粘り強さは、訓練で身に付くのか

Coaching

やり抜く力の差は遺伝子に由来する。しかし研究によると、粘り強さは鍛えられるという。このスキルを磨き、終わりなき進歩を遂げよう。

最終更新日:2022年9月6日
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  • 粘り強い人々には、どこまでも目標を目指すパワーがあるが、脳を鍛えれば、誰でも粘り強さを強化できる。
  • 紙に書き出すことで、目標を明確にしよう。進捗を記録することは、勢いをキープするのに役立つ。
  • 達成するには、自分にはできると信じることが必要だ。前向きなセルフトークが進歩を遂げる大きな鍵となる。

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粘り強さは、訓練で身に付くのか

30日のワークアウトプログラムをやり遂げよう。友人と一緒に思い立って、2人でそんな目標達成を約束した。あなたはトレーニングのために早起きし、時には昼休みにジョギングもして、さまざまな進歩を遂げた。だがパートナーの友人は、1週間まったく運動していない。一体どういうことだろう?

これはモチベーションではなく、粘り強さの問題。違いはそこにある。

ワークアウトの連続記録であれ、学位の取得であれ、粘り強さとはつらく困難なことでも、根気強く目標を目指す能力だと語るのは、ハーバードメディカルスクールで神経学助教授を務めるアレクサンドラ・トラウトグロウ博士。粘り強さについてもっとよく知るために、博士は動物と人間の脳を調べる研究を実施。粘り強い人(クロスフィットの常連、毎日欠かさずヨガを行う人など)がいる一方で、ジムに行く回数よりもアラームのスヌーズボタンを押す回数のほうが多い人がいる理由を探った。

エクササイズのような厳しい課題が与えられると、中帯状皮質前方部(aMCC)と呼ばれる神経系のハブが活性化する。一部の人は、生まれつきこのaMCCが発達している。aMCCの機能が高いと、課題の遂行に必要な負荷を予測でき、体のエネルギー源を効率よく使って課題に取り組める。一方、aMCCの機能が低いと、課題の遂行に必要な労力を実際より大きく、見返りを低く予想してしまう可能性がある。

興味深いことに、目標を追いかけるパワーは筋肉と同じように鍛えられることを、トラウトグロウ博士のチームは突き止めた。「aMCCの機能、つまり粘り強さは、強化することがおそらく可能でしょう」と博士は言う。ワークアウトにどのくらいの労力が必要かを正しく判断できれば、取り組みやすくなって実際にやる可能性が高くなります。

練習で忍耐強くなる

粘り強い意志を育てる方法は、驚くほどシンプルだ。専門家によれば、とにかく簡単そうな課題を設定して、実際に目標を達成する。それを何度も何度も繰り返すことが重要だという。では実際に始めてみよう。

粘り強さは、訓練で身に付くのか

1. 明確なゴールを決めて取り組む。

「何を目標にするのか、明確なビジョンを持つことが大事。ビジョンなしでは、方向性が持てなくなりますから」と語るのは、ニコール・ガバナ博士(マサチューセッツ大学アマースト校スポーツ心理学ディレクター)。ちょっとだけ手ごわいが、十分に達成可能な目標が望ましい。達成できそうにもない大きな目標や、最初から無理そうな目標に取り組むと、思い通りにいかなくてイラ立つのが関の山だ。目標の達成に欠かせない粘り強さが、このイラ立ちによって打ち消されてしまう。だからこそ、短期的な小目標と、長期的な大目標を紙に書き出してみよう。そして目標達成まで計画に沿って取り組んでみる。

たとえば、デュアスロン(ランニング、自転車レース、ランニングを順に競うレース)を6か月後に完走するのが大きな目標であるとしよう。ロードサイクリングは、今まであまり経験がないので難しいかもしれない。だがランニングとインドアサイクリングの経験は豊富だ。まずは大きな目標を、1か月に走りたい距離や1週間で取りたい睡眠時間など、小さな目標に分けてみよう。小さい目標を積み重ね、大きな目標への道標を作るのだ。Nike Run Clubのようなアプリを使ったり、達成できたことをすべてカレンダーに記録したりすれば、自分の成長が可視化できる。成長が実感できれば、続けようという意欲も出るだろう。

2. ルーティンにする。

ワークアウトのスケジュールを立てる、なるべく決まった時間に起きられるように目覚まし時計をセットする、毎日起床後すぐに水を飲む。そんな決め事が、すべての習慣作りに役立つのだ。「何かを繰り返して自分を律していれば、体が自然に順応していきます。バイオリンの練習と同じで、新しい神経回路が成長していくからです」と語るのはパトリシア・デュースター博士。米国軍保健科学大学で、健康と軍事パフォーマンスのコンソーシアム理事を務める専門家だ。

習慣が身に付けば、ハードルが一段階下がったようなもの。習慣を身に付けるのが難しいなら、とにかく毎日、地道に取り組むこと。日々の取り組みによって、目標に向かう道を一歩ずつ前進できる。

3. 自分を励ます。

砂糖の摂取量を減らすときに、どう自問するだろう。デュアスロンを完走できるかどうか、どうやって自分に問いかけるだろう。「癖になっている思考のパターンを崩すのは、容易なことではありません。これこそが、実はかなり手ごわい挑戦なのです。大切なのは、自分の思考の悪癖に気付くこと。自分の思考が行動や感情にどんな影響を与え、どんな相互作用を起こしているのかを理解しなければなりません」とガバナ博士は言う。

粘り強い人は、不可能かもしれない目標だから挑戦しているのではない。自分が達成できることを証明するために目標を追いかけるのだ。そこで、紙に書いた目標に見合ったレベルで自分自身に語りかけてみよう。「自制心が足りない」「どうせしょぼいランナーだ」ではなく、「自分が思っているより、実は私は強いのだ」などと考えるようにする。目標をクリアするにつれ、このような思考パターンが簡単に身についていくはずだ。

4. イメージする。

たとえば週末の長距離ランを前に、気が重くなっている場合。抵抗したがるaMCCを抑え込むには、課題をやり遂げた自分をイメージすること。これが取り組む意欲につながり、自信が湧いてきて、実行するのが楽になるという調査結果もある。

そして実際に行動すれば、思っていたほど悪くないことがわかる。たとえ結果が散々でも、とにかく粘り強く努力した事実は残る。それこそが進歩なのだ。

文:ジャネット・リー
絵:グラシア・ラム

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公開日:2022年9月12日