体調が悪いときもワークアウトをすべきか?

健康とウェルネス

体調がすぐれないときの運動にはリスクが潜んでいることもある。ここでは、知っておくべき知識をエキスパートがご紹介。

最終更新日:2022年4月27日
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体調が悪いときもワークアウトすべき?

体調が悪いときに回復を促進する方法として実証済みのものはいくつかある。一般的に挙げられるのは、たっぷり休息することや、水分を多めに取ることだ。 では、運動は効果的なのだろうかというと、 必ずしもそうではない。 ワークアウトによっては、不調を長引かせることもある。

とはいえ状況によっては、調子が万全でなくてもワークアウトができる場合もある。 それでも、慎重に行うのが望ましだろう。 ここでは、体調が悪いときに運動しても問題がないかどうか(そしてどんな場合に運動できるか)、また回復後、どのように運動を再開すればよいかについて、エキスパートが説明する。 さらに、運動が免疫システムに与える影響についても解説する。

体調が悪いときに運動しても大丈夫?

「体調が悪いときや回復期に運動してもよいかどうかは、病気の種類や症状の重さによります」と説明するのは、アンジャリ・バラティ氏。オステオパシー医の免許を有する、ニューヨーク市のLenox Health Greenwich Village所属の救急専門医だ。

一般的に、症状のある部位が首から上であれば運動しても問題はないし、プラスの効果も期待できる。 「軽い咳や鼻水といった上気道の症状なら、散歩や軽いジョギングをすると、気分が良くなることもあります。 副鼻腔がすっきりし、鼻詰まりが改善する可能性もあります」とバラティ氏は話す。

しかし、新型コロナウイルス感染症と診断されたときや、発熱、体の痛み、息切れ、衰弱、めまいなどの症状がある場合は、ワークアウトを休んで回復の時間を確保するべきだ。

重症にもかかわらず運動すると、特に心配なのは心臓へのリスクが増すことだ、と指摘するのはデニス・カードン氏。オステオパシー医の免許を有し、ニューヨーク大学ランゴーンヘルスのプライマリケアスポーツ医学部を統括するスポーツ医学専門家だ。 専門家の見解では、体調が悪いときに運動すると、(新型コロナウイルス感染症では特に)心臓の筋肉にウイルスが感染する心筋炎に発展するリスクが高まるという。

メイヨークリニックによると、心筋炎になると、心臓が血液を送り出す力が弱まり、 頻脈や不整脈、胸の痛み、息切れ、倦怠感が生じる。 心筋炎が重度になれば、若いアスリートでも突然の心停止に至るおそれがあると、Blanchard Valley Health System(地域医療システムを運営するオハイオ州フィンドレーの非営利団体)は注意を促している。 体調が悪いとき、体にはすでに負担がかかっていることを考慮しよう。 ストレス要因に運動が加わると、体調が悪化する可能性が高い。

運動時、体は心臓、肺、筋肉を働かせるために、エネルギー、水分、電解質を使う。 しかし病気のときは、ウイルスや菌と闘うために、エネルギー、水分、電解質をすでに大量に消費しているはずだ。 体のエネルギー源が不足している状態で運動すると、疲労や脱水症状を起こすだけだとバラティ氏は話す。 そしてこれが回復の遅れにつながる。

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運動を再開するタイミング

100%の回復を待つ必要はないが、少なくとも90%は回復してからワークアウトを始めよう。 つまり、エネルギーレベルがほぼ正常に戻り、頭がすっきりし、水分や栄養の状態が回復すれば、 またエクササイズに励んでも問題はないということだ。「全身でゴーサインが出ていれば大丈夫です」とカードンは話す。

めまい、痛み、倦怠感、息切れをまだ感じる場合は、回復するまで待ってからワークアウトルーティンを再開するようにしよう。

回復の途中で安全にエクササイズをする方法

回復の途中でエクササイズをする場合に最優先すべきことは、ジムには行かず、他人との接触を避けることだ。 新型コロナウイルス感染症と診断されたら、運動を再開する前に少なくとも5日間は休養し、自己隔離をする必要がある。 米国疾病管理予防センター(CDC)は、症状が現れた日または検査で陽性になった日の翌日を1日目とするよう定めている。

