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動物のようにトレーニングしよう
Coaching
四つん這いになって歩くのは、赤ちゃんと動物だけではない。適切な方法で四つん這い歩行を行えば、2足歩行を含むあらゆる動きを向上させることができる。

後ろ脚で二足歩行をする犬は、ソーシャルメディアでも大人気。そんな姿を見れば誰もが笑顔になるだろう。では、人間の大人が手足を使ってハイハイ歩きをするのはどうだろう?かわいらしい姿ではないかもしれないが、これには驚くべきメリットがある。その理由をチェックしてみよう。
四足歩行の動物や人間の赤ちゃんの動きは、「プライマルムーブ」または「四足トレーニング(quadrupedal movement training=QMT)」と呼ばれ、その歴史は人類が進化する前に遡る。四足トレーニングにはハイハイ歩きだけでなく、ベアプランク、クラブウォーク、インチワーム、ストライキング・スコーピオンズなどのエクササイズ(すべてYouTubeでチェック可能)も含まれる。ダウンドッグやフロッグジャンプもQMTの一種。これらのトレーニング名に、動物の名前が使用されていることに気づいただろうか。これは決して偶然ではない。
どのトレーニングにも、日常生活ではあまり行わない四つん這いの動きが入っている。少しまぬけに見えるかもしれないが、四足トレーニングには大きなメリットが。詳細を以下でチェックしてみよう。
可動性の向上
深くスクワットした状態で左右に移動するモンキーホップでも、腰を高く上げるクラブリーチでも、プライマルムーブは関節の全可動域における筋力を鍛える。そう語るのは、ジェフリー・バクストン(ペンシルベニア州グローブシティ大学運動科学部助教授)。彼の研究によると、8週間にわたり週に2回、ルーチンにQMTを1時間組み込んだ人は、肩と腰の可動性が大きく向上し、スクワットとランジのフォームに改善が見られたという。重いウェイトを持ち上げたい人には耳寄りな情報だ。
念のために説明しておくと、柔軟性と可動性は全く異なる。柔軟性とはストレッチに使われる受動的な能力のこと(例:ハムストリングのストレッチの際に、理学療法士がリラックスしたあなたの脚をどれだけ伸ばせるか)。それに対して、可動性とは、関節の可動域おいて手足を能動的に動かすための筋力とコントロール能力のこと(例:自分自身でどれだけ高く、あらゆる方向に脚を持ち上げるられるか)、そうバクストンは解説する。
プライマルムーブは、関節の全可動域における筋力を鍛える。
ジェフリー・バクストン
助教授
四足トレーニングはなぜ重要なのだろうか。「柔軟性と可動性のギャップが大きいと、けがをする確率が高まります」とバクストンは語る。動きに合わせて、神経筋を十分にコントロールできないことが理由だ。例えばスクワットで座り込む身体の柔らかさがあっても、腰の可動性が不足していると膝が内側に入りこんでしまい、大切な膝関節を守る軟部組織に過度の負担がかかる可能性がある。
バクストンいわく、プライマルトレーニングはこの2つのギャップを埋めるのに役立つ。週に2回、1時間ずつ行うのが難しい場合は、いつものワークアウトにアクティブなウォームアップとして、10分程度のQMTを組み入れることを彼は薦めている。

コアの強化
ランニング、サイクリング、重い荷物を運ぶなど、あらゆるアクティビティに必要なエネルギーと安定性。その源は強いコアだ。
昔ながらのシンプルなプランクなどに飽きた人には、プライマルムーブがおすすめ。いつもと違うアプローチで、あまり使われない小さな筋肉をピンポイントで強化できる。そう語るのは、カースティー・ゴッドソー(Nikeトレーナー)。彼女は、HIITのワークアウトにプライマルムーブを織り交ぜている。バクストンは、「手足を地面につけ、反対側の手足を持ち上げてクラブウォークをするときや、シットスルーでゆっくり回転するとき、正しいフォームを保つにはコアの固定筋を鍛える必要があります」と説明する。
QMTスタイルのアイソメトリックホールドにおいて、一定の姿勢をある程度の時間保つことでコアを鍛えられるとゴッドソー。彼女のお気に入りのトレーニングは、四つん這いになり膝を床から浮かせるベアホールドだ。この動きによって、腹直筋(シックスパックになる筋肉)、外腹斜筋、腰の筋肉といった運動時に背中を支える筋力を鍛えられるという調査結果もある。ゴッドソーは各回最低30秒キープすることを推奨。
身体意識の向上
学術誌「Human Movement Science」に掲載された4週間にわたる研究調査によると、60分間の四足トレーニングを週に3回行うことで認知機能の柔軟性が強化されたという。つまり、環境変化に対するメンタルの順応力や問題解決力が鍛えられるということだ。
この研究に携わった研究者は、関節を動かす際の感覚もQMTによって強化できることを明らかにした。ゴッドソーは「従来のウェイトトレーニングとは違い、プライマルムーブでは神経筋が試されます」と話す。「四足トレーニングは、集中力を駆使して正しく行いましょう。こういった身体意識がフロントスクワットやプルアップなどの動きにも反映されるからです。それによって、フォームが改善され、生涯にわたって運動を楽しめるようになります」繰り返しになるが、けがの防止につながるということだ。

