ONE ON ONE: 高田真希×町田瑠唯×馬瓜エブリン
Athletes*
2021年の夏の大会を終えたアスリートたちが、彼らの道のりやスポーツの未来を語る『ONE ON ONE』。第3弾はバスケの髙田真希、町田瑠唯、馬瓜エブリン。
2021年の夏、バスケットボール女子日本代表は、その「笑顔」とともに日本のバスケットボールの強さを確かに世界に証明して見せた。世界と対峙する上で体格差がチームの強さに比例してしまうのは、様々な競技にも当てはまる課題だ。しかしどんなに体格差で劣っていても、その並々ならない練習量とチームワークでライバルたちを圧倒して見せた彼女たち。彼女たちが残した歴史的な快挙は決してミラクルではない。想像を絶するほどの練習量。その日々の積み重ねと、「世界一」という強い想いがチーム全員を、そして日本の女子バスケットボールを着実に勝利へと導いてきた。髙田真希、町田瑠唯、馬瓜エブリンは、チームとして、バスケットボール選手として、ひとりの人間として。まだまだ前を見据えて、コートの中だけでなく、外側でも自分たちを表現していく。その姿がこれからもたくさんの人に勇気と希望を与えていくことだろう。一歩一歩、進んできた日々の自信の現れなのだろうか。彼女たちが語る言葉は軽やかだった。それを聞くだけで、女子バスケットボールの明るい未来を信じざるを得なくなる。
–––今年の夏の大会までの道のりを振り返るといかがでしたか?
Evelyn:練習のことは思い出したくないですね。毎日逃げ出したいと思ってました(笑)でも試合よりも練習のほうがキツかったので、その裏返しで間違いなく練習量をこなしているのは自分たちだっていう気持ちの強さにつながっていましたね。
Machida:大会期間中は体力的にもキツかったですし、頭もよく使いました。でも、きつくてもこれを乗り越えれば大丈夫だと思えるくらい練習したので自信になりましたね。
–––練習中、髙田選手はキャプテンとしてどのようにチームを支えようと意識されていたのでしょう?
Takada:とにかく率先して声を出すことは意識していましたね。練習メニューひとつひとつに注意深く意識を持って取り組まないといけないので、各練習メニューに切り替わる時にはとにかく率先して声を上げていましたし、それにみんなが続いてくれていたので自然と良い雰囲気を生み出せたと思います。
Machida:リツさん(髙田選手)がキャプテンじゃなかったらここまで良い雰囲気のチームにはならなかったんだろうなと思いますよ。
Evelyn:髙田選手は練習もそうですし、それ以外でもチームを盛り上げてくれる存在でしたね。イタズラをしてチームを盛り上げたり(笑)
Takada:(笑)
–––では、髙田選手から見て町田選手とエブリン選手はどのような存在でしたか?
Takada:プレーはポイントガードである町田選手から始まることが多いんです。プレッシャーも大きかったと思います。それでも、そういった顔を見せずリングにアタックし続けてくれたことによって、周りの選手もすごく活かされる部分がたくさんありました。あとは、私がプレー中に「もっとこうした方がいい」と作戦を練っていたことをすぐ体現してくれるので、すごくやりやすくて本当に頼もしい存在でしたね。エブリンはムードメーカーでもありますし、特にリーグ初戦のフランス戦ではエブリンが日本の悪い流れを断ち切って活躍してくれたことで勝ちに持っていくことができたので、そこから自分たちが勢いに乗っていけましたね。あとは、オフコートでもしっかりみんなを和ませてくれたり、ゲーム機器を持ってきてくれたのですごく楽しかったです。
Evelyn:そう言ってもらえてめちゃくちゃ気持ちよかったので、今度からもっといっぱいゲームを持っていきます(笑)
–––大会期間中にみなさんを支えてくれたものはなんでしょう?
Machida:高い目標を持っていたことですかね。チームとしてのゴールが「世界一」だったので、全員がそこに向かって練習に取り組んでいけたことで最後までがんばれたと思います。
Evelyn:チームのために何ができるのかという想いがありましたね。あともうひとつの理由としては、幼いころから日本代表になって夏の大会に出たいという夢があったからです。これは学校の文集にも書いていているほどだったので、そのためにずっとやってきたというのはありますね。夢のために。
Takada:私自身は日本の女子バスケットボールを活気づけたいと思っているので、もっともっと盛り上げるためにはやっぱり「ここで負けられない」という気持ちがありました。試合の後半に自分たちが逆転できたりしたのは、その気持ちの強さを表せたからなんじゃないかなって思います。
–––なぜ日本の女子バスケットボールはここまで強くなれたのでしょうか?
Takada:今までの練習や国際試合などでの経験の積み重ねですかね。全員が「やっぱり日本は強いんだ」というプライドをしっかり持って戦うことで、負けられないという気持ちが強くなっている気がしますし、それが日本の女子のバスケットボール全体として良い結果を生み出しているんじゃないのかなと思います。
Machida:国際試合を通して、日本のバスケットボールが世界に通用するというということを感じた選手が多くなってきているので、自信を持ってみんながプレーできていていますよね。
Evelyn:やっぱり日本のバスケットボールの練習量っていうのは世界一だということを自分たちも自負をしています。練習がやっぱり自信につながっていきますね。
–––体の大きさは関係ないことを証明しましたね。
Machida:客観的に見ても日本のチームってすごい運動量なんです。オフェンスもどんどん走るし、ディフェンスもアグレッシブに当たって。ガードからセンター関係なくみんなが走れるので、そういう国はやっぱり他にはないのかなと思います。
–––みなさんのように、最高のチームワークを発揮するための秘訣はなんでしょう?
