毎日走るのは良いことか? そのメリットは?
スポーツ&アクティビティ
「毎日走るべきだろうか?」その答えはおそらく「ノー」だ。 ただし、それは強度による。 ここでは、パフォーマンスを向上させるためにランニング量を調整する方法を紹介しよう。
あなたはもしかして、あのランナーズハイを渇望していて、少しでも多く走りたくて仕方ないと思ってはいないだろうか。 あるいは、早く目標を達成したくて、毎日ジョギングすればそうできると思ってはいないだろうか。
ランニングには非常に多くのメリットがあるので、たくさん走れば走るほどいいと思い込んでいる人は多い。 特にハーフマラソンなどのレースに備えてトレーニングしている人や、減量など具体的な目標に取り組んでいる人は、そういう誘惑に駆られがちだ。
しかし、毎日走ることは良いことなのだろうか? 答えはシンプルに「ノー」だ。週に少なくとも1日は休んで、筋肉を回復させる必要がある。 加えて、トレーニングし過ぎると、オーバーユースによる損傷、ストレス、慢性疲労につながる可能性がある。
ランニングルーティンを適切に組み立てる方法を知っていて、毎日快適に走っている上級ランナーに関しては、答えがもっと複雑になる。 疲れて燃え尽きてしまうことのないように、このガイドをランニングと回復のバランスをとるための参考にしてほしい。
週に走ってもいい日数は?
『Physical Activity Guidelines for Americans(アメリカ人のための身体活動ガイドライン)』によると、大人向けの目安として、強度が中程度のエクササイズを週に150〜300分間するか、または激しいエクササイズを75〜150分間するのが適切だ。 1週間のランニングスケジュールの具体的なアイデアをいくつか紹介しよう。
- 月曜日と水曜日:合計約30分間、5Kラン
- 火曜日と木曜日:15分間の高負荷トレーニングHIIT(スプリント)のセッション
- 土曜日:合計約1時間、10Kのラン
- 金曜日と日曜日:休み
毎日走ってもいいか?
毎日走るのは、特に初心者やケガから回復したての人にはベストとはいえない。 その理由は? オーバートレーニングになるからだ。
休息と回復は、ワークアウトプランに欠かすことのできない要素である。 トレーニングの刺激によって筋肉に細かい傷がつくと、修復プロセスが開始される。 血液が筋肉に送られて、乳酸が除去され、酸素と栄養が供給される。
しかし、この修復プロセスは即座に起こる訳ではない。 American Council on Exercise(米国運動協議会)によると、ワークアウト後の回復は、行った活動の強度に応じて2日間から最大1週間かかる。 その長さは以下の要因によって決まる。
- エクササイズの長さ
- エクササイズ中の自覚的運動強度(RPE)
- 心拍数のゾーン(無酸素か有酸素か)
- エクササイズのタイプ
そのため、毎日走っていいかどうかについては、「内容による」というのが答えになる。 メリットとデメリットを比較して、自分には何が最適なのかを考えよう。
毎日走るメリットとは?
学術誌『Progress in Cardiovascular Diseases(心血管疾患における過程)』に掲載された2017年7月〜8月の調査によると、中程度のペースで毎日5〜10分間走ると、心臓血管の健康度が向上し、血圧が低下し、全死因死亡率が低下するという。
ほんの10分間であれば、心拍数が中程度のゾーンに入る一方で、過度なストレスや筋損傷を引き起こすことはない。 つまり、回復にそれほど時間を要しない。
しかし、ランニングの強度を上げると、オーバートレーニングにならないように十分な回復を考慮する必要が出てくる。
プロのエリートランナーは、過密なトレーニングスケジュールを立てることが多く、それには毎日のランニングが含まれることもある。 ただし注意点は、すべて最大の強度にしない、ということだ。 エリートランナーの1週間のワークアウトには、インターバルトレーニングと長距離のランニングだけでなく、身体を動かしながら回復を図るために軽いランニングや短距離のランニングも含まれている。
ただし、初心者は毎日のランニングに挑戦するべきではない。メリットよりも害の方が多くなる可能性があるためだ。 前述の2017年の調査によると、ランニングの健康上のメリットは、週4〜5時間でピークに達する。 それ以降は、使いすぎによる損傷とオーバートレーニングのリスクが高まる。
毎日走るリスクとは?
1.ケガのリスクが増える
ランニングとジョギングは、ハイインパクトなアクティビティだ。 かかとをつくと、そのたびに、体重の3〜4倍の力がかかる。 学術誌『Sports Health(スポーツと健康)』に掲載された2020年1月の調査によると、毎日ジョギングしていると、負担が積み重なり、ケガのリスクが高まるという。
2.パフォーマンスが低下する
適切な回復時間を組み込めば、心臓血管を健康に導くことができる。 その度に身体は修復を図り、さらに強くなり、調子がよくなる。
しかし、トレーニングの頻度が多すぎると、こうした順応を起こせず、パフォーマンスも影響を受けやすくなる。 学術誌『The Anatomical Record(解剖学的記録)』に掲載された2011年6月の調査によると、その結果、筋肉が衰えることもあるという。
3.メンタルヘルスが悪化する
定期的に運動すると、ストレスが減り、睡眠の質が向上し、気分が良くなり、メンタルヘルスが向上するという研究結果がある(学術誌『Journal of Endocrinological Investigation(内分泌学調査ジャーナル)』に掲載された2008年7月の調査より)。
しかし、頻繁にエクササイズし過ぎると、メンタルヘルスに弊害が出る可能性がある。 ランニングに対する身体の反応の一部として、コチゾール(ストレスホルモン)のレベルが急上昇するからだ。 十分に回復を図ることで、この値は低下する。 回復を図らないと、こうした値が高止まりし、慢性的なストレスやホルモンバランスの悪化につながる可能性がある。
走りすぎは、生化学レベルの影響を及ぼすだけではない。 身体が休みを欲しがっても走り続けなくてはと思い込むことで、メンタルヘルスに重い負担がかかる可能性がある。 つまり心身ともに十分に回復させるためには、時間をかける必要があるのだ。
最適なランニングスケジュールとは?
1週間に3日または4日、中程度の強度で走るのが、プロでない大半のアスリートに適した目標だ。 レースに備えてトレーニングする場合や、減量を試みている場合、あるいは心臓血管の全般的な健康のために走る場合は、ウェイトリフティング、自重ワークアウト、ヨガと共にクロストレーニングを組み込むといい。 こうすることで、次のような成果が見込める。
- マインドの活性化
- モチベーションの向上
- 筋肉のバランスの悪さやバイオメカニクス的な不均衡の是正
- バランスや連動性など、その他の体調の向上
- 骨密度と筋肉量の向上
- ケガのリスク軽減