ランニング後の腰痛:その原因と防止法
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腰痛の主要な原因を専門家が解説。対処方法を知り、快適に走ろう。
ランニングの後に体に痛みを感じるのはごく普通のこと。初心者やブランク期間から再スタートしたばかりの人だったらなおさらだ。 アスファルトを走った後に張りを感じるのは大腿四頭筋やハムストリングだけではなく、大臀筋もその衝撃の多くを吸収している。 また、大臀筋と腰は直結しているため、大臀筋が張ると、ワークアウト後に腰のこわばりの原因になることがある。
認定アスレチックトレーナー(A.T.C.)および理学療法博士であり、JAG Physical TherapyのCEOでもあるジョン・ガルーチ・Jr.は次のように話す。 認定アスレチックトレーナー(A.T.C.)、 「ランニングに伴う反復的な衝撃、路面の変化、不適切なシューズ(の着用)は、背骨と周囲の筋肉に負担をかけ、腰の緊張や不快感につながる可能性があります。しかし、だからといってすべてのランナーが腰痛を抱えているわけではありません」そして彼はこう付け加える。 「適切なテクニックとトレーニングによって、リスクを最小限に抑えることは可能です」
それどころか、ランニングが腰痛の改善に役立つ場合もある、と話すのは、理学療法博士でGait Happensのオペレーション担当バイスプレジデントを務めるミリカ・マクダウェルだ。
重要なのは、ランニング後に発生した腰痛の原因を根本的に解消することであり、それが腰痛の治療と将来的な予防の行方を左右するのだという。
ランニング後に腰痛を引き起こす原因とは?
フロリダ州にあるPalm Beach Orthopaedic Instituteの整形外科医、ジョン・ヒンソン医学博士は、ランニング自体が腰痛を引き起こすというよりも、ランニングによって生活習慣による体の弱点が明らかになることがあると指摘する。
「一般的に、腰痛は整形外科クリニックで最もよく見られる筋骨格系の訴えの1つであり、世界保健機関(WHO)も、それを世界で最も一般的な整形外科疾患と位置づけています」と彼は言う。
ランニング後に腰痛が起こる可能性のある理由をいくつか挙げてみよう。
ランニング後に腰痛を引き起こす原因とは?
フロリダ州にあるPalm Beach Orthopaedic Instituteの整形外科医、ジョン・ヒンソン医学博士は、ランニング自体が腰痛を引き起こすというよりも、ランニングによって生活習慣による体の弱点が明らかになることがあると指摘する。
「一般的に、腰痛は整形外科クリニックで最もよく見られる筋骨格系の訴えの1つであり、世界保健機関(WHO)も、それを世界で最も一般的な整形外科疾患と位置づけています」と彼は言う。
ランニング後に腰痛が起こる可能性のある理由をいくつか挙げてみよう。
1.筋肉のアンバランスと緊張
長時間座った姿勢で仕事をしていると、コア(体幹)が弱くなったり、関節がこわばったりする可能性があるとヒンソンは説明する。 長時間座りっぱなしでいることで腰部と股関節周りの筋肉が硬くなったり、萎縮したりすることもある。 これらの筋肉のアンバランスがあると、ランニングのような負荷の高いエクササイズをした際に背骨に余分な負担がかかる可能性がある、とガルーチは付け加える。
座り過ぎによって大臀筋は弱まり、ハムストリングも硬くなるとマクダウェルは言う。 彼女によれば、ランニングはこれら両方の筋肉群に大きな負担をかける運動であり、臀筋(お尻の筋肉)はちょうど車のアクセルのように「体を前に進める役割を果たす」。一方、ハムストリング(太ももの裏側の筋肉)は、歩幅ごとに繰り返される伸張(筋肉を伸ばす動き)と収縮(筋肉を縮める動き)に対応できる必要がある。 「これらの部位に、弱い、または硬いといった筋肉のアンバランスがある場合、もしくは最悪のパターンとして、弱いかつ硬い状態だと、ランニング後に腰痛として現れることがよくあります」
