体は休みを求めているのか

Coaching

トレーニングのしすぎは、筋肉痛以外の兆候からも知ることができる。目立たない異変に気づくヒントをご紹介。

最終更新日:2022年6月30日
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  • ハードなトレーニングをしている時は、数日間をリカバリーにあてることが、体をいたわる方法になる場合がある。
  • よく眠れないのは、体が休みを求めているサインの1つ。こうした兆候や他の合図に注意してみよう。
  • NTCアプリのリストラティブヨガのルーティンで、アクティブリカバリーに取り組もう。

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エキスパートが解説する、体が休養とリカバリーを求めている5つのサイン

久々にフォームローラーでケアしたいほどの筋肉痛を覚え、大腿四頭筋が震えてトイレも億劫に感じる。そこまでいったら、さすがに休息が必要だと自覚できるだろう。このような痛みの原因は、運動によるストレスが引き起こした筋繊維の細かな損傷であり、その損傷を修復しようとする体の反応だ。だが痛みを感じないときでも、心身は休息を求めてさまざまなヒントを発している。

痛みをものともせず、ひたすらトレーニングを続ける。そんなイメージに憧れる時期もあるだろう。しかし実のところ、そうした頑張りは進歩には結びつかない。休息と回復を省略すると、体が再びエネルギーを蓄えるチャンスを逸し、損傷した筋繊維が修復できなくなってしまう。これは認定トレーナーのアンドリュー・ワトキンス(スポーツ・パフォーマンス・ラボ、ストレングス・アンド・コンディショニングのディレクター)からの警告だ。この身体的なストレスは体の機能にダメージを与え、最高のパフォーマンスを妨げる。日常生活で精神面や感情面でのストレスにも対処している場合には、休息期での回復が一層困難になる。メリットよりもデメリットが上回って、体に衰弱をもたらすのだ。

計画していたワークアウトをやめ、リカバリーを優先させるタイミングを知ることは、自分自身を大切にするスマートな方法であり、幸いにも簡単に習得できる。「体は機械と同じで、ペースを落とすべきタイミングを知らせてくれます」とはワトキンスの弁。痛みが出ればわかりやすいが、ほかにもたくさんのヒントがある。休息と回復が必要なときに、体が出してくるサインに注目しよう。

1. 何もしていないのに心拍数が高い。

アメリカ心臓協会によれば、多くの人にとって、安静時の心拍数は通常1分間に60-100回。ワトキンスいわく、アスリートの数値はこれより低い場合もある。

多少の変動はよくあることだが、安静時の1分間の心拍数が通常よりも5以上高い状態が続く場合、「体は懸命に、毎日のルーチンタスクをこなしている」と、フロリダアトランティック大学の運動科学・健康支援学部の准教授であるティナ M. ペンホロウ博士は説明する。適切に休まないと、心臓はフル稼働を続けて身体の組織を修復しなければならない — つまり、心拍数の増加は、心臓が対処に苦労しているサインなのだ。

2. ワークアウトがいつもよりつらい。

通常1マイル9分で走っているのに、急に足取りが重くなって1マイル11分のペースになったり、ウェイトトレーニングの負荷が実力の60パーセント程度なのに車を持ち上げているかのように感じたりするのは、体が負けを認めて白旗をあげているということだ。

ホラー映画のように、筋肉が一晩で弱くなった訳ではない。ワトキンスいわく、原因は中枢神経系に負荷がかかりすぎていること。中枢神経系は、体の各部位からのメッセージを送受信して反応を制御する処理センターだ。「神経系が前日に経験したストレス要因からまだ回復していない状態だと、脳は通常の速さで筋肉にメッセージを送ることができません。その結果、スピードが低下して、動作に負担を感じてしまうのです」

エキスパートが解説する、体が休養とリカバリーを求めている5つのサイン

3. よく眠れない。

「トレーニングをしすぎると、心身が緊急態勢に置かれたままとなって、休めない状態が続きます」とペンホロウ博士は語る。その結果、入眠が妨害されて睡眠中も十分に休息できず、全体として寝不足になることが、学術誌「フロンティアーズ・イン・フィジオロジー」掲載の調査で明らかになっている。

学術誌「インターナショナル・ジャーナル・オブ・スポーツ・メディシン」掲載の論文によると、おそらく運動時の回復にもっとも大きく寄与する要素が睡眠だ。その点を考慮すれば、毎日休みなくワークアウトすることより、睡眠を優先したほうが結果的にアスリートとしての成長を後押ししてくれるだろう。

4. ワークアウトが億劫になる。

度が過ぎたトレーニングは、身体的な疲労だけでなく、精神的な疲労の原因にもなる。学術誌「カレントバイオロジー」に、そんな研究結果が掲載された。きついワークアウトに無理をして取り組めば、事態は悪化する。「精神的な疲労は、身体的な練習不足、スタミナ不足、パフォーマンスの低下にもつながることがわかっています」とペンホロウ博士は語る。そうなる前に休養日を設けた方が、次のセッションに全力で挑戦する英気が養えるだろう。

5. 筋肉が頻繁にけいれんする。

ペンホロウ博士いわく、けいれんは激しい身体活動で同じ筋肉を使いすぎた後によく起こる。運動をすれば必ず筋肉に微細な損傷が生じるが、体は損傷を修復して強い筋肉として再生する。休養日を十分に設けなければ、この再生のための時間がほとんどなくなってしまうのだ。

筋肉を回復させて、ワークアウトで発生した細胞の老廃物を取り除くには栄養が必要だ。でも筋肉を損傷すると、栄養の吸収も難しくなるのだとペンホロウ博士は説明する。「モーニングコール」のように、朝のけいれんで筋肉から降参を告げられるのはそのせいだ。

以上の症状を1つでも経験したら、数日間休養するか、ヨガや入浴剤を入れた風呂に入るなど、ルーティンを変えるのがワトキンスからのおすすめだ。リカバリーランも検討してみよう。

オーバートレーニングの兆候が複数あるなら、まるごと1週間を休息の期間としてもいいだろう。「1週間にわたってトレーニングの負荷を落とし、ウェイトを軽くして、走る距離やワークアウトの時間を短くしたりしましょう」とワトキンスは言う。たいていのサインや症状は、1週間のうちに弱まるはずだ(変化が見られない場合は、医師に相談のこと)。

ジムで最も偉大なアスリートは、強い精神力でトレーニングに打ち込むだけでなく、常に自分をいたわり、引き返すタイミングも把握している。自分の意思で休息できることに、強い誇りを感じているのだ。

文:アシュリー・マテオ
イラスト:モジョ・ワン

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公開日:2022年2月21日