ランニング中のシンスプリントを予防する方法

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ここで紹介するヒントを活用して骨と筋肉を守ろう。

最終更新日:2025年3月17日
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ランニング中のシンスプリントを予防する方法

シンスプリントは脛骨過労性骨膜炎とも呼ばれ、ランナーや負荷の高い運動を行うアスリートによく見られる、すねのオーバーユースによる損傷だ。 調査によると、このけがに悩まされるランナーの割合は、最大で20%に及ぶと考えられる。 シンスプリント(shin=すね)とはその名のとおり、膝から足首までの前面に位置する脛骨(すねの骨)とその周辺で発生する。 「ランニング後、すねに痛みを感じる場合は、シンスプリントの可能性があります」と語るのは、理学療士兼DPT有資格者のラケル・フェルダー。(San Diego Mobile Rehab and Physical Therapy運営者)

シンスプリントの重症度によっては、疼痛や圧痛、鋭い痛みを感じることもある。 フェルダーによると、シンスプリントは下腿(膝から足首まで)の2つの筋肉それぞれに影響を及ぼす可能性がある。 「すねの前側が痛むのは、前脛骨筋の炎症が原因で、前外側シンスプリントと呼ばれています」とフェルダーは話す。 「反対に、すね後面の内側に沿って痛みが出るときは、ふくらはぎの奥深くにあるヒラメ筋が関係しています。これは、後内側シンプリントと呼ばれています」

しかし幸いなことに、シンスプリントを予防する方法はたくさんある。 けがの原因を把握すれば、トレーニングプランの調整やけがの予防につながる。

シンスプリントの原因

ランニングでは脛骨に繰り返し衝撃が加わるので、シンスプリントを誘発する。 走りながら足が着地するたびに、その衝撃を下半身が吸収している。

「すねの筋肉、腱、骨の炎症により、痛みを感じ始めます」とフェルダー。 「原因としては、過度のトレーニング、繰り返しのストレス、トレーニングの強度や量の急激な増加、走法、不適切なシューズ、筋肉のこわばり、弱った筋肉や骨、筋肉の疲労などが挙げられます」とフェルダーは説明する。 また、体幹や腰の筋肉が弱くなったり、バランスが崩れたりすると脚に過剰な負担がかかり、シンスプリントのリスクが高まるとフェルダーは付け加える。

さらに、オーバープロネーションやヒールストライクといった着地位置もシンスプリントの要因となる。 かかとで着地するランナーの足は、地面に接するときにつま先が持ち上がる(背屈する)ため、脛骨周辺の軟組織にこわばりが生じる。 同様に、オーバープロネーション(または、足首が過度に内側に傾き、衝撃が加えられたときに土踏まずがつぶれている状態)も、足の内部構造を緊張させる。 このストレスが、最終的に周囲の軟組織に微小断裂や炎症を引き起こす場合がある。 どちらの着地方法も、シンスプリントのリスクを増加させるのだ。

シンスプリントの重症化を防ぐ最善の方法は、体の声に耳を傾けることだ。 「体は痛みを通じて脳に何かを訴えているのです」とフェルダーは指摘する。 「痛みが私たちの注意を引き、何かを変えるきっかけになります」とフェルダー。治療をせずに放置すると、脛骨疲労骨折に発展し、痛みが増すことになる。 フェルダーのアドバイスを参考に、そのような結果にならないようにしよう。

ランニング中のシンスプリントを予防する方法
ランニング中のシンスプリントを予防する方法

シンスプリントの予防法

1. 走る距離は徐々に伸ばす

しばらくスポーツから遠ざかっていたベテランランナーでも、初めての5kmレースに向けてトレーニングする初心者でも、アドバイスは同じだ。短期間に走る距離を増やし過ぎると、シンスプリントのような使いすぎによるけがのリスクが高まる。

「足が着地したとき、毎回、地面反力が生じます。 この力は、ランニング中であれば体重の2〜3倍の大きさになります。 それを骨、筋肉、腱が吸収するため、けがをしやすくなるのです」とフェルダーは説明する。

