ランニングコーチが明かす、ビーチでランニングをする方法
スポーツ&アクティビティ
太陽、砂、打ち寄せる波。 思わずやってみたくなる。 ビーチでのランニングについて、大切なポイントを紹介する。
ランニングコース
ビーチで走るには
あなたは休暇でビーチにいる。 あるいは、幸運にもビーチの近くに住んでいるかもしれない(なんて羨ましい!)。 どこまでも続く砂浜が、あなたを手招きしている。 そこでシューズを履いて波打ち際まで行くと、突然気がつくのだ。砂の上を走るのはすごく大変だ、ということに。
「たいていの人は、ビーチで走るのは素晴らしいアイデアだと思っています。実際にやってみるまではね」と言うのは、Nike Runningグローバルヘッドコーチのクリス・ベネット。 「素晴らしい効果を得るためにも、始める前にいくつかポイントを確認しておきましょう」ランを楽しみ、ビーチで過ごす時間を有意義にするためのヒントは以下の通り。
- 柔らかい砂の上では長く走らない
- 坂になっている場合は進行方向を切り替える
- 考えを巡らせる
- 長距離のランは遊歩道で
- 自分を保護する
- シューズを履く
- 出かける前に潮の干満をチェックする
「砂のように普段と違うサーフェスで走るときは、少しずつ慣れていきたいはず。 自分の感触を確かめてから、ペースを上げるかスローダウンするか決めてください」
クリス・ベネット
Nike Runningグローバルヘッドコーチ
ビーチで走るために
自分を保護する
帽子、サングラス、日焼け止めを用意しよう。 「強い日差しの下で走ると、あっという間に体力を消耗します」とコーチは言う。 また、トイレがある場所や、新鮮な水を入手できる場所、ライフガードが常駐している場所を地図にマークしておくのもおすすめだ。 「何よりも、安全なランニングを心がけましょう」
シューズを履く
いつも裸足で走っているのなら、問題ない。 しかし、そうでない場合はシューズを履こう、とコーチはすすめている。 「裸足でのランニングに慣れていないと、ちょっと走っただけで不快感を覚えるようになります」
出かける前に潮の干満をチェックする
ささいなことに思えるかもしれないが、潮の干満がランニングの状態を左右する場合がある。 「満潮のときは、固まった砂の上を走ることができません」
ビーチでのランニングは、自分に向いている?
屋外の海辺にいるだけでモチベーションが高まる気がするが、メリットはそれだけではない。 砂の上でのランニングには多くの利点があり、負荷の高いワークアウトに挑戦できるのもその一つだ。
砂の上でのランニングの主なメリットと、初心者が怪我をするリスクを減らすための方法について、ランニングコーチの意見を紹介しよう。
「フォアフット走法のメリット」のチェックもお忘れなく。
ビーチでのランニングで得られる4つのメリット
1.砂の上ではランニングの負荷がアップ
認定パーソナルトレーナーであり認定ランニングコーチでもあるメーガン・ケニハンによると、ビーチでのランニングではサーフェスが柔らかいためエネルギー消費量が増える。 カロリーが消費されるだけでなく、未経験かつハードな筋肉の使い方をしながらも、関節を保護することができる。砂の上でのランニングは、体への衝撃が少ないからだ。
ケニハンは、次のように述べている。「砂の上では、ヒップや膝を安定させるために、道路やトラックでのランニングより筋肉を2倍も使わなければなりません。 そのため、脚の筋肉を鍛えるのに最適です。 ジムの代わりにきれいな景色の中でレジスタンストレーニングをするようなものです」
「ランニングは本当に膝に悪いのか?」の記事もチェックしよう。
2.トレーニング場所のサーフェスに変化をつける
C.S.C.S(認定ストレングス・コンディショニングスペシャリスト)の資格を持つ認定ランニングコーチであり理学療法士でもあるアリーナ・ケネディによると、同じルートで、同じ強度、同じ時間のランニングをすると、新鮮味がなくなるだけでなく、怪我をしやすくなる。
「ランナーは、同じルートを繰り返し走ると、怪我をする傾向があります」と彼女は言う。 ルートを変えても、サーフェス(地面のタイプ)が同じであれば、結果は変わらない。 「砂地は道路とは大きく異なるため、トレーニングのバリエーションを増やすためにうってつけです」
3.パフォーマンスが向上
ケニハンは、脚の筋力と安定性が強化され、ビーチ以外でのパフォーマンスも高まる、と指摘する。 たとえば、週に1〜2回ビーチでランニングを行うと、脚の筋力が鍛えられ、ストライド時に体を押し出す力が強くなるため、道路やレースでもっと速く走れるようになる。
これは、ランナーだけに必要なパフォーマンスではない。 『BMC Sports Science』に掲載された2020年の研究では、ハンドボールプレーヤーが2種類のサーフェス(砂地とジムフロア)でプライオメトリックトレーニング(ジャンプを含むエクササイズ)を7週間行い、その効果を測定した。 どちらのサーフェスでもジャンプの高さや静止バランスなどが向上したが、砂の上でのトレーニングではより多くのメリットが得られ、中でもスプリント能力の向上が顕著だった。
4.何と言っても、場所はビーチ
いつも屋外をランニングし、新鮮な空気と自然に囲まれた時間をたっぷり味わっているランナーでも、ビーチでは景色の変化によって元気が出る。 また、ランニングが終わったらすぐに泳ぐこともできる、とケネディは言う。 近所のトラックやハイキングトレイルでは、このようなメリットは得られない。
ビーチや湖などの「水のそば」では心の健康が大幅に増進することが、研究で示されている。たとえば、『Environmental Research』に掲載された2020年の研究では、1日20分のビーチでのウォーキングを数週間続けるだけで、血圧の低下や気分の高揚といった効果が得られ、都会で同じ時間ウォーキングを行うより有効であることが分かった。
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ビーチでのランニングに役立つヒント
このようなメリットがあると聞くと、ビーチでのランニングを試してみたくなるが、覚えておくべき重要なポイントがある。
ケニハンによると、最も気を付けなければならないのは、砂は関節に優しいが安定性が低いため、足首の捻挫、足首や足の腱障害といった怪我のリスクが高まることだ。 安全にビーチをランニングするために、ケニハンは次のようにアドバイスしている。
- まずは、ゆっくりしたペースで始めて、ビーチランニングの感覚と体への影響に慣れる。
- アンクルサークル、カーフレイズ、レッグスイングなど、足首や足のエクササイズを行い、動的なウォームアップをする。
- 時間ではなく労力を基準とし、ランニング中の感覚に注意する。
- アキレス腱の怪我や足底筋膜炎を抱えている場合は、まずはランニングやウォーキングをしてみて、張りや痛みが悪化する場合は、途中でやめる。
- 汗をかいても落ちないスポーツ用の日焼け止めを塗り、紫外線から体を保護するウェアやしっかりフィットする帽子を着用する。
- 海辺でのランニングは必ず干潮時に行い、ビーチの傾斜に注意して、ランニング中の左右の脚の高さが偏らないようにする。
さらに考慮すべきことがある。それは、裸足で走ってもよいのかどうかだ。 ケニハンは、ビーチランニングの初心者はシューズを履いて走るよう勧めている。
「シューズを履けば、常に変化する砂に対応するために必要な足首のサポート性と安定性を得られます。 始めたばかりの人は、素足でビーチを長時間走ってはいけません。20分のランニングを週3回行えるようになったら、少しずつ素足でのランニングを取り入れて、距離や時間をのばしていきましょう」
執筆:エリザベス・ミラード