タンパク質不足で起こる注意すべき4つの症状
食事
タンパク質不足の主な兆候とタンパク質を食事に取り入れることが重要な理由を、管理栄養士が解説する。
タンパク質は、最適な免疫機能、睡眠、筋肉の成長と回復、メタボリズム、その他のために摂取する必要のある3つの主要栄養素(タンパク質、炭水化物、脂肪)のうちの1つだ。
多くの人にとって、食事のみで1日に必要なタンパク質を摂取するのは簡単だ。 しかし、一部の人にとっては、タンパク質に富んだ食品をメニューに加えることが難しいこともある。 タンパク質不足は、タンパク質の摂取量が、身体が必要とする量を満たさない場合に発生する。 大半の先進国ではめったにないが、世界全体では10億人がタンパク質不足に悩まされている。
では、一日当たりのタンパク質の推奨摂取量はどれほどなのだろうか。
2020~2025年の米国民向け食事ガイドラインでは、1日の合計カロリー摂取量の10~35%をタンパク質から摂取するよう推奨されている。 タンパク質の量(グラム数)で言うと、平均的で健康なデスクワークの個人が1日に摂取すべき推奨栄養所要量(RDA)は、体重1kg当たり0.8gである。 この基準によると、体重約70kgの成人が1日に必要なタンパク質の量はおよそ55gとなる。 しかし、これはあくまで参考値だ。 年齢、性別、活動レベルなどの多くの要因が、毎日摂取すべきタンパク質の量に影響することを覚えておこう。 慢性疾患があったり、ケガから回復中であったりする場合は、1日に必要とされるタンパク質の量が変わる。
タンパク質は体内の多くの反応やプロセスで必要とされるからだ。 筋肉の成長と修復、正しく機能する免疫システム、十分な睡眠、体重維持などは、いずれもタンパク質を十分に摂れるかどうかにかかっている。 しかしこれらは、タンパク質を必要とする機能のほんの数例に過ぎない。心身の健康を支える他の多くの要素も十分な摂取量を必要としている。
食品(豆類、肉、ナッツなど)からタンパク質が摂取されると、それはアミノ酸と呼ばれる最小の構成ブロックに分解される。 これらのアミノ酸の大半は体内で生成されるが、食事から摂取する必要のある必須アミノ酸が9種類存在する。
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食事でのタンパク質不足が疑われる場合には、医師に検査してもらおう。
タンパク質不足の4つの兆候
1.病気になりやすく、風邪が長引く。
免疫システムが正しく機能するには、十分なタンパク質の摂取がカギだ。 運動量が多い人や、スポーツ選手の場合には、食事で十分なタンパク質を摂取することが免疫システムにとって特に重要だ。 一般的に、運動は健全な免疫反応を保つ上で重要だ。 しかし、マラソントレーニングや長距離のサイクリングなど、持久力スポーツに参加しているスポーツ選手は厳しいトレーニングをこなすため、免疫機能にネガティブな影響がでることがある。
2012年に学術誌『Nutrients』に投稿された記事によると、激しいトレーニングやエクササイズ中の免疫低下には、コルチゾール(ストレスホルモン)レベルの上昇やグルタミン(アミノ酸)レベルの下降など、多くの要因が関係する場合がある。 低タンパクの食事をしながらハードなエクササイズをすると、風邪を引いたり、その他のウィルスや慢性病にかかる危険がある。
タンパク質を摂取すると、身体は、免疫システムの重要コンポーネントを生成できる。 つまり、十分なタンパク質がないと、免疫システムは、ウィルスに対抗するこれらの要素を生成できなくなるのだ。 風邪が長引いてなかなか治らない場合は、十分なタンパク質を摂取していなかった可能性がある。 これをアミノ酸で補うことが免疫機能の支援に役立つかどうかはまだ議論の余地がある。 一般的に、スポーツ選手(と活動的な人々)は、毎回の食事で20gのタンパク質を摂取し、タンパク質に富んだスナックを食べるとよい。もちろん、ビタミンやミネラルに富んだフルーツや野菜を摂ることもおすすめする。
2.ワークアウト後にお腹が減っている状態だと、筋肉量を増加させることは難しい。
