筋トレの前と後、ランを行うならどっち?
アクティビティ
ワークアウトの順番が運動パフォーマンスの鍵を握る理由を学ぼう。
ランニングとウェイトトレーニング。どちらを先に行うかなど気にする必要はないように思えるかもしれないが、実は、フィットネスの目標を達成する重要な鍵になるとエキスパートは語る。
「ワークアウトの順序は、パフォーマンスとトレーニングの効果に直接影響します」と語るのは、C.S.C.S.の資格を持ち、 TeachMe.To.のRRCA認定ランニングインストラクターでもあるジェイ・シルバだ。 「一方のアクティビティをもう一方のアクティビティよりも優先することで、最優先すべき目標に最適なトレーニングに全力を注ぐことができます」
1つ目のワークアウトを終えた後に疲れていたら、2つ目のワークアウトに取り組むエネルギーがなくなる。 それは問題ないのだが、順序によっては、どちらのアクティビティも成功が妨げられかねないのだ。 そのため、まず最も優先度の高いパフォーマンス目標は何かを明確にしてから、最初に取り組むアクティビティを選ぶことが重要になる。
目標を明確にする
「それはとてもシンプルなことだ」と言うのは、 San Diego Mobile Rehab and Physical Therapyを運営する理学療法博士(D.P.T.)のラケル・フェルダー。 「最終目標に到達できるようなエクササイズから始めるのがいいでしょう。ワークアウトの開始時が一番エネルギーがあって集中できるから」
たとえば、筋力アップを最優先したい場合、シルバはウェイトリフティングから始めるようアドバイスする。 「逆に、有酸素持久力の向上を優先するのであれば、ランニングから始めることで、エネルギーが十分にある状態で効果的にトレーニングできます。 体のエネルギーシステムやリカバリー能力には限りがあります。だから、ワークアウトを戦略的に組み立てることが、トレーニングの効果を最大限に引き出す助けになります」
目標1:筋肉量の増加または筋力アップ
筋肉量の増加や筋力アップをフィットネスの主な目標にしているなら、カーディオトレーニングよりもレジスタンストレーニングを優先するとよい。
シルバはこう話す。「ウェイトリフティングでは、効果的に筋肉に負荷をかけ、成長を促すために、正しいフォームで正確に最大限のエネルギーで取り組む必要があります。 リフティングの前にカーディオトレーニングを始めるとグリコーゲンの蓄えが枯渇して疲労が蓄積し、筋力トレーニング中にベストパフォーマンスを発揮しにくくなります」
疲労の問題を除けば、快適なペースでのジョギングやランニングでは、筋力トレーニングで激しい動きをするときとは異なる種類の筋繊維を動員する。 具体的に言うと、ウェイトリフティングでは速筋繊維(2型筋繊維)が使われ、それは筋肥大、つまり筋肉を大きくするために欠かせない。
ランニングでは遅筋繊維(1型筋繊維)を使って有酸素運動を長時間続けることになる。筋力や筋肉量の向上をメインの目標とするなら、必ずリフティングの後に行うべきだ。
しかし、筋力トレーニングの直後にランニングを行うのは得策とは言えない。 Human Powered Healthのパフォーマンス生理学者であるレオ・ヒップは、ランニングを別日に行うか、同日であれば時間を置いて行うことを推奨している。 ヒップは、筋力強化の効果を妨げないよう、ワークアウトのセッション間に4時間以上のリカバリー時間を設けることが重要だと話す。
目標2:有酸素持久力の向上
「持久力の強化を目指すなら、まず走るべきです」とシルバは言う。 「持久力トレーニングは有酸素エネルギーに大きく依存します。ランニングから始めれば、疲労がたまる前に心血管系を最大限まで使うことができます」
先にバーベルを持つと、安定性を司る極めて重要な筋肉が疲労し、「ランニング中のフォームやパフォーマンスが損なわれる」おそれがあるとシルバは続ける。 長距離ランを目標にするならなおさらだ。
ワークアウト初心者の場合は、有酸素運動を優先的に行う方が、レジスタンストレーニングから始めるよりも効果的に有酸素運動のベースを鍛えることができる。
専門家からのアドバイス:「ランニング後に筋力トレーニングをしたい場合は、動作の反復に集中しましょう。例えば、各動作の反復回数を12〜15回程度に増やして、1型筋繊維を活性化させ、持久力を司る筋肉を鍛えます」とフェルダー。
カーディオウォームアップを常に行うべき理由
カーディオトレーニングでもレジスタンストレーニングでも、ワークアウトを始める前に筋肉の準備を整えるのは、良い心がけだ。
ヒップは、「筋肉に大きな負荷がかかるエクササイズを行う前に、心血管系と筋肉系を『活性化させる』時間を取ることが重要です」と話す。 サイクリングやジョギングなどの軽い有酸素運動や、レッグスイングやジャンピングジャックなどの動的ストレッチを行うことで、筋肉への血流が促され、休息状態から「準備完了」状態に移行するとシルバは説明する。
ワークアウト前に筋肉を適切にウォームアップすれば怪我のリスクも減る、とフェルダーは付け加える。 「ウォームアップに5分から10分の時間をかける価値はあります。筋肉のこわばりをほぐし、アンバランスを防ぐ。それにとにかく気持ちいいから」
有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせることが可能
健康の維持が目標の場合、または最も楽しめる運動を行うことを優先する場合は、両方のタイプのワークアウトを同時に行ってもいい。 研究によると、一度のワークアウトで速筋繊維と遅筋繊維を効果的に交互に動員できるという。
HIIT(高負荷トレーニング)もサーキットトレーニングも、両方のタイプのワークアウトとして知られていることを考えれば、これはもっともなことだ。 それに、これらのワークアウトを組み合わせることにはメリットがあると、専門家も言う。 フェルダーは、「筋力トレーニングと有酸素運動を交互に行うと、短時間で持久力と筋力を効果的に鍛えられ、効率的にカロリーを消費できます」と話す。
シルバが挙げるのは、HIITワークアウトの中には、短時間で激しい有酸素運動と筋力を高める運動を交互に行うものがあるという点だ。 「持久力と筋肉の両方を鍛えるには、時間効率に優れた方法なんです」 もうひとつの選択肢として、 「セット間の休憩を最小限に抑えて筋力エクササイズを組み合わせて行うサーキットトレーニングがあります。心拍数を高い状態に保ち、筋肉と心血管系の両方の持久力を向上させます」
結論
ワークアウトのスケジュール設定に絶対的な正解はない。 トレーニングで何を達成したいのかを明確にすることが、自分にとって最も理にかなった優先順位を見つける最初のステップだ。 「ランニングを筋力トレーニングの前か後のどちらにするかは、長期的な目標、個人の好み、その日の体の調子を考慮して決めましょう」とシルバはアドバイスする。
文:シャイアン・バッキンガム