ピクルス液は体にいい? 管理栄養士が潜在的なメリットについて解説

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ピクルスの漬け汁には筋肉のけいれんを抑える効果があるのだろうか。管理栄養士の解説を紹介しよう。

最終更新日:2022年12月8日
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ピクルス液は体に良いか? その秘められたメリットについて管理栄養士が解説

最適なリカバリーを行い、気力、集中力、代謝、気分を最高の状態に保つうえで、適切な水分補給が果たす役割は大きい。 水だけでなく、電解質を豊富に含む飲料が多数販売され、失われた水分を補給するために使用されている。 しかし、意外な液体が役に立つかもしれない。ピクルス液だ。

今のところ、アスリートのリカバリー用に作られたピクルス液飲料をスーパーで手に入れるのは難しい。そのため、ピクルスの瓶に入っている漬け汁をそのまま飲むことになる。 しょっぱくてピリッとする液体がワークアウト後のリフレッシュタイムにふさわしいとは思えないかもしれないが、一部のアスリートの間でその人気は非常に高い。 実際、これを飲むと運動による筋肉のけいれんを予防できたり和らげたりする効果がある、と言う人もいる。 ピクルス液が(脱水症に起因すると思われる)筋肉のけいれんを抑える、と個人が報告するのは構わないが、アスリートに推奨できる有効な手段かどうか確証を得るには、さらに多くの研究が必要である。

ピクルス液には筋肉のけいれんを抑える効果がある?

ピクルス液が筋肉のけいれんを和らげる、または水分補給を促すかどうかについて調査している研究は少ない。 ピクルス液はナトリウムを大量に含み、酢を主成分としていることが、ピクルス液の効果に関する仮説の根拠になっている。 汗にはナトリウムが含まれているので、ワークアウトで汗をかいたときは電解質を補給して筋肉のけいれんと脱水症を防ぐことが重要になる。

2009年の『Journal of Athletic Training』で発表されたランダム化対照臨床試験では、ピクルス液、水、そして一般的な糖質電解質溶液という3種類の液体を摂取した後、血液中の電解質がどのように変化するか調査した。 この研究の被験者は男性9人のみだったが、3種類の液体間で電解質の濃度に有意な差は見られなかった。

2010年の『Journal of Medicine and Science in Sports and Exercise』に掲載された研究記事では、ピクルス液が筋肉のけいれんの期間を短縮する可能性について着目。 この小規模な研究(やはり被験者は9人のみ)では、男性9人を水分不足の状態にして筋肉のけいれんを発生させた。 神経刺激と筋肉のけいれんの後で、被験者は少量のピクルス液、または脱イオン水(イオンが含まれない水)を摂取。

その結果、水に比べてピクルス液ではけいれんの期間が短くなり、水を摂取した場合、または何も摂取しなかった場合より早くけいれんが治まることが判明した。 興味深いことに、この研究では電解質のレベルに大きな変化は見られなかった。どうやら、筋肉のけいれんに影響を及ぼしたのはピクルス液の電解質成分ではなかったようだ。

電解質が筋肉のけいれん短縮の要因ではないのなら、他のメカニズムが作用したはずだ、と研究者は推測している。 同じ2010年の研究記事では、筋肉のけいれんに対するピクルス液の効果は酢酸(酢)の成分に起因することが示唆されている。 十分な数の研究によって裏付けられているわけではないが、この説では、酢酸の酸味が喉の奥にある神経系受容体を刺激すると推測。 それが反射を引き起こし、いわゆる抑制性神経伝達物質の活動が増加すると考えているのだ。 抑制性神経伝達物質は、神経系を通じて運ばれてくるメッセージ(筋細胞に収縮を命じるものなど)をブロックする。抑制性神経伝達物質の活動によって、筋肉のけいれんは抑制される。

ピクルス液は体にいい?

ピクルス液で筋肉のけいれんを抑えられる、という説に科学的な根拠があるかどうかはまだはっきりしていないが、興味があって試したいなら、体重1kgあたりおよそ1mlの摂取に留める、という点だけ注意しよう。 たとえば、体重70kgの成人は、約70mlのピクルス液なら摂取できる。 