自信と心地よさを感じられる体つきを維持することが重要だ。 もちろん、食事とエクササイズは重要な役割を果たす。 しかしながら、身体組成が崩れているように感じられる場合には、タンパク質が十分に摂取できていないことが原因である可能性もある。 2018年に『Frontiers in Endocrinology』に投稿されたレビューによると、タンパク質は満腹感を推進し、エネルギーの消費量(身体機能を維持するために身体が使用するエネルギー量)を増やす効果がある。 ジムやトレーニングプログラムでしっかり効果を上げるには、代謝と飢餓ホルモンを一番良い状態に保つことが重要だ。ワークアウト後に空腹感が収まらない場合は、ワークアウト後の食事やスナックに、飢餓ホルモン(特にグレリン)を抑制し満腹感を起こすタンパク質(レプチン)が十分に含まれていないことが原因かもしれない。
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十分なタンパク質を摂取することは、満腹感の促進とエネルギー消費量の増加だけでなく、除脂肪筋肉量の維持と構築にも役立つ。 炭水化物が多く、タンパク質が少ない食事方法でも1日当たりのカロリー要件を満たすことはできるが、おそらく希望の結果は得られないだろう。 なぜなら、タンパク質の量が十分でないと、筋肉よりも脂肪がついてしまうからだ。
3.ケガの回復が遅い場合について解説しよう。
スポーツ選手でも、ジムの利用者でも、ケガを喜ぶ人はいない。 ケガから回復するのが特に難しいと感じられる場合には、タンパク質不足が原因かもしれない。
2019年に『International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism』に投稿されたレビューによると、ケガからの回復時にRDAより多いタンパク質を摂取すると回復のプロセスに役立つ。 身体がすでにタンパク質不足の場合には、タンパク質の必要性を満たすだけでなく、推奨されているベースラインよりも多く摂取するように十分に計画し、考慮する必要がある。
学術誌『Nutrition』の2018年のレビューでは、除脂肪筋肉量を維持するため、ケガからの回復中のタンパク質の必要量を、体重1kg当たり1日1.6~2.5gに上げることを推奨している。それを複数の食事に分けて摂取し、各食事で20~35gのタンパク質を摂取する。 しかし、この数値に執着しないほうがよい。 すでに摂取しているタンパク質を2倍(一部のケースでは3倍)にすれば、この必要量を得ることができる。
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4.日常的に疲労感を感じる。
疲労はモチベーションを下げ、ワークアウトに全力で挑めなくなる原因になり得る。 多くの場合、睡眠が不十分、ワークアウト間の回復期間が不十分、ストレスや不安の上昇など、食事以外の理由で疲労感が募るが、 まれに、食事でのタンパク質不足が原因のこともある。 スポーツ選手における、疲労感とタンパク質不足の関係は十分に研究されていないが、一般的に、疲労感と栄養不足の間には相関関係があると考えられている。
2020年に『Nutrients』で発表された研究では、タンパク質不足と疲労感の間の関係が単純化されている。「栄養不足だと疲れやすくなり、疲労が高まると、よく栄養をとれなくなる」、という図式だ。 さらに、食事で十分なタンパク質が得られないと、身体のニーズを満たすために筋肉が分解され、このこと自体が疲労を引き起こすことがある。
つまるところ、タンパク質不足は医師が診断できるものだ。 まれに、ほんの少しタンパク質の摂取量が減っただけでも、免疫、身体組成、ケガの回復、疲労にネガティブな影響がでることがある。特に、スポーツ選手に見られる現象だ。 ヴィーガンやベジタリアンにとっては、タンパク質の必要量を満たすのは難しいかもしれないが、登録栄養士の協力を得ると実践しやすくなる。 料理が好きではない人や、食欲があまりない人にも登録栄養士は強い味方だ。 タンパク質を摂るには多くの選択肢がある(シーフード、豆腐、シード、卵、鶏肉、乳製品、野菜)ため、プロにとって、美味しくて調理しやすい食品を探すことは難しくない。
文:シドニー・グリーン(理学修士、 登録栄養士)