妊娠中の痛みで、思うように動けない時の対処法
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妊娠中の母体に、多少の不快な症状が現れるのはよくあること。でも、そんな不快にひたすら耐える必要はない。母体内で起きている現象について学び、身体を動かす効能を理解しよう。
- 妊娠中は、体力の限界までトレーニングすべき時期ではない。とはいえ、ずっと体を動かさないでいると、痛みがかえって悪化する恐れもある。
- 体幹を鍛え、腰をストレッチすることで、症状が出やすい部分の緊張を和らげられる。
- 痛みが原因で日常生活に支障をきたしているのなら、必ず医師や理学療法士に相談すること。
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*このコンテンツの目的は情報提供と意欲の向上であり、診断、治療、特定の医療に関するアドバイスを意図したものではありません。妊娠前、妊娠中、出産後の健康と安全の維持については、必ずかかりつけ医に相談してください。
妊娠9ヵ月まで16km走の継続を求められるアスリートでなくとも、出産前に起こるさまざまな痛みは疎ましいものだ。このような痛みは、なぜ生じるのか。体が変化して活動が制限されてくる時期に、どうやってアクティブな習慣を保てばいいのだろうか。
まずは大原則を理解しよう。妊娠中の運動について、誰にでも有効なわかりやすいアプローチはない。なぜなら人によっても、その日の調子によっても、体の状態はさまざまに異なるからだ。痛みが活動や睡眠や仕事の妨げになっているなら、かかりつけの婦人科医、助産師、理学療法士に相談すること。母体の異変への対処法は、専門家に聞くのが近道だ。そう語るのは、コロラドスプリングズでFEMフィジカル・セラピーを創立したローレル・プルー博士。骨盤の健康を専門とする理学療法士でもある。
だが妊娠の進行から生じる痛みに対して、体を動かすことで緩和できるくらいの元気があるのなら、習慣にしていたワークアウトを止める必要はない。実際には、適切なエクササイズによって気分が良くなり、ジムでの運動もうまく続けられる可能性がある。「ケガを恐れて運動を避ける方もいらっしゃいますが、体を動かさないと状態がさらに悪化する可能性もあります」と語るのは、フィラデルフィアのアン・ヌワブエボ博士(ボディコネクト・フィジカルセラピー創設者)。骨盤の健康を専門とする理学療法士だ。
体にちょっとした異変があり、必要な処置がわからない。そんな人は、以下のガイドを参考にしてみよう。
骨盤の痛み
症状:妊娠中に起こる痛みの多くがそうであるように、骨盤の痛み(恥骨、尾骨、腰、お尻に感じる場合もあり)は、母体に起きているいくつかの変化に起因する。歩幅が大きくなるのは、子宮の重さとバランスを取るために重心が前にへ移動しているから。そのために、これまでとは違う圧力が骨盤にかかることもあるとプルー博士は説明する。
大きくなっていく腹部を支えるため、体幹の深層部と骨盤底筋にも大きな負担がかかってくる(プルー博士談)。このような変化に、軟組織の構造に影響を及ぼすホルモンの変化も加わって痛みにつながるのだ。
対処法:骨盤を支える筋肉(臀筋や梨状筋など)を鍛えれば、骨盤にかかる圧力を軽減できるとプルー博士は言う。スクワット、ブリッジ、ランジなどは、大臀筋を鍛えるのに役立つ動きだ。またラテラルランジで臀部の回旋筋が鍛えられる。臀部の回旋筋は、脚を外側に回転させ、骨盤底筋の機能をサポートする筋肉だ。
背中から腰の痛み
症状:ヌワブエボ博士によると、妊婦は背面のあらゆる部分に痛みを感じるおそれがある。最も一般的なのが、腰や仙腸関節(背骨の下部と骨盤のつなぎ目の部分)で起こる痛みだ。重くなったお腹を支えるため、胴体と背骨の周りの筋肉にかかる負担が高まるのも原因のひとつ(ヌワブエボ博士談)。このような負担で、筋肉が疲労を起こすおそれがある。
姿勢の変化も背面の痛みを引き起こす。重心が前に移動すると、背中が丸まることがあるからだ(プルー博士談)。過剰にバランスを取ろうと尾骨を押し込むことで、背中の自然な湾曲を損なう場合もある。どちらの姿勢でも、腰の後ろ側にかかる圧力や支持力が変わってくる。
対処法:背中から腰の痛みを軽減するには、体幹を伸ばしてゆるやかに強化するポーズを試してみたい(ヌワブエボ博士談)。例えば、キャットカウ、チャイルドポーズ、バードドッグなどだ。体幹の深層部にある筋肉を鍛えると、大きくなっていくお腹を支えやすくなり、腰の負担を軽減できる。週2回以上、体幹の筋肉を集中的に鍛えるのが理想だ(プルー博士談)。なかでもおすすめはパロフプレス。機器の支点へ上半身を回したくなるのを体幹で堪えながら、バンドかケーブルをゆっくりと胸の前に押し出すワークアウトだ(詳しい方法は、プロのトレーナーによる解説を検索してみよう)。
背中から腰が痛む人は、ハイウエストのバイクショーツや着圧レギンスを履いて、疲れた体幹の筋肉を支えるのもおすすめだ(プルー博士談)。ぴったりフィットしながらも、ウエストバンドが呼吸を制限せずにお腹を支えてくれるものを見つけて欲しい(呼吸を妨げるような商品も実際にある)。
円靱帯の痛み
症状:円靱帯は、子宮の上部と鼠径部の内部を両側でつなぐロープのような構造をしている。赤ちゃんが大きくなると円靱帯が外へ伸びて、鼠径部や膣、腰の前部にけいれんや鋭い痛みが生じる場合がある(ヌワブエボ博士談)。「お腹のふくらみは円靱帯の伸びよりも急速に進行するため、体をひねったり、姿勢を変えたりすると、こうしたことがよく起こります」とプルー博士は説明する。
対処法:体をひねったり立ち上がったりする前に円靭帯を支えておけば、鋭い痛みは防げる(プルー博士談)。体をひねる前に、お腹のふくらみを「ハグする」イメージで腹筋を引き込む。あるいは実際に両手でお腹を持ち上げ、両肩と腰を一直線に揃えて体を動かすのがおすすめだ。
股関節屈筋のストレッチも役に立つ。ベッドに仰向けに寝て、両膝を曲げてみよう。右側に違和感があれば、ベッドの右側に寝て、右脚をベッドサイドにたらす。約30秒間、深呼吸をしながら、右腰の前面が穏やかに伸びるのを感じよう。まだストレッチが不十分に感じるなら、左膝を胸の方に引き上げてストレッチの強度を高めるのがおすすめ(ヌワブエボ博士談)。必要に応じて、反対側でも同じ動きを繰り返そう。
これまで続けてきたワークアウトは、どのようなルーティンで実践すればよいのだろうか。妊娠中の痛みを癒やしたいなら、ワークアウトを完全にやめてしまうのは望ましくない。かといって、この時期にはエクササイズで追い込みをかけるべきでもない(プルー博士談)。もっと頑張りたいと焦りを感じても、運動の強度、継続時間、動作範囲を抑えることで体はずっと楽になる。
どのように動く場合でも、体の声にはしっかり耳を傾けよう。それが妊娠期に守るべき最大のルールだ。違和感があれば、すぐに止めること。エクササイズは自分が気持ちよくなるために実践するもので、不快になったら意味がない。妊娠中も例外ではないのだ。
文:アシュリー・アブラムソン
写真:ビビアン・キム
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