テンポランとは?
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テンポラン(閾値走)は、スピードを上げて走れる距離を伸ばすために役立つ。
テンポラン(閾値走とも呼ばれる)は、スピードを上げて走れる距離を伸ばすために役立つ。 テンポランは、高強度のパフォーマンスを楽にこなせるように、無酸素運動の閾値を上げるトレーニング方法だ。 ここでいう高強度とは、より長い距離やより速いペースで走ることを指す。
到達できる距離や強度は、心肺系のフィットネスレベルによって異なってくる。 筋肉が必要なときに十分な酸素を取り込めていない状況は、すぐに疲労という現象で表出する。 あるいは、体が乳酸を効率的に代謝していない場合も疲労を感じる。
乳酸とは?
乳酸は、無酸素運動の心拍数でトレーニングしている間に作られる代謝副産物だ。 エネルギー変換時に酸素が介在する有酸素運動のランニングとは対照的なものである。 最大心拍数(HRM)の80%以上で、エネルギーシステムは切り換わる。 80%以上になると、酸素の供給スピードよりも速くエネルギーを送らなければならない。
そこで体は酸素の助けを借りずに、グリコーゲンを燃やすことでATP(アデノシリン三リン酸)エネルギーを獲得する。 これが解糖と呼ばれる現象で、副産物として乳酸が作られる。 運動強度が高いほど(つまり無酸素運動の閾値に近くなるほど)、筋肉内でたくさんの乳酸が作られる。 その後、乳酸は分解されて乳酸塩になり、血流に放出される。
無酸素性エネルギーの生産は、長時間にわたって持続できない。一般的には、1分から3分までが限度だ。 この短時間に、大量の乳酸が蓄積される場合もある。 乳酸の蓄積は一時的であっても、パフォーマンスに悪影響を与える可能性があるのだ。
過剰な乳酸を避けたい理由は?
まず断っておきたい。乳酸が悪者扱いされているのは不当である。 乳酸のおかげで、体は無酸素でエネルギーを生産できる。 乳酸は体に必要な副産物なのだ。 ただし、過剰に乳酸が蓄積すると不都合が生じる。
乳酸によって、筋肉中のphバランスが酸性に傾く。これはアシドーシスと呼ばれ、エネルギー生産の速度が低下し、筋肉に痛みと灼熱感を引き起こす。 直観に反する事実かもしれないが、これは体を活動に慣らしている反応だ。 体が鍛えられるほど、より効率的に乳酸塩が排出できるようになる。 青信号の時間が延びるように、体が高強度のワークアウトに順化されるのだ。
筋肉が酸性に傾かないように、体が乳酸塩を効率的に排出できるようにして、パフォーマンスへの悪影響を防ぐ方法はあるのだろうか? その答えが、乳酸塩を代謝するトレーニングだ。 テンポランは、乳酸塩の代謝を高めるワークアウトの一種である。
テンポランとは?
テンポワークアウトは、負荷のあるランニングを我慢強く一定時間続ける。 楽なペースで流すジョギングではなく、体を駆り立てて心拍数を上げ、スタミナを試すことになる。 いつもより速いペースだが、走る時間は短い。
インターバルトレーニングとも違う。 止まったり走ったりを繰り返すのではなく、20〜30分間走り続ける。 気持ちよく走り終える楽なランニングとは異なり、相応の疲労感がある。 自分自身を駆り立てて、速く走る閾値トレーニングの一種だ。
テンポランという名前は、テンポペースというスピードが由来だ。 テンポペースは人によって異なり、それがテンポランの面白さでもある。 テンポペースは現在の走力に合わせて調整し、取り組みの進度に応じて変化させていく。 多くのランナーはこの調整を楽しみ、自分の進歩を観察することで大きなモチベーションを得ている。
テンポペースの算出方法
テンポペースはトレーニングセンターで測定するのがおすすめだが、自宅でも算出できる。 方法は次のとおり。
- 1時間のレースで走り続けられる最速のペースを測定する。 10kmレースのペースでもよいし、1時間走り続けられる最速のペースでもよい。
- ランニングの距離をタイムで割って、ペースを求める。
テンポペースは、通常5kmレースのペースよりも約18秒(1kmあたり)遅い。 経験豊富なランナーなら、ハーフマラソンのペースよりも少し速いペースが目安となる。
テンポランワークアウト
テンポランのメリットは?
1.乳酸塩の代謝向上
テンポワークアウトによって、乳酸塩の代謝が向上する。乳酸の生成を意図的に急増させ、体がうまく代謝できるように促すからだ。 たとえば乳酸が蓄積すると、ワークアウト後の疲労感で脚が重くなる。 有酸素運動は、心肺機能を鍛えてくれる。一方、乳酸性閾値でのトレーニングは、筋肉が蓄積した乳酸の代謝を訓練するためのワークアウトだ。
乳酸塩が効率的に代謝されていれば、エネルギー生産が遅れても筋肉が酸性環境で無理をせずに済む。 このため、よりハードな走りを長時間続けられるようになる。つまり持久力がつくのだ。 乳酸の蓄積によって、筋肉が悪影響を受けることはない。だからテンポランでは、単純にパフォーマンスが向上する。2.心肺系の健康状態の改善
心肺機能が不足していると、運動しながら筋肉に酸素を送る心臓が懸命に働く必要がある。 つまり必要な酸素を維持するために、心拍数が急上昇する。 心拍数が速くなると、有酸素運動の閾値を超えて、無酸素運動の閾値に近づいていく。
前述のように、HRMの90%は長時間維持できない。そのためいずれ走れなくなって、立ち止まってしまうだろう。 長距離ランの苦しさはここにある。 心肺系のシステムが、このような強度で働くワークアウトに慣れていないのだ。 テンポワークアウトをトレーニング計画に組み込めば、ランナーは短期間で心肺機能を改善できる。 具体的には、VO2 Max、心拍出量、持久力が向上できる。3.レース当日のスピードがアップ
テンポランの技法を広めた画期的な研究によると、OBLA(血中乳酸蓄積開始点)と呼ばれるテンポレースでのランニングを続けた結果、レース当日のスピードがアップした。 この研究は『European Journal of Applied Physiology and Occupational Physiology』(欧州応用生理学および職業生理学ジャーナル)誌に公開されたもの。研究に協力したランナーたちは、OBLAペースで20分間走るトレーニングを続けた。
このランニングを1週間に1回、14週間続けた結果、ランナーの平均OBLAペースは4%短縮した。 これは乳酸の蓄積が遅くなり、ランナーがより速いスピードで長距離を走れるようになった証拠である。 ハーフマラソンのベストタイムが1時間だった長距離ランナーなら、57分くらいで走れるようになるということだ。