1日1マイル走ることで得られる健康上のメリット

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さらに、初心者がランニングを始める方法もご紹介。

最終更新日:2025年1月21日
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1日1マイル走ることで得られる健康上のメリット

1マイル(1.6K)を走ることは、ランニング初心者にとっても、ブランク明けにルーティンを再開したい人にとっても、目指しやすい目標の1つだ。 自分を変えるチャレンジの一環として、1日1マイルを30日間走ろうと試みている人をソーシャルメディアで見かけることもある。 1日1マイル走ることは、ランニングを始めるきっかけになりやすいだけでなく、たとえ5Kのレースに出なくても、心身の健康に多くのメリットをもたらす。

ここでは、そうした健康上のメリットをいくつか分析しながら、初心者ランナーが安全に1マイルを走れるようになる方法を紹介しよう。 さらに、1日1マイルのランニングは本当に「十分」な運動と見なされるのか、それとも実際には「やりすぎ」なのかについても、エキスパートによる考察を紹介しながら明らかにしていく。

1日1マイル走ることで得られる健康上のメリット

そもそも1マイル走は「十分」? — それとも多すぎる?

米国保健福祉省が作成した最新のガイドラインによると、成人に必要な負荷は中程度の運動を週150分以上、またはジョギングやランニングなどの激しい有酸素運動を毎週75分以上行う必要がある。 また、このガイドラインでは、筋力強化のためのアクティビティを週2日間行うことも推奨されている。

一般的に、競技者ではない比較的体力のあるランナーは、1マイルを約9~10分で走る。一方、初心者ランナーの場合は、12~15分ほどかかることが多い。 つまり、たとえ毎日ランニングしていたとしても、1マイルのランニングを10分なら、実際には推奨されている週75分には少し足りない可能性がある。

しかし、イリノイ大学シカゴ校の理学療法学科長で、心肺理学療法と運動科学を研究しているロス・アリーナ博士によると、健康を改善するために週75分のランニングを必ずしも行う必要はないことが研究で示されている。 週に150分といった特定の運動時間を設定すると、落胆したり、達成不可能に感じたりすることもあるだろう。しかし、大事なメッセージは、何もしないよりはましだ、に尽きているのだとアリーナ博士は言う。

さらに言えば、理学療法士やランニングコーチは、たとえ1マイルであっても、通常、毎日走ることはすすめていない。 Nikeランニングコーチでランニングアプリ「Femmi」の創設者、リディア・オドネルは、週に3~4日だけ走る方がより健康に良いアプローチだと提言する。 このスケジュールなら、他の日は休養、リカバリー、その他の形の運動(Nike Training Clubアプリを使ったウェイトリフティングや自重エクササイズなど)に集中できる、と彼女は説明する。

しかし大局的に見れば、毎日1マイル走ることが体をより多く動かし、座る時間を減らす助けになっているのであれば、それは大きな健康改善につながる可能性がある、とアリーナ博士。 以下では、慢性疾患のリスクを引き下げることや、寿命の延長など、研究に裏付けられたいくつかのメリットを紹介しよう。

  1. 1.心臓の健康状態を改善

    ランニングが優れた有酸素運動であることは誰でも耳にしたことがあるだろう。しかし、なぜそれほど重要なのだろうか? 心肺機能が低くなると、心血管疾患(CVD)の発症リスクが高くなる可能性のあることが知られている。心血管疾患は心臓や血管に生じる病気であり、米国の成人のおよそ半数に影響を及ぼしている。

    ランニングは心臓と肺の両方を使う運動であるため、心肺の健康に関する数値を改善する効果がある。 走ることで、心臓は強く血液を送り出すよう促され、心筋が強化されると同時に、肺活量が増加する。 これが時間の経過とともに安静時の心拍数と血圧の低下につながり、どちらも心血管の健康状態の改善を示す重要な兆候となる。

