進むだけ、未来に足跡を残すために。
Nikeアーカイブ部門
誰でも知っているNikeのロゴがデザインされて今年で50年。アイコニックなロゴの生い立ちを探ると、当初は大成功と見なされなかった意外なストーリーも浮かび上がる。
「Nike」の名を聞いて、誰でも思い浮かべるのが、あの定番のスウッシュ。世界で最もよく知られたロゴのひとつだ。高性能とスポーツ精神を表し、イノベーションと反骨心も象徴するマーク。さらには独創性や改革者のイメージも帯び、さまざまな意味を内包する存在になってきた。
イラストで描かれたり、立体的に表現されたこともある。髪の毛に剃り込んだり、タトゥーの図案にした人もいる。今は亡き偉大なデザイナーのヴァージル・アブローは、このロゴを芸術的な方法でアレンジ。デザイナーが守るべきガイドラインさえ無視し、Off-White ズーム テンポ ソーラーレッドに変形スウッシュをペイントした。ファッション、音楽、スポーツ、カルチャーの先導者たちも、Nikeとのコラボを通してロゴにアレンジを加えてきた。
それほどアイコニックなロゴだから、さぞかし開発に時間がかかったのだろう。誰もがそう想像するはずだ。人気デザイナーのチームが、細部にわたって検討を重ね、何ヶ月もの時間をかけた結晶なのだろうと。
しかし、事実はまったく異なっていた。
ロゴのデザインを請け負ったのは、ポートランド州立大学でグラフィックデザインを学んでいたキャロライン・デビッドソン。Nike共同創設者のフィル・ナイトから簡単な説明を受け、商品の生産に間に合わせるため短時間での制作が求められた。提出された案には、すぐナイト本人からフィードバックが届く。だがその内容は、いささか熱意が欠けたものだった。
デビッドソンは、さまざまなバージョンのロゴを携えてプレゼンに向かった。歴史が生まれることになるプレゼン会場は、なんの変哲もないオレゴン州の小さな会議室だ。提案の中には、ただの丸か穴のように見えるシンプルな図案も含まれていた。4つの候補が次々に却下され、残ったスウッシュが渋々ロゴに採用された。決定時にナイトが発した言葉は、今でもNikeの黒歴史として語り継がれている。
「すごく気に入ったとは言えないけど、いずれ愛着が湧いてくるかもね」
フィル・ナイト
このマークは即席で「ストライプ」と名付けられ、メキシコのグアダラハラにあるシューズ工場へ送られた。ちなみに、デビッドソンは今でもスウッシュのことをストライプと呼んでいる。期限に間に合わせることが最優先だったため、ミーティング後にロゴの微調整もなかった。シューズの生産にはこれで十分だろうと、手描きスケッチのロゴを送付したのだ。
その後に起こったことは、ご存じのとおり。スウッシュは、全世界で文化的なアイコンと目される存在になった。デビッドソンが数週間かけて薄紙に描いたデザインは、あの会議室にいた誰もが想像できないほど大きな価値を生み出したのだ。
無名の学生によってデザインされ、誰もが知るシンボルに成長したスウッシュ。上のビデオで、現在までのさまざまな秘話をチェックしよう。伝説的なロゴの未来は、あなたの手にもかかっている。NikeのInstagramチャンネルでは、ロゴの50周年を祝うお馴染みの人々が登場する予定だ。
登場したスター:エイジャ・ウィルソン、アーダ・ヘーゲルベルグ、ベベ・ヴィオ、チェン・イエー、クロエ・キム、ディナ・アッシャー=スミス、ダーク・ノヴィツキー、ディラン・オルコット、フェイス・キプイエゴン、フェン・チェン・ワン、G-Dragon、ヤニス・アデトクンボ、ミア・ハム、オクサナ・マスターズ、クイン、リカルド・ペピ、ロナウジーニョ、サブリナ・イオネスク、ソフィー・ハーン、ヴァージル・アブロー、ワン・シュアン、ユン・アン、堀米雄斗。