使いすぎによるけがを防ぐうえで徐々に距離を伸ばしていくことが重要なのは、このためだ。 走る距離を毎週10~15%ずつ伸ばしていく「10パーセントルール」がおすすめだ。 最初の週に合計32km走った場合は、次の週は35〜37kmを目標に設定すると良いだろう。

ランニング中のシンスプリントを予防する方法

2. 必ずウォームアップをする

運動に向けて体の準備を整えるためには、ワークアウト前のウォームアップが欠かせない。 特にダイナミックな動きは、酸素を豊富に含んだ血液を筋肉へ運んで温めるので、けがのリスクを減らす効果がある。 「バットキックやジャンピングジャックなどの軽めのジャンプをすると、心拍数が上がり、骨にかかる負荷が徐々に増え、走る準備が整います」とフェルダーは話す。

一日中デスクの前に座っている人は、大臀筋が硬くなりやすい。 大臀筋、ハムストリング、大腿四頭筋、ふくらはぎの筋肉をランニング前にウォームアップすることで、高負荷のアクティビティに備えることができる。

「静的なウォームアップよりも動的なウォームアップを優先して、筋肉を正しく整えましょう。そしてトレーニングでパフォーマンスを最大限発揮しましょう」とフェルダー。 動的なウォームアップとは、可動域を全開にして筋肉を伸ばすアクティブな動きのことだ。 たとえば、ウォーキングランジ、ニーハグ、レッグスイングなどがそれに当てはまる。 「フォームローリングは、大臀筋、ハムストリング筋、ふくらはぎの筋肉の血流を増やしたり、筋肉のこわばりをほぐしたりする効果もあります」とフェルダーは語る。

これらの主要な筋群とは別に、すねの骨の真上に位置し、足ともつながっている筋肉である、前脛骨筋にもターゲットを絞るとよい。 「つま先を上げたり、レジスタンスバンドを使ったエクササイズで足を背屈させたりして、前脛骨筋のウォームアップや強化を行い、前外側シンスプリントを予防しましょう」とフェルダーは言う。 背屈とは、足のつま先をすねの骨に向けて引っ張られるように曲げること。

次のランの前に、以下の動的なウォームアップを試してみよう。

カーフレイズ

  • まず、踏み台に乗って足を腰幅に広げ、直立姿勢で立つ。母指球が踏み台の端付近に来るようにする。
  • つま先立ちになるまでかかとを上げる。
  • ゆっくりとかかとを下ろす。
  • これを10〜15回繰り返す。

プロのアドバイス:「カーフレイズは素晴らしいウォームアップですが、伸びた姿勢で筋肉に負荷をかけるエキセントリックカーフレイズも追加してみましょう。けがのリスクを減らすことができます」とフェルダーは言う。 エキセントリックカーフレイズは、ヨガブロックなどの段の上で行うことができる。 壁の前に立って両足のつま先で立ち、片方の足を後ろに持ち上げる。 もう片方の足をゆっくりと下ろし、ヨガブロックや台と同じ高さまで下げる。 左右で10〜15回ずつ繰り返す。

ボディウェイトスクワット

  • まず、足を腰幅に広げて立つ。
  • 臀部を後方へ引きながら、椅子の上に座るようなフォームでしゃがむ。
  • 背すじを伸ばし、胸は前に向けてまっすぐ保つ。
  • 直立姿勢に戻る。
  • これを15~20回繰り返す。
ランニング中のシンスプリントを予防する方法

3. リカバリー戦略を取り入れる

レースに向けてトレーニングを行っているなら、トレーニングの組み方が成功と長続きの決め手となる。 たとえば、1週間に5日も長距離を走ると、十分に回復する余裕がなくなる。 これが炎症や疲労、シンスプリントといったオーバートレーニング症候群の症状につながる。

リカバリー戦略を取り入れて、オーバーユースによるけがを防ぎながら、ランニングを楽しもう。 すねに痛みがある場合は、休養日をとろう。腸脛靱帯症候群、膝蓋骨腱炎、疲労骨折といった深刻な症状は回避しなければならない。