    Journal of the American College of Cardiology』に掲載された研究では、5万人超のランナー(平均年齢44歳)を対象に、ランニングの長期的な効果に関する調査が行われた。その結果、ランナーはランナーでない人と比べて心肺機能が約30%高いことがわかった。 1日10分(1マイルまたは1.6K走るのにかかる時間)でもいいから走ることで、心血管疾患のリスクが大幅に低下し、心臓病で死亡する確率を半減させることができると、研究者は結論付けている。

  2. 2.骨を鍛えてけがを予防

    私たちはつい、強い筋肉をつけることにばかり目を向けがちだが、筋肉と連動してあらゆる動きをサポートするのは骨であるため、骨の健康も同様に重要だ。 丈夫な骨を作り、骨の減少を遅らせるには、骨に負荷をかける運動が肝心だということが以前から知られている。つまり、重力に逆らって骨や筋肉を使う運動のことだ。 ランニングのように骨に力を加える高負荷のエクササイズは、骨の健康を促進するうえで特に効果的とされる。

    しかしランニングは骨の健康に有益である反面、オーバートレーニングすると逆効果をもたらしかねない。 アリーナ博士は、「ランニングの量を増やし、強度を上げるにつれて、整形外科的および筋骨格系の損傷のリスクは高まります」と警告する。

    持久力の強いランナーは骨塩密度が低く、疲労骨折のような骨ストレス損傷を起こすリスクが高いことを示す調査結果もある。 1日1マイル走ることで、ランニングによる骨の健康効果を享受できるうえ、長距離を走ることに伴うリスクを最小限に抑えることができる。

  3. 3.ストレスを和らげ、メンタルヘルスを高める

    心をすっきりさせる手段、あるいはセラピーの1つとしてランニングを捉えている人は多い。また、ランニングには自尊心を高め、不安を軽減する効果があることも研究で明らかになっている。 『International Journal of Environmental Research and Public Health』で発表された2020年のレビューには、ランニングとメンタルヘルスの関係を検証した調査結果が掲載されており、たった一度のランニングでも、悲しみや不安、気分の落ち込みを軽減する効果があることが示された。

    「ランナーズハイ」として知られるリラックスした幸福感を味わうためには、より長い距離を走る必要があるが、長期的に見れば、1マイル走の方がメンタルヘルス上は良いかもしれない。 このレビューでは、楽しみのために走るランニングはメンタルヘルスに好影響をもたらすものの、「極端な強度のランニング」(長距離ランやマラソンランを含む)は逆効果をもたらす可能性があるという調査結果についても触れられている。

    その理由には、病気やけがで走れないと(長距離ランナーに多くみられる)、抑うつや自己肯定感の低下といった心理的苦痛のリスクが高まるというものがある。

    しかし、1マイルのランニングにこだわり続けていれば、けがのリスクを下げると同時に、気分を高めるランニングの効果も得られるというわけだ。

  4. 4.体重を減らすことが目的の場合

    ランニングには体重計の数値とは関係のない健康上のメリットがたくさんあるが、エクササイズをしながらカロリー不足の状態になれば、体重も減るはずだとアリーナ博士は言う。

    とはいえ覚えておいてほしいのは、ソーシャルメディアで見かける「1日1マイルで減量」は、決して特効薬ではないということ。 『Harvard Health』によれば、体重70kgの人が30分間ランニングすると、360カロリーを消費することになる(1マイルを10分のペースで走った場合)。 これは、1マイルあたり約120カロリーに相当する。 ただし、Mayo Clinicによると、1週間に約1ポンド(約450g)減量するには、1日約500カロリーを消費する必要があるという。

    体重の減少は食生活と摂取カロリー次第なので、1マイルだけのランニング(あるいは2~3マイルの挑戦)だけでは十分ではない。 しかし、1日1マイルのランニングは、減量を目指す際、他の生活習慣を改善するための良いきっかけにはなるだろう。

  5. 5.寿命延伸が期待できる

    Journal of the American College of Cardiology』に掲載された研究では、「たとえ1日5~10分でも、スロースピードでのランニングをすること」が「あらゆる原因による死亡リスクの著しい低下」につながることが明らかにされている。

