ランニングの向上に役立つ12のソリッドコアエクササイズ

Coaching

上半身を強化すれば、ランニングの持久力やパワーが向上する。より速く、より長く走れるようになりたいのなら、ここで紹介する上半身の強化法を試してみよう。

最終更新日:2021年5月24日

ランニングに必要な筋肉といえば、まずは下半身の大きな筋肉を思い浮かべるだろう。大臀筋、大腿四頭筋、ハムストリング、ふくらはぎ。でも忘れてならないのがコアだ。ランナーにとって、コアの強化はシックスパックの獲得よりも喫緊の課題である。

「胴体と腰を安定させているすべての筋肉群。それがコアの定義だと考えてください」と語るのは、筋力とコンディショニングのコーチを務めるジャネット・ハミルトン。アトランタのコーチング会社Running Strongのオーナーだ。コアには、シックスパックと呼ばれる腹直筋(外から見えない人にも例外なく付いている)、左右の回転をサポートする内腹斜筋と外腹斜筋、コルセットのように腹部を包み込み、へそを内側に引き込む深部筋肉の腹横筋、脊柱に沿って付く脊柱起立筋、腰の深部筋肉の多裂筋、大臀筋、骨盤底筋が含まれる。

これらの筋肉をすべて強化すれば、姿勢、安定性、フォームが向上し、より体の引き締まった速いランナーになれる。学術誌『The Journal of Strength and Conditioning Research(筋力コンディショニング研究ジャーナル)』に発表された研究では、一定のコア強化トレーニングを継続することでスピードアップできることが実証された。また学術誌『PLOS One』に発表された研究では、持久力とランニングエコノミー(走行時の体内エネルギー効率)を高める可能性も明らかになっている。

「踏み切りの際は脚に力を送り込み、着地の際には力を吸収するのがコアの働き」

ジャネット・ハミルトン
Running Strongオーナー

上半身(コアと言い換えてもいい)を強化することで、なぜ大きなの効果が生まれるのか。そのメカニズムを理解するため、走るときに体がどんな動きをしているのか考えてみよう。走るという運動は、基本的に左右のバランスを取る動きだ。腹筋と背中の筋肉が、まっすぐ安定した姿勢をキープするのに重要な役割を果たしている。「ランニングでは、片足で踏み切り、宙を飛び、反対側の足で着地します」とハミルトンは語る。踏み切りの際は脚に力を送り込み、着地の際には力を吸収するのがコアの働きなのだ。

力を送り込み、吸収するには、強くて柔軟なコアの筋肉が必要になるとハミルトンは語る。「そうでなければ、うまく力を生み出すことも吸収することもできなくなります。その結果、パフォーマンスが下がって、けがのリスクも高まるでしょう。コアが弱い状態で走っていると、腰がぐらついて背中や膝が痛み、足を引きずるようになってしまいます」

百聞は一見に如かず。長距離ランのスタート時と、終盤の走りを写真で比較してみよう。終盤にフォームが崩れてしまう人は少なくない。クリス・ベネット(Nikeグローバルランニング シニアディレクター)いわく、疲れると上半身が前や後ろに傾きすぎたり、バタバタ接地するような走りになったりする。でもコアが強固なら、このような崩れを防いで、疲れても効率的に走り続けることができる。ハミルトンの意見も極めてシンプルだ。「コアが強くなるほど、疲労への耐性が高まります」

コア強化のエクササイズを、トレーニングに取り入れるのは簡単だ。多くのエクササイズは場所を選ばず、器具も使わずに自重だけでできる。適切なフォームを保ちながら筋肉を鍛えられるよう、十分な労力と時間をかけるのがハミルトンからのアドバイス。ハードなランニングをしない日に取り組むのがいいだろう。

さまざまな角度からコアを強化する運動を、週に3回取り入れてみよう。ここで紹介するメニューは、すべてハミルトンとベネットコーチのおすすめだ。コアの集中的な強化を習慣にしてもいいし、いつもの筋力トレーニングに付け足してみてもいい。決まった回数や時間をクリアすることで満足せず、目的の筋肉が疲労するまでエクササイズを続けるのがハミルトンからのアドバイスだ。

目的の筋肉が疲労すると、エクササイズを正しいフォームで続けられなくなる。つまり5回で限界に達する動きもあれば(Vシットアップなど)、20回くらい頑張れる動きもある。運動を習慣化するのが、楽しいチャレンジだと感じられるように取り組もう。あまりにキツいとやる気が失せるので、次回も頑張ろうと思える程度の負荷がちょうどいい。動きの種類にも、ときどき変化をつけてみよう。それがコアエクササイズを飽きずに続けるコツなのだとベネットコーチは指南する。

1. バイシクルクランチ

鍛えられる筋肉:腹直筋、斜筋

仰向けになり、両腕を曲げ、両肘を外側に向けて指先が耳の後ろに軽く触れるようにする。曲げた両膝が腰の真上に来るまで脚を上げ、かかとを90度に保つ。肩を床から持ち上げる。ここからスタート。上半身を左にひねって右肘を左膝に近づけ、右脚をまっすぐ伸ばして床から数センチ離れた状態にする。最初の姿勢に戻り、反対側でも繰り返す。これで1セット。交互に繰り返す。

2. プランク

鍛えられる筋肉:肩、背中の上部、胸、腹直筋、腹横筋、大臀筋、大腿四頭筋、ふくらはぎ

プッシュアップ開始前の体勢をキープ。手首が肩の真下に来るようにして、背中はまっすぐ伸ばす(腰が下がったり上がったりしないこと)。腹筋、太もも、大臀筋を引き締め、両手の数センチ前の床を見る(難しいと感じる場合は、前腕を床に付け、肘が肩の真下に来るようにする)。できるだけ長い時間この姿勢を保つ。これで1セット。繰り返す。