ワークアウトの負荷は、症状や運動歴によって異なるが、 どんな場合でも、再開初日に全力で取り組もうとしてはいけない。 「何もしなければ、体力は数日で低下します。以前と同じレベルに戻すには時間がかかります」とカードン氏は話す。

エクササイズを再開する場合は、最大でも通常の負荷の半分を目指すようにしよう。「ワークアウトを中断した期間の長さにもよりますが、原則として50%が妥当です」と、カードン氏はアドバイスする。

たとえば、病気から回復後にランニングを再開する場合は、1週間あたりの走行距離を半分に減らし、ペースを落として走るとよい。 最初の1〜2週間は、サイクリング、ローイング、エリプティカルなど、ローインパクトで強度の低いカーディオトレーニングを加え、少しずつ負荷を高めていくことを検討してほしいとカードン氏は話す。 ただし、ジムに行かないとそのようなエクササイズができないというのであれば、他人を感染リスクにさらすのを避けるために控えるべきだろう。

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取り組むワークアウトにウェイトリフティングが含まれている場合は、少なくとも普段より50%は負荷を落とすようにしよう。 「まだ、デッドリフトでどのくらい持ち上げられるかを試すのに良いタイミングではありません」とバラティ氏は言う。 ワークアウトの長さや頻度も減らしたほうがいいだろう。

バラティ氏とカードン氏は、病後にワークアウトを再開する場合、まず次のエクササイズを試してみることを推奨している。

  • ウォーキングまたは軽いジョギング
  • ゆっくりしたペースで動くスローヨガ
  • 負荷が軽めの筋力トレーニング
  • スローペースのサイクリング

一方、回復期には次のエクササイズを控えるよう警告している。

いずれの運動にしても、無理なく会話ができる程度の負荷で行うことがポイントだ。

ワークアウト中は体調を意識しよう。 調子が良ければ、負荷を10〜20%ずつ高めて、どんな調子か確かめる。 以前のレベルに戻るまで、10〜20%ずつ負荷を高めていけばよい。

めまい、吐き気、倦怠感、痛みなどを感じるようであれば、ワークアウトを中断するか、負荷を軽くすること。

水分補給を忘れずに

回復期には水分補給を心がけよう。運動しようとする時はなおさらだ。 「体調を崩すと水分補給が不足しがちですが、水分の摂取を増やす必要があります」と、カードン氏は注意を促す。

水分補給レベルを判定する手軽な方法は、尿の色を確認することだ。 「ごく薄い黄色か透明なのが正常。 琥珀色や濃い黄色は、もっと水分を取る必要があるというサインです」とカードン氏は説明する。

エクササイズは免疫システムに有効か?

中程度の負荷のエクササイズを習慣的に行うと、免疫システムに長期的な効果をもたらすことがある。 2016年に『Medicine and Science in Sports and Exercise』で発表された研究では、低強度の運動でも、運動しない場合に比べて、細菌に感染するリスクを10%低下させる効果があることが明らかになった。

免疫システムを、心臓や肺と同じように考えてみよう。 運動をすると、心臓や肺に負荷がかかり、時とともに強化されて機能が向上する。 免疫システムも同じだ。

一方、免疫システムに対する運動の短期的な効果については議論の余地がある。

多くの専門家の意見では、負荷の高いエクササイズでは特に、運動後数時間のあいだ免疫システムの力が弱まるという。 2018年に『Frontiers in Immunology』に掲載されたレビュー論文の考え方によれば、負荷の高いエクササイズを行うと、血液を巡る抗体や免疫細胞の数が一時的に減少する。 それで感染リスクが高まるというのだ。

一方、運動の直後に、免疫システムが潜在的な脅威に対して敏感に反応しやすくなると唱える専門家もいる。 抗体や免疫細胞が血液から放たれることで、損傷を受けたり、病原体に感染したりした他の部位の細胞の方へ流れていくという説が、2016年のレビュー論文で述べられている。

結論

結局のところ、運動が免疫システムに与える長期的な効果は、潜在的なマイナス面に勝る。 しかしもちろん、熱や鼻風邪と闘っている最中となると、話は別だ。 体調が悪いときや、倦怠感や体の痛みなどの症状が残っている場合は、エクササイズをやめて、体と免疫システムを休ませよう。

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執筆:ローレン・ベドスキー

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公開日:2022年3月16日