以下に挙げるのは、効率的に回復するためのヒントだ。

  • ランニング中や終了後に着圧靴下を履いて血流を促し、回復をサポートする。
  • 抗炎症食を摂ることで炎症を調節し、回復を早める。
  • エプソムソルト入浴をする。
  • フォームローリングをする。
  • 硬いボールを足裏で転がす。
  • 十分な水分補給を心がける。
  • 7~9時間の睡眠をとる。

運動もリカバリーになる場合がある。 走っていない日にクロストレーニングを行うことで、主要な筋肉を強化し、筋肉バランスの乱れや衰えを防ぐことができる。

ランニング中のシンスプリントを予防する方法
ランニング中のシンスプリントを予防する方法

4. クロストレーニングを組み込む

ランニングを休む日のうち少なくとも1日は、別の方法で体を動かしてみよう。これにより、さまざまな筋肉群が動員され、関節にかかる負担が軽減される。 「ランニングは負荷の高いアクティビティですから、心血管系を鍛えるローインパクトなアクティビティを選びましょう。体を回復させながら、ランニングではあまり使わない筋肉を強化することができます」とフェルダー。 クロストレーニングの日にできるローインパクトなエクササイズには、次のようなものがある。

  • 水泳
  • サイクリング
  • エリプティカル
  • ピラティス
  • ヨガ
ランニング中のシンスプリントを予防する方法

5. 適切なシューズを履く

シンスプリントを避けたいなら、適切なランニングシューズを履くことは必須だ。 「適切なシューズを履くことは、新しいシューズが必要なタイミングを見極めるのと同じくらい重要です」とフェルダーは言う。 「ランニングシューズの交換時期は、シューズの種類、路面、体重、走法によって異なりますが、一般的には400〜800kmほど走ったら、新しいランニングシューズを購入すると良いでしょう」

特に次のようなランナーは、自分に適したシューズが欠かせない。

  • オーバープロネーションの人
  • 負傷から復帰したばかりの人
  • ヒールストライクの人
  • 長距離を走る人
  • ランニングの頻度が高い人

衝撃吸収に役立つクッショニングとアーチサポート機能を備えたランニングシューズを探そう。

ランニング中のシンスプリントを予防する方法

6. フォームを見直す

膝関節痛、シンスプリントの疼痛、脛骨に関連する負傷は、ランニングテクニックを調整する必要があることを示している場合がある。 よくある間違った走法を紹介しよう。

  • ヒールストライク
  • 過度な足の背屈
  • オーバーストライディング
  • つま先の蹴りだし

その他の考慮事項

腰の筋肉の強度が足りないと、脚が負担を一手に引き受けることになり、けがをしやすくなるとフェルダーは付け加える。 また、腕の振り方が不適切な場合、つまり胸や胴体の前で腕を交差させると、回転運動が起こり、ランニングの姿勢に悪影響が及ぶとフェルダーは説明する。

フォーム、トレーニング計画、ランニングシューズが適切であれば、シンスプリントを発症する可能性が減り、ランのパフォーマンスを向上できる。

7. 骨密度をチェックする

フェルダーは、栄養は骨と筋肉を強く健康に保つための鍵であるため、トレーニング中は十分な食事をとることが不可欠だと言う。 「骨密度が不足していると、シンスプリントのリスクが高まります。特に女性ランナーや長距離ランナーの場合は注意が必要です」とフェルダーは話す。 「心配なことがあれば、医師に骨の健康状態を確認することをおすすめします」

ランニング中のシンスプリントを予防する方法

8. 柔らかい路面で走る

毎日、舗装道路を走っていると、骨、関節、筋肉に大きなストレスがかかる場合があります。 フェルダーは、体を守るために路面を変えて走ることを推奨している。 「路面が変われば、体が吸収する地面反力の影響も変わってきます」とフェルダーは言う。 「地面反力は舗装道とコンクリートで最も高く、芝生とトレイルで最も低くなります。 ゴムで作られたトラックを選んでも良いでしょう。衝撃が適度に抑えられます」

この記事に含まれる内容は情報提供のみを目的としており、医学的アドバイスや医学的意見を含む、または、それに相当するものではありません。 症状がある場合や、エクササイズプログラムを開始、または変更する前には、免許を持つ医療従事者に相談してください。

文:シャイアン・バッキンガム

公開日:2025年3月10日

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