理学療法士が教える骨盤底筋の鍛え方
健康とウェルネス
骨盤底筋のエクササイズによって不快感が軽減され、健康状態が改善される仕組みについて、有資格の理学療法士が語った。
体のどの部分を鍛えたいかというアンケートをとったら、上腕二頭筋、僧帽筋、胸筋、臀筋など、SNSに写真を投稿したくなる筋肉の名前が次々とあげられるだろう。 しかし、あまり目立たないがこのリストに加えるべき筋肉がある。それが骨盤底筋だ。
性機能障害、痛み、失禁を専門とする理学療法医であるヘザー・ジェフコートによると、骨盤の底に位置する骨盤底筋は、網状の筋肉と、前後左右に広がる筋膜からなる。 「この筋肉群が一体となり、骨盤内器官のサポート、括約筋のコントロールによる尿漏れの防止、直立姿勢の維持、性機能の補助といった役割を果たしています」とジェフコートは説明する。
骨盤底筋は、人体のほかの筋肉と同様に、強ければ最大限に機能を発揮する。 そこで、骨盤底筋を鍛えるのに最適なエクササイズをジェフコートに教えてもらった。
そのエクササイズを試す前に、特にどのような場合に骨盤底筋のエクササイズが有効なのかをチェックしよう。
骨盤底筋には厳密にどのような役割があるのか?
骨盤底筋は、コアマッスルを含む大きな14の筋肉からなるハンモック上のサポート構造だ。 ジェフコートによると、骨盤内器官(膀胱、直腸、女性の場合は子宮など)をサポートすることがこの筋肉群の主な機能だ。
また、生殖器官と排泄器官の位置を保つ役割のほかにも、直立姿勢の維持や、出産時の補助、全身への血液とリンパ液の供給のサポートといった役割を担っている、とジェフコートは言う。
骨盤底筋障害のよくある原因と兆候
ジェフコートによると、骨盤底筋が適切に機能するには、十分に収縮、弛緩できなければならない。 骨盤底筋のさまざまな機能の中でも、排泄のコントロールはこの2つのモードを切り替えることによって行われる。
しかし残念ながら、出産、閉経、便秘、慢性ストレスなどのさまざまな理由により、骨盤底筋が適切に機能しない人が少なくない。 その規模感として、女性の24%、男性の16%が骨盤底筋障害を抱えていることが研究で示されている。
骨盤底筋が適切に収縮するが、十分に弛緩しない人もいる。 ジェフコートによると、そのような人は、一般的に慢性ストレスや頻繁に排尿を我慢することが原因で、筋肉に適度な力を込めて収縮させることができなくなっている。 多くの場合、骨盤底筋の過活動または過緊張と診断されるこの症状は、尿漏れ、便秘、骨盤や腹部の慢性的な痛み、腰付近や臀部の痛みの原因になる、とジェフコートは述べている。
また、骨盤底筋を収縮させることができず、常に弛緩状態になっている人もいるという。 これは、骨盤底筋の過剰収縮と同様の症状(尿漏れや骨盤の圧迫など)のほか、膣の知覚の低下、原因不明の、膀胱、腹部、骨盤の痛みを引き起こす、とジェフコートは説明する。
骨盤底筋障害の診断法と治療法
骨盤底筋の収縮や衰えに関連する症状を抱えているなら、まずはかかりつけの医師や骨盤底筋専門の理学療法士に相談する必要がある。
その理由は、 簡単に言うと、骨盤底筋の状態によって治療法が異なるからだ。 ジェフコートによると、筋肉が過度に弛緩している場合は、筋肉を鍛えるエクササイズを治療計画に含めることになる。 一方、筋肉が弛緩しない場合は、筋肉を伸ばすエクササイズから治療を始めるとよい。
すでに骨盤に何らかの症状がある人は、これらの治療法のいずれかを試す前に必ず医療従事者に相談し、自分に適した治療法かどうかを確認しよう。
骨盤底筋の健康に良いエクササイズ3選
ジェフコートによると、骨盤底筋のケアを習慣化することは、骨盤底筋がある人、つまりすべての人にとって有効だ。 以下では、ルーティンに取り入れるべき3つの骨盤底筋エクササイズを紹介する。
1.ケーゲル体操
骨盤底筋エクササイズと言えば、ケーゲル体操が人気だ。 念のため説明すると、ケーゲル体操とは、骨盤底筋を収縮させた状態をしばらく維持した後、完全に弛緩させるエクササイズだ。
ジェフコートによると、このエクササイズは適切な時に適切な場所で行わなければならない。 ケーゲル体操は、骨盤底筋を鍛えて収縮させる必要のある人に極めて効果的だが、
すべての人に適しているわけではない。 すでに骨盤底筋が収縮している人の場合、ケーゲル体操によって症状が悪化するおそれがある、とジェフコートは注意を促している。 骨盤底筋が過剰に収縮しているのにケーゲル体操を行うのは、すでにふくらはぎがつっているのに筋肉を動かそうとするようなものだ。
やり方:仰向けになり、膝を曲げ、足裏をマットにつける。 息を吐きながら、骨盤底筋を上げて引き締める。 ここで重要なのは、骨盤底筋をただ収縮させるのではなく、上げることだ。 ストローを使って性器から空気を吸い込むイメージで行うとよい。
その状態を2秒維持した後、力を抜く。 これを10回以上繰り返す。
2.サイドライイング・クラム
ケーゲル体操は、骨盤底筋が衰えている人が治療計画の一環として行うのに適しているが、それだけでは完全な治療計画にならない。 サイドライイング・クラムのような腰と体幹を鍛える運動を追加する必要がある、とジェフコートは言う。
やり方:横向きに寝転がり、腰と膝を45度に曲げる。 両足をくっつけて、左右の腰が重なった状態を保ちながら、口を開く貝のように膝を開く。 その際、正中線と背骨を動かさないようにする。
これを10~15回、2セット行う。 簡単すぎると感じる場合は、太ももの中央部にレジスタンスバンドを装着し、負荷を加える。
3.ハッピーベイビー・ストレッチ
この人気のヨガストレッチは、股関節を効果的にストレッチできることで有名。 また、ジェフコートによると、骨盤底筋が伸びるため、骨盤内が凝り固まっている人に有効だ。
やり方:仰向けになり、膝を曲げて胸につける。膝を胸に押し付けたまま、両脚の土踏まずをつかみ、その状態を30~45秒維持する。 このサイクルを3度繰り返そう。
次に、両膝と両足を開いて、股関節を伸ばす。 この状態を保ちながら、ゆっくり呼吸する。 つらくならない回数だけこれを繰り返す。
文:ガブリエル・カッセル