一方で、肉体労働の多い仕事をしている場合は、使い過ぎによるけがや筋肉の負担が増えるリスクがあり、ランニングはそれを悪化させる可能性がある。 「ランニング中に背骨や骨盤を安定させる役割を持つ傍脊柱筋は、特に筋肉の負担や使い過ぎによるけがを起こしやすい部位です」とヒンソンは説明する。
2.椎間関節への負担
背骨を支える筋肉のバランスが崩れると、椎間関節など特定の脊椎構造に負担がかかるとヒンソンは言う。 椎間関節の役割は、脊椎の骨をつなぎ、体を曲げたりひねったりできるようにすること。これらの関節に過剰な負荷がかかると、炎症を起こし、腰痛を引き起こす可能性がある。 特にランニングでは、これらの関節に「大きなストレス」がかかるとヒンソンは言う。
3.仙腸(SI)関節の痛み
体には、仙骨(脊椎の下部)と骨盤をつなぐ2つの仙腸関節がある。 ヒンソンによると、不適切なランニングフォームや腰の筋肉の衰弱は、これらの関節に過剰な負担をかけ、激しい腰痛につながる。
4.ランニングフォームの乱れ
良いランニングフォームの習得は、見た目の美しさだけでなく、痛みやけがの予防のカギにもなる。 マクダウェルが指摘しているように、片方の脚がもう片方の脚より自然に長い、右半身よりも左半身の方が筋力が強すぎるなど、生体力学的な問題がランニングフォームを歪めることもある。
「完全に左右対称の体を持つ人などいません」と彼女は言う。 しかし、この自然な非対称性が原因で、体が過剰に補正しようとすることがある。「ランニング後に腰痛を感じる場合、それはクロスオーバー歩行、片方の腰を上げる動き、あるいは不自然な腕の振り方など、ランニング中に悪いフォームの習慣が身に付いたことが原因になっている場合があります」と彼女は言う。
腰痛の原因となり得るもう1つの一般的な問題は、骨盤を後ろに傾けた状態で走ること。これは、腰が大きく反り返っているように見える姿勢だと、マクダウェルは説明する。 かかとから着地する走り方(ヒールストライク)をするランナーは、特にこの傾斜でのランニングをして負担がかかりやすい傾向がある。
マクダウェルはこう説明する。「この姿勢は体に『悪い』わけではありませんが、[特に]長距離を走っている場合は、時間が経つにつれ骨盤の姿勢によって腰椎の筋肉に負担がかかり、疲労が痛みに変わることがあるのです」
さらにマクダウェルは、このような骨盤の傾きで走るランナーの中には、体幹の筋肉を安定させることに苦労する人もいると付け加える。「つまり腰椎を過度に湾曲させて、結合組織に役割を委ねているのです」心当たりのある人は、理学療法士などの専門家にランニングフォームを評価してもらうことを検討してほしい。
ランニング後の腰痛を防ぐ方法は?
多くの場合、ランニング後の腰痛は完全に防ぐことができる。 専門家が推奨する方法は次のとおり。
モビリティエクササイズでしっかりウォームアップする
「股関節屈筋、ハムストリング、腰に重点を置いた動的なウォームアップを行い、柔軟性を高め、緊張をほぐしましょう」とガルーチはアドバイスする。 「ウォームアップは、酸素を豊富に含んだ血液を筋肉に送り込み、運動の準備を整える助けになります」とヒンソンは言い、さらにこう付け加える。
「足、股関節、腰の柔軟性を向上させるには、これらの筋肉群を対象とした動的ストレッチやモビリティエクササイズを定期的に行うことをおすすめします」 ヨガを始めるのに手助けが必要な場合は、 腰の可動性を大きく向上させるエクササイズとストレッチを理学療法士が解説をチェック。
頻繁に筋力トレーニングを行う
「プランク、デッドリフト、サイドブリッジなどのエクササイズで、体幹、大臀筋、腰の筋肉を定期的に鍛えて、脊椎の安定性を高めましょう」とガルーチはすすめる。 「支持筋を鍛えると、姿勢も改善され、腰痛の予防につながります」
マクダウェルは、ハムストリングカールやウェイトグルートブリッジでハムストリングを鍛えることもすすめている。 「大臀筋やハムストリングが強いと下半身への負担が軽減され、足や足首にかかる衝撃が軽減されます」と彼女は話す。