Evelyn:個人的な意見ですが、やっぱり人って完璧じゃないので一人ひとりに期待しすぎないことですかね。例えば「なんでここでパスをくれなかったの?」と期待しすぎて裏切られた気持ちになるのは良くないので、程よい余裕を持つことはすごく大事なのかなと思います。
Takada:今回のチームで特徴的だったのは、個人の役割が本当に明確になっていたことで、それがすごく良かったんじゃないのかなって。ホーバスヘッドコーチが選手それぞれに期待していることはこれで、これを求めているんだよということを、一人ひとりとしっかりコミュニケーションを取っていました。
Machida:本当にそうですね。ヘッドコーチが言ってくれたことで印象に残っているのが「スーパースターはいないけど、スーパーチームだよ」という言葉でした。全員が何かのスペシャリストとして武器を持っていたので、それをみんながコートで表現できたことがスーパーチームに近づけた要因だったと思います。
–––では、そんな日本の女子バスケットボールがさらに高みを目指すために、これから何が必要になりますか?
Takada:やっぱり、高い目標をしっかり設定して進んでいくことが大事だと思っています。今回は準優勝でしたが、次の大会では一番を獲りに行くという意識がすごく大切です。そこに向かって、また残り3年を全員がしっかり意識を持って日々の練習をしていかなきゃいけないですね。
Machida:高い目標を目指してやっていかないといけないですし、女子アスリートはやっぱり結果を出し続けないと注目されなくなってしまう傾向があるので、結果を出し続けることも大事です。それに加えて見ている方々に楽しいと思ってもらえるようなバスケットボールを見せられたらいいんじゃないかなと思います。
Takada:今まではどちらかというと、女子のバスケットボールってなかなか盛り上がらなかったり、リーグ戦をやっていても満員の中で試合をすることが少なかった状況でした。けど、今回たくさんの方々に見ていただた良いきっかけとなったので、やっぱりプレーで見せていくということがこれから必要にもなってきますね。
–––エブリン選手はコートの外でも様々なメディアに出演されご活躍されていますね
Evelyn:はい。私もメディアに出演させていただいたり、自身でいろいろな発信をすることで、女子バスケットボールを知ってもらうきっかけになったらいいなと思っています。番組のジャンルはバラエティ寄りだったとしても、それを入り口にして興味を持ってもらえたらと思っています。あとは、今回女子バスケットボールが楽しいと思ってくれた方々がたくさんいると思うので、男女の格差の部分をもっともっと改善していこうという意識の方々が増えていったらいいなと思いましたね。
–––未来のバスケットボール選手を目指す子どもたちに伝えたいことはなんですか?
Takada:高い目標や夢をしっかり掲げてそこに向かってチャレンジしていくことですね。それがすごく大切なんだというのを私自身は改めて実感しました。あとは、自分自身は準優勝という結果は本当に人生で一番ぐらいに嬉しかったんですが、終わって実感したのは、結果に表れる表れないのは別としてやっぱりそこで何かがんばったことが結果以上の価値があると感じました。目標を設定した上でそこまでの過程をすごく大切に過ごしてほしいです。
Machida:そうですね、私は以前からSNSを通して「小さいのでバスケットボール辞めました」とか「身長に恵まれなくて諦めました」というコメントをいただくことが何度かあって。やっぱりそういう方々に諦めてほしくないなっていう気持ちがすごくあります。大会を通じて「小さくても世界で通用するんだ」ってところを伝えたかったという想いもあったので、チーム全体としても小さかったですが、それは伝えることができたのかなと思います。大きな選手より努力が必要かもしれないですが、やり方さえ工夫すれば小さくても可能性はいくらでもあると思います。みんな好きでバスケットボールを始めていると思うので、諦めずにがんばってほしいです。
Evelyn:自分はNBAのラッセル・ウェストブルック選手の大ファンなんですけど、彼の座右の銘で“WHY NOT” という言葉があるんです。「何でダメなの?」「なんでもやってみようよ」というニュアンスです。バスケットボールでも、バスケットボール以外のところでも、自分がやりたいと思ったことがあれば何でもチャレンジしてみよう、というのは子供たちに伝えたいですね。バスケットボール競技の3対3でも5対5でも、両方出場する選手がこれからも増えてくると思いますし、阻むものがないならなんでもやってみたらいいと思います。自分自身もたくさん失敗してきましたけど、それでもクレイジーなことにどんどん挑戦していけば得られるものがたくさんあります。それを楽しんで欲しいですね。
–––最後に、みなさんの「笑顔」が印象的な大会でしたね。観ていて楽しかったです。
Takada:はい。女子のバスケットボールを見てくれた方から「みんな楽しそうだね」とか「笑顔だったね」というお声かけをたくさんいただきました。自分自身もこの夏の大会がすごく楽しみでしたし、試合も楽しかったので、そういう気持ちって伝わるんだなと思いました。やっぱり試合になると緊張しちゃったり、こわばっちゃったりしちゃいますけど、それでも楽しむってやっぱり大切です。それを見てくださった方にもすごく良い何かを届けられたのかなと思いました。