ボックスを1つにまとめ、梱包材を半分に削減したイノベーションの物語

Innovation

二重梱包の慣例を廃止して、廃棄物を削減したNikeの梱包チーム。その過程で気づいたシューズボックスの可能性とは?

最終更新日:2022年4月13日
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資材を節約する、ナイキのワンボックス梱包

Nikeは、カーボンゼロと廃棄物ゼロを目指し、スポーツの未来を守る「Move To Zero」プロジェクトに取り組んでいる。

20年以上にわたってNikeのカスタムシューズボックスをデザインしてきたリッチ・ヘイスティングスは、次のように述べている。「梱包なんて、商品に比べたら二の次だと考える人も多いでしょう。でも環境に大きな影響を及ぼす可能性が見逃されています」

オンラインでシューズを購入したときに、シューズボックスがさらに別の箱に入れられて配送されてきた経験はないだろうか。「Nikeは既存の方法に改善の余地があると気付きました」とヘイスティングスは語る。

2020年にスペース ヒッピーが発売され、ヘイスティングスのチームに変革のチャンスが舞い込んだ。スペース ヒッピーは、重量の25-50%にリサイクル素材を使用したシリーズ。未来志向のシューズには、環境負荷の少ない独自のシューズボックスが相応しい。

資材を節約する、ナイキのワンボックス梱包

梱包箱の中にシューズボックスを入れるのは、それまで誰もが当然と思っていた。だがリッチ・ヘイスティングスは、スペース ヒッピーのシューズボックス(写真中央)
でその慣例を廃止。その後もワンボックス方式の実現に貢献した。

サステナブル製品事業担当のエリカ・スワンソンは、次のように述べている。「スペース ヒッピーがきっかけになりました。Nikeはシューズボックスを別の箱に入れて発送するのではなく、シューズボックスだけで発送する革新的なシステムを求めていたのです」

オンラインでシューズを1足注文した場合は、全体梱包用の箱が使われない。その分だけ資源ゴミが削減されるようになった。単純な変化のように思えるが、他のあらゆる業界最先端のコンセプトと同様、実現までには多くの苦労もあった。

試行錯誤

リッチ・ヘイスティングスは、長方形のシューズボックスだけで発送されたスペース ヒッピーについて次のように回想する。「当初は限定販売の予定だったので、『とりえあず思い切ってやってみよう』と話してました。

でもシューズが思いのほか好評で、すぐにシューズボックスの改善が求められました。耐久性が不十分で配送中の厳しい環境に耐えられない。そんな要望がたくさん寄せられています。初回の教訓をベースに、シューズボックスの改良に着手しました」

資材を節約する、ナイキのワンボックス梱包

ワンボックスでNikeを新たな高みに導こうとしているエリカ・スワンソンは、次のように語っている。「消費者の86%が、
よりサステナブルな暮らしにつながるブランドを利用したいと考えています。このニーズに対し、Nikeはワンボックスの配送で応えたいのです」

シューズボックスが壊れずに配送先まで届けられるようにするため、リッチ・ヘイスティングスのチームは一連のエンジニアリングテストを実施した。シューズボックスを叩いたりして強度を確かめる破壊実験だ。このテストのおかげでシューズボックスの強度が大きく高まり、もっと大規模に展開できる設計だとわかってきた。

大きな夢を実現すべく、さまざまなテストを経て完成したのがNikeのワンボックスだ。現在のデザインは、ほぼすべてのNikeシューズを梱包できるようになっている。見た目は当初のモデルと異なるが、廃棄物を削減するという目的は変わらない。

シューズをシューズボックスに入れて発送し、外側の箱(と余計な梱包材)を廃止する。この変化から、大きな成果が生まれている。

どんなシューズでも、ワンボックスを使うとオンライン注文1件あたりの廃棄物が51%削減される(従来型梱包との比較)。

どんなシューズでも、ワンボックスを使うとオンライン注文1件あたりの廃棄物が51%削減される(従来型梱包との比較)。

資材を節約する、ナイキのワンボックス梱包

革新的なシューズボックスはどのようにして生まれるのだろうか?クリス・コンクリンによると、細部へのこだわりがポイントだ。

無駄を省いて大きく進化

「チームが一丸となって、お客様がどのようにシューズボックスを扱っているのか徹底的に調査しました」と梱包設計担当のクリス・コンクリンは言う。

そのきめ細かい仕事の成果を見てみよう。

資材を節約する、ナイキのワンボックス梱包
  1. 目立たない外観
    ワンボックスは、遠目には面白みがないデザインかもしれない。だがそれも重要なポイントだ。ロゴのないデザインについて、コンクリンは次のように述べている。「安全を重視した意図的なデザインです。新品のNikeシューズが玄関に置き配されていると一目で分かるようなボックスは避けたいと考えていました」
  2. 返品用の粘着テープ
    テープの廃棄物を削減するために、ワンボックスは蓋を粘着テープで密閉するスタイルだ。しかし商品がお客様のお気に召さないこともあるため、返品方法まで考慮しなければならない。そこで2本目の粘着テープが追加され、シューズ返品時にボックスを再度密閉できるようになった。
  3. 商品を汚さないグラフィック
    コンクリンは次のように語っている。「ボックス内のグラフィックには、さまざまなカラーを使おうと思っていました。でもホワイトのミッドソールにインクが付着する懸念があり、商品を完全な状態に保てるホワイトに変更しました」

    そのホワイトインクの塗布方法も、廃棄物削減という全体のミッションにのっとっている。「印刷時に使用する水にも配慮しました。環境フットプリント全般を少なく抑えられるミニマルなデザインにしたかったのです」とコンクリンは言う。

梱包箱も兼ねるシューズボックスには、このようにたくさんの特長がある。玄関にワンボックスが届いたら、自分の目で確かめてみよう。エリカ・スワンソンはこう訴える。「届いたボックスには、多少の傷が付いているかもしれません。でもそれは、余計な箱を使わずに資源ゴミの削減に貢献できた証拠でもあるのです」

未来のシューズボックス

現在使われているシューズボックスは、すべてワンボックスに置き換わるのだろうか。いや、その実現にはまだ時間がかかる。今年度の商品発送は数百万点にも及ぶ予定だが、その数量に対応すべく細かいテストと改良が必要だ。エリカ・スワンソンは次のように述べている。「これは大規模なプロジェクトですが、まだ試験段階です。ワンボックスは徐々に進化し、見た目、用途、梱包箱の削減数が改善されていく可能性があります」

また、スペース ヒッピーがこの革新的なシューズボックスを誕生させたように、ワンボックスから他の梱包習慣を一変させる新たなアイデアも生まれている。シューズのつま先に詰める紙の削減や、ビニール袋を使用したアパレルの個包装の廃止などもその一例だ。

ヘイスティングスいわく、ワンボックスからもっと大きなストーリーが派生していく。Nikeは商品梱包の削減を総合的に推進しており、この取り組みは絶えず進化している。

「Nikeはこの領域のリーダーですが、まだ第一歩を踏み出したばかりです」

エリカ・スワンソン
サステナブル製品事業担当シニアディレクター

「Nikeはこの領域のリーダーですが、まだ第一歩を踏み出したばかりです」

エリカ・スワンソン
サステナブル製品事業担当シニアディレクター

詳細については、Nike.com/Sustainabilityにアクセスし、Nikeの取り組みの各ステップと、二酸化炭素排出ゼロと廃棄物ゼロを同時に目指す新たな取り組みをチェックしよう。

写真:アリエル・フィッシャー
文:レベッカ・クーリッジ

公開日:2022年4月13日