シットアップやクランチで鍛えられる筋肉
スポーツ&アクティビティ
ここでは腹筋の構造に関する知識と、腹筋を鍛えて期待どおりの結果を得るための方法について解説する。
コアを強化したい場合に役立つ腹筋のエクササイズは数えきれないほどある。 シットアップとクランチはその代表格。比較的簡単に行え、器具も不要だ。
ところで、その効果は一体どのくらいあるのだろうか? シットアップやクランチが腹筋のどの部分に効くのかについて説明し、効果を高める方法をいくつか紹介しよう。
腹筋の構造
さまざまな腹筋のエクササイズで使う筋肉について取り上げる前に、基本的な腹筋の構造について理解しておきたい。 腹壁は、主に4つの筋肉から成る。
- 腹直筋は、胸郭の下半分から骨盤にかけて胴の中央部を走行する筋肉で、 前屈、側屈、背骨の回旋を主な働きとする。
- 外腹斜筋は、胸郭の外側から胴の中心に向けてややV字形に走行する大きな筋肉で、 背骨の側屈と回旋を担う。
- 内腹斜筋は外腹斜筋の深層に位置し、これも胴を広く覆う薄い筋肉だ。 外腹斜筋とともに腹壁の中間層を成し、背骨を側屈または回旋させる作用がある。
- 腹横筋は腹壁の最深層を成す筋肉。 コルセットのように臓器を支え、コアを引き締める際(たとえば、お腹を打たれそうになって身構えるとき)に作用する。
一般的にコアと呼ばれる胴の部分には、腹壁を成す筋肉以外の筋肉も含まれる。 コアの筋肉は、日々の活動やランニングなどの運動時に、体を安定させてバランスを保つ役割を担う。
主なコアの筋肉には、腹筋に加え、骨盤底筋、脊柱起立筋、多裂筋(背骨に沿って付いている筋肉)、横隔膜が含まれる。 背中と胸の筋肉、大臀筋、股関節屈筋をコアに含める運動生理学者もいる。
クランチとシットアップでターゲットになる筋肉
クランチとシットアップは同類の運動であり、ターゲットになる筋肉も似通っているが、 多少の違いがある。 そのため、それぞれのエクササイズをアレンジすることで、鍛える筋肉を変えることが可能だ。
1.シットアップ
鍛えられる筋肉:
- 腹直筋
- 内腹斜筋と外腹斜筋
- 腹横筋
- 股関節屈筋(腸腰筋と大腿直筋)
シットアップのやり方:
- 床やマットの上に仰向けになる。
- 膝を曲げ、足の裏を床につける。
- 手の指先を耳の後ろに回して後頭部に軽く触れるようにし、肘を左右に開く。
- 胸が床から持ち上がる高さまで、上体を丸めて起こす。
- 上体が垂直に立って膝に近づくまで、腰から上を起こしていく。
- 反対に、上体をゆっくり床まで戻していく。
- この動作を繰り返す。
バリエーション:股関節屈筋への負荷を下げ、その分腹筋への負荷を上げるには、足を固定しないようにするといい。 足先をバーやベンチの下に入れて固定したり、誰かにおさえてもらったりせずに行ってみよう。 ただし、足を固定しない状態でも、上体を床から持ち上げる際は、足が床から離れないように踏ん張る必要がある。
上体にひねりを加えれば、腹斜筋への不可を高めることもできる。 これは通常、オブリークシットアップと呼ばれる。 上体を床から持ち上げながら片側にねじり、肘が反対側の膝に近づくようにする。 左右均等に鍛えられるよう、交互に同じ回数行うようにしよう。
2.クランチ
鍛えられる筋肉:
- 腹直筋
- 内腹斜筋と外腹斜筋
クランチのやり方:
- マットの上に仰向けになり、膝を曲げ、足裏をマットにつける。
- 手の指先を耳の後ろに回して後頭部に軽く触れるようにし、肘を左右に開く。
- 上体を丸めて膝の方向に向かって起こし、背中の中央が床から離れたところで静止する。
- ゆっくりと上体をマットに戻し、この動作を繰り返す。
バリエーション:バランスボールなど不安定な物の上で行うと、バランスを保つために腹横筋を使うことになる。 American Council on Exercise(米国運動協議会)が2014年に行った研究では、このバリエーションは、シットアップやバイシクルクランチ、器具を使うその他の腹筋エクササイズと比べても、最も効果が期待できる腹筋エクササイズの一つであることがわかっている。
腹筋エクササイズに関してよくある質問
腹筋エクササイズを習慣にすれば、シックスパックを手に入れられるか?
残念ながら、腹筋エクササイズだけでシックスパックが作れる可能性は低い。 実際、2011年に『Journal of Strength and Conditioning Research』で発表された研究論文では、6週間の腹筋トレーニングにより筋持久力は向上したが、腹部の脂肪を減らす効果は認められなかった。
腹筋の上に脂肪の層がある(これは健康な証!)と、シックスパックは見た目に現れない。 シックスパックを手に入れたいのなら、食事を調整し、有酸素運動を取り入れて、体脂肪率を減らす必要がある。
腹筋を鍛えられるエクササイズはほかにもあるか?
もちろんだ。 シットアップやクランチの代わりになる一般的なエクササイズと言えば、プランク。
コアになる腹筋(特に腹横筋)だけではなく、脊柱起立筋や大臀筋といった補助的なコアの筋肉にも効くため、人気のあるエクササイズだ。
プランクを行うには、まず床かマットの上にうつ伏せになり、 曲げた両肘で体を支えながら上体をマットから起こし、上腕とつま先でバランスを取る。 そのまま頭、腰、かかとが一直線になるように姿勢をキープする。
クランチやシットアップは誰でも取り組める運動か?
背中に問題を抱えている場合、フルシットアップはおすすめできない。 背中への負担を減らすには、クランチのバリエーションがおすすめだ。 腰や背中に問題がある場合は、パーソナルトレーナーに相談し、痛みやケガのリスクを最小限に抑えながらコアを鍛えるトレーニングプログラムを組み立ててもらうとよい。