自分のニーズと目標に合った筋力トレーニングプログラムを組み立ててくれる専門家に相談するのもおすすめだ。
ランニングフォームを改善する方法
「頭を背骨の上にまっすぐ保ちながら、正しい姿勢をキープしてください」とヒンソンは言う。 「腕は自由に振ってください」
マクダウェルによると、もし骨盤を後ろに傾けて走る癖がある場合は、体幹を安定させるエクササイズを行い、かかとからつま先への着地(ヒールストライク)を、足中央部からつま先への着地(ミッドフットストライク)に切り替えることで改善できるという。
適切な地形のコースを選ぶ
「土や芝生のようなクッション性のある地面は、ランニング中に腰を保護するのに役立ちます」とヒンソンは言う。 「反対に、硬い路面やでこぼこの地形では、背中への負荷が高まり、腰痛を引き起こす恐れがあります」
自分の限界を知る
避けるべきは、オーバートレーニング。これはエキスパートたちが口を揃えて警告する。 「腰痛の予防は、まず自分の体力を正しく把握することです」とマクダウェルは言う。 「多くの人は、トレーニングをやり過ぎて腰痛になってしまうのです。あまりに速く、頑張りすぎるのは禁物です」
また、長い距離や高いトレーニング負荷に体が順応できるようになるまでには時間がかかるという。 「生理学的適応は、落ち着くのに4〜6週間かかるので、辛抱強く取り組むことが重要です」
ランニングシューズを買い替える
「自分の足の形や走り方に合った、十分なサポートとクッション性のある適切なランニングシューズを履くことで、背骨への衝撃を最小限に抑えられます」とガルーチは言う。 また、痛みの悪化やけがを防ぐために、300〜500マイルごとにランニングシューズを交換することを忘れないようにしよう。
腰痛の治療法
ランニング後に起こる腰痛は、通常、自然に解消する。しかし、治癒を早めるためにできることがいくつかある。
- 優しくストレッチする。 ガルーチがおすすめするのは、チャイルドポーズ、キャットカウ、股関節屈筋のストレッチで、腰と周囲の筋肉の緊張をほぐす方法だ。 こうした動きは可動域を向上させるのにも役立つ。
- マッサージを受ける。 理学療法士のような専門家に相談し、手技またはマッサージガンで筋肉のけいれんやこわばりを緩和してもらうことをヒンソンはすすめている。 「マッサージの時間や強さについては、やり過ぎに注意してください。やり過ぎると、かえって腰の痛みが増してしまうことがあります」とヒンソンは付け加える。
- 市販薬(OTC)の抗炎症薬を服用する。 腰の痛みの主な原因は炎症であるため、市販薬が特に効果的だとヒンソンは説明している。 どんな薬が自分に合っているかは、必ず医師に相談しよう。 ただし市販薬を使用するのは時々、または短期間にとどめるようにとヒンソンは注意を促す。
- 休息をとる。「ランニングシューズは、いったんクローゼットにしまいましょう」とマクダウェル。 もし足を引きずっていたり、座る、立つ、横になるといった動作をするのに痛みが伴う場合は、1日または数日の休息を取るべきだと、彼女は警告する。 このような場合は、症状が治まるまでランニングを再開してはいけない。
どんな時に診察を受けるべきか
自分の体のことを一番よく知っているのは自分。何か違和感があるときは、迷わずに医師や理学療法士にチェックしてもらおう。歩くことや日常生活の動作に支障が出るほど痛みが強くなった場合、それは助けを求めるサインだとヒンソンは言う。
腰痛は、筋肉のこわばり、組織の捻挫、椎間板の炎症、関節炎など、さまざまな問題によって引き起こされる可能性があるとマクダウェルは付け加える。 根本的な原因を特定して、これ以上悪化したり問題を引き起こしたりすることがないようにすることが大切だ。 以上の理由から、腰痛が続く場合はぜひ医療専門家に相談してほしい。 「痛みなどの問題が10日以上も続いている場合は、医療専門家に相談すべきです」とヒンソンはアドバイスしている。
文:シャイアン・バッキンガム