3. シングルレッグ グルート ブリッジ

鍛えられる筋肉:腹直筋、斜筋、大臀筋、ハムストリング

仰向けになり、両膝を曲げ、足を腰幅に開いて足の裏を床につける。両腕を曲げて体の横に置き、指先がかかとに軽く触れるようにする。左脚を伸ばし、かかとを90度に保って床から数センチ浮かせる。ここからスタート。右のかかとで床を押し、大臀筋を引き締めて、膝、腰、肩が一直線になるまで腰を持ち上げる。この姿勢で少しキープし、ゆっくり腰を下げて最初の姿勢に戻る。これで1セット。繰り返し行い、反対側でも繰り返す。

4. オルタネイティング デッドバグ

鍛えられる筋肉:腹直筋、腹横筋、腰

仰向けになり、両腕を肩の真上に伸ばして立てる。曲げた両膝が腰の真上に来るまで脚を上げ、かかとを90度に保つ。ここからスタート。コアを安定させ、腰を床に押し付けた状態でキープ。左腕を頭上に向けてまっすぐ下ろし、右脚も伸ばして、床から少し浮かせた状態になるまで下ろす。最初の姿勢に戻り、反対側でも繰り返す。これで1セット。交互に繰り返す。

5. プランクステップ

鍛えられる筋肉:肩、背中の上部、胸、腹直筋、腹横筋、大臀筋、内もも、外もも、大腿四頭筋、ふくらはぎ

プランクの姿勢からスタート。左足を左に、右足を右に踏み出す。左足を中央に戻し、右足も中央に戻す。これで1セット。繰り返す。

6. サイドプランク

鍛えられる筋肉:肩、背中の上部、斜筋、大臀筋

腰の左側を床につけて座り、左手が体と直角になるようにして手のひらを床に置く。両脚はまっすぐ伸ばしたまま重ね、かかとを90度に保つ。左手で床を押して腰を持ち上げ、右腕を天井方向に伸ばす。可能であれば右脚を高く上げる。支えが必要な場合は、左膝を曲げて床に置く(難しいと感じる場合は、左前腕を床に置く)。この姿勢でできるだけ長い時間キープする。これで1セット。反対側でも繰り返す。

7. Vシットアップ

鍛えられる筋肉:腹直筋、腹横筋、斜筋、背中の下部、内もも

脚を伸ばしたまま仰向けになる。腕は頭上に向けて伸ばし、前腕が耳に軽く触れるようにする。腹筋を安定させ、腰を床に押し付ける。目線をつま先に向け、大臀筋を引き締めながら、両脚と肩を同時に床から離し(腰だけが床についている状態になる)、体でV字型を作る。この姿勢でできるだけ長い時間キープする。これで1セット。繰り返す。

8. リバースクランチ

鍛えられる筋肉:腹直筋、腹横筋、斜筋

手のひらを床につけて仰向けになり、両膝を曲げ、足の裏を床につける。両脚を持ち上げて床から浮かせる。ここからスタート。腹筋を使って両膝を胸に近づけ、腰が床から持ち上がるようにする。この姿勢で少しキープし、最初の姿勢にゆっくり戻る。これで1セット。繰り返す。

9. ホローホールド

鍛えられる筋肉:腹直筋、腹横筋、斜筋、背中の下部、内もも

脚を伸ばしたまま仰向けになる。腕は頭上に向けて伸ばし、二の腕が軽く耳に触れるようにする。腹筋を安定させ、腰を床に押し付ける。目線をつま先に向け、大臀筋を引き締めながら、両脚と肩を同時に床から数センチ離す(腰だけが床についている状態になる)。この姿勢でできるだけ長い時間キープする。これで1セット。繰り返す。

10. ウィンドシールド ワイパー

鍛えられる筋肉:腹直筋、斜筋、腰、大腿四頭筋

仰向けになり、T字型になるように両腕を左右に伸ばし、肩、背骨、腕を床に押し付ける。曲げた両膝が腰の真上に来るまで脚を持ち上げ、かかとを90度に保つ。ここからスタート。背骨と腕を床に押し付け、両膝を90度に保った姿勢のまま、コントロールしながらゆっくり、両脚をできるだけ左側に倒す。腹筋を引き締めて最初の姿勢に戻り、反対側でも繰り返す。これで1セット。交互に繰り返す。

11. マウンテンクライマー

鍛えられる筋肉:肩、背中の上部、腰、胸、腹直筋、腹横筋、斜筋、大臀筋、大腿四頭筋、ふくらはぎ

プランクの姿勢からスタート。コアを安定させたまま、左膝を胸の方向に引きつける。左脚をプランクの位置に戻しながら右膝を胸に引きつける。これで1セット。ゆっくりのペースで、交互に繰り返す。

12. ヒップディップス

鍛えられる筋肉:肩、背中の上部、腰、胸、腹直筋、腹横筋、斜筋、大臀筋、内もも、外もも、大腿四頭筋、ふくらはぎ

プランクの姿勢からスタート。コアを安定させ、大臀筋を引き締めながら、左腰を床に落とす。最初の姿勢に戻り、右腰で繰り返す。これで1セット。ゆっくりのペースで、交互に繰り返す。

文:アシュリー・マテオ
イラスト:ケシア・ガブリエラ

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公開日:2020年6月18日