エクササイズがさらに楽しく
「プライマルムーブは大好きです。楽しいし、やりがいがあるだけでなく、人間が幼少期に学ぶ最初の運動パターンに立ち返ることができるから」とゴッドソーは語る。彼女のお気に入りは、プライマルムーブを取り入れたバーピーだ。例えば、ゴッドソーのオリジナル「ホットソース・バーピー」(彼女のインスタグラムをチェック)にカエルの動きを組み合わせたエクササイズでは、手の外側に足を広げて地面を蹴り、動きの途中で足を空中に一瞬キープしてから、着地・ジャンプする。
「クリエイティブになって、ゲーム感覚でエクササイズを楽しみましょう。そうすれば、運動自体のキツさを紛らわせることもできます」とゴッドソー(そもそもバーピーはかなりハードだ)。少なくとも、QMTが新たな挑戦を生むのは事実。そのチャレンジをぜひ楽しんでほしい。
ここで、専門家からのアドバイスをいくつかご紹介。
- 01 手首の準備運動は欠かさずに。
バクストンによると、多くのプライマルムーブには手首をしばらく反らせる動きが含まれるという。手のひらを広げ、前腕に向かって手首を反らせる動きは、PCのキーボードを何時間も打つ現代人の多くにとって痛みを伴うものだ。手首を曲げた状態が続くと、前腕が硬くなるため手首を反らせにくくなり、這うのも難しくなるとゴッドソーは語る。手首をほぐすためのウォーミングアップとして彼女がすすめるのは、四つん這いになり手の指先を自分に向け、ゆっくりと身体を左側に回すエクササイズ。これを逆側でも繰り返そう(各10回)。
手首に十分な柔軟性があっても、長期的に手首の負担を軽減したいなら、手首に負担のかかるエクササイズを2回以上連続で行うのは避けた方が良いとゴッドソーは付け加える。 - 段階を踏もう。
特に指示がない限り、四つん這いでプライマルムーブを始めるときは、背中は平らにして、手首は肩の真下にくるようにとバクストンはアドバイスする。また、各レップ後にこの姿勢に戻るのが望ましいとのこと。例えば、ローディッド・ビースト・ポジション(膝を床から離したチャイルドポーズを想像してみよう)に取り組む前に、ベアホールドやバクストン命名の「スタティックビースト」から始めて、姿勢と手の位置をチェックしよう。必要に応じて調整すること。かかとに体重をかけるときに、自分の身体に最適なポジションを見つけやすくなる。
エクササイズの最中、関節の痛みを感じるかもしれないが、それは筋肉を能動的に使えていないサインだとゴッドソーは言う。例えばベアクロールで四つん這いになっているときに手首が痛むなら、腹筋を身体の中央に向かって引き寄せ、三頭筋を意識しながら肘の内側を前に回して床と反対側に押し出す。これにより、ある程度の圧力を取り除いて手首に体重がかかりすぎるのを避けられるとゴッドソーは言う。さらにこれは、腕とコアをきちんと鍛えることにもつながる。もちろん、フォームを正しても痛みを感じる場合は、動きはストップして他のエクササイズへ移ろう。 - リラックスすること。
動きに慣れて来たらスピードを下げて身体の声に耳を傾けよう、とゴッドソーはアドバイス。このようなトレーニングの難しさは、硬くなった腰とハムストリングスを使わなければならないことにある。この壁にぶつかったとき、無理は禁物だ。「ストレッチが克服のきっかけになるはずです」とゴッドソーは言う。「ヨガのような他のエクササイズにも通じる動きのパターンがあると理解できれば、柔軟性が上がり始めるでしょう」
ゴッドソーはプライマルムーブのウォームアップとして、腰を回して関節を滑らかにし、フィギュアフォーストレッチで体をほぐしている。自信を持って身体を動かせるようになっても、コーディネーションと安定性に意識を集中させるようにと彼女はアドバイス。コントロールできると感じるときだけ、スピードをあげよう。イメージは徘徊する動物だ。
ここで紹介したようなエクササイズにチャレンジするなら、NTCでゴッドソーのHIITワークアウトをチェック。低負荷バージョンは、Nikeトレーナーのブランデン・コリンズワースによるワークアウトがおすすめだ。近所のジムで取り組むなら、「プライマル」、「動物」、「プレー」などのワードが名前や説明に含まれるクラスに参加してみよう。Googleで検索するのももちろん良いが、認定トレーナーや理学療法士によるガイドに従うように。どんなトレーニングを選んでも、このヒントを活用すれば四足トレーニングだけでなく、他のトレーニングでもエネルギーを発揮できるようになる。
文:アデル・ジャクソン=ギブソン
イラスト:ジョン・クラウス