    この研究論文は、週に1、2回しか走らず、走る距離が6マイル未満の人であっても、まったく走らない人と比べたら死亡リスクが低いと結論付けている。 実際のところ、ランナーは、ランナーでない人と比較して、平均で3年も長生きすることがわかっている(喫煙などの他の死亡リスク要因を調整後の結果)。

    週に1時間未満しか走らない人でも、週に3時間以上走る人と同じ死亡率低下の効果を得られることがわかったのだ。 これは、毎日1マイルや毎週75分走るわけではなくても、ランニング習慣を始めることが非常に効果的な「薬」になるという、かなり説得力のある証拠といえる。

1日1マイル走ることで得られる健康上のメリット

ランニングをはじめるには

1日1マイルのランニングは、ただ走ることだけを意味するのではない。 今のうちにこの健康的な習慣を身につけておけば、将来起こりうるけがを防ぎ、スポーツを楽しみ続けられるようになる。それは特に、体力が増し、スピードが速くなり、走行距離が増えていく過程で、特に効果があるとオドネルは言う。

  1. 1.走る前にウォーキングを

    「1マイルは、ランニングを初めてスタートするときに目標を定めるには絶好の距離です」とオドネルは言う。 しかし、最初はウォーキングを取り入れ、1マイルを完走するまでに段階をつけていくことを彼女は提案している。 たとえば、3分間走った後に1~2分歩き、さらに3分間走るといった具合に。

  2. 2.適切なギアを選ぶ

    「気分が上がってランニングが楽しみになるようなウェアを選ぶことは、とても大切です」とオドネルは言う。 モチベーションが上がるだけでなく、外に出てからもランニングに集中しやすくなる。

    「自分にぴったりのシューズを見つけることは本当に重要です」と同氏。また、ナイキ ペガサスを、多くの人にとって使いやすく、バランスの取れたランニングシューズだとして推奨している。 また、速乾性に優れたランニングギアや、サポート性に優れたハイインパクトのスポーツブラなどのランニングウェアも、ランニングを快適に続けるためのカギとなる。

  3. 3.異なるスピードを組み合わせる

    毎日同じ距離を走るとしても、常に全力で速く走ることを目標にすべきではないと、オドネル。 そのような走り方をしていると、けがや燃え尽き症候群の原因になりかねない。 新しいランニング習慣をより持続可能なものにするためには、バラエティに富んだランニングを取り入れることが大切なのだ。 たとえばスピードトレーニング、スローランニング、一定ペースでの運動を取り入れてみよう。そうすれば同じエネルギーシステムを何度も繰り返さずに済むのだと、オドネルは説明する。

  4. 4.メンタルの力を鍛える

    バラエティに豊かにすることは、体だけでなく心にも良い。 「1マイルのランニングにバリエーションを取り入れるのは、モチベーションを維持し、走っている間に気を紛らわせる良い方法です」とオドネルは言う。 ランニングは、初心者にとってはハードなことが多いため、体力だけでなくメンタルの強さを鍛えることも大切だと彼女は説明する。

  5. 5.栄養摂取も忘れずに

    「栄養は、体の回復を助けるうえで非常に重要な役割を果たします」とオドネルは言う。 ランニング後は体にエネルギーを補給するために高タンパクの食事摂取を目指し、特にランニングを始めたばかりの人は水分補給の重要性を忘れないように、と同氏はアドバイスする。

  6. 6.リカバリーを優先する

    「1マイルとは、初心者にとってはかなりきつく、激しい運動に感じられる距離です」とオドネル。 そこで彼女は、ランニング前のウォームアップに加えて、ランニング後にゆっくりとした深いストレッチを行うことをすすめている。 1日1マイルのランニングを習慣化すればするほど、辛さが軽減され、長くランニングを続けられる可能性が高まる。

文:カイリー・マリー・ギルバート

公開日:2025年1月3日

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