分がチームに加入するとは思ってもいなかったですね。
ウィッチFCについて聞かせてください。
ウィッチFCは、スポーツ好きで、情熱的で、自分の感性をチームにもたらしたいと考える女性たちの集まりです。サッカーを軸として集まっていますが、このチームは間違いなくお互いの自信を高め合うものだと感じています。クラブの名前も、すごく大胆な名前にしたいと皆で決めました。「ウィッチ(魔女)」はフェミニストの究極のアイコンですし、魔女といっても悪い魔女だけではありませんからね。ただ、ローラーダービーのチームのように、地名を入れないチーム名にしたいと思ったんです。
あなたのチームでの役割は?
私のポジションは、ミッドフィールダーかディフェンダー。汗をかいて、有酸素運動になることが好きなんです。両方のペナルティエリアを行き来して、試合の流れを変えられることに楽しさを感じます。ミッドフィールダーのポジションは、走り回って勝負に参加できるだけでなく、エネルギーを発揮できれば試合に大きな影響を与えられます。チームメイトは、エネルギッシュでチームに貢献していると言ってくれます。試合に全力を尽くし、楽しんでいることを仲間にわかってもらいたいと思っているので、そう言ってもらえるだけで十分ですね。
「両方のペナルティエリアを行き来して、試合の流れを変えられることに楽しさを感じます」
自分と似た考え方の人たちとプレーするのはどんな感覚ですか?
チームの絆が深まるにつれ、仕事でもピッチの上でも1人ひとりがお互いの支えになっていることを感じます。たとえば、ずっと書きたかった脚本を書いた人もいますし、以前よりもっと絵を描くようになった人もいます。私は、チームメイトと一緒に演劇の授業を始めたところです。まさに、女性同士の結束が夢を現実に変える力になるという良い例ですね。友達が無条件に応援してくれれば、とてつもなく大きな自信が生まれるんです。
文:マセール・エンディアイ
写真:マニュエル・オバディア=ウィルズ
報告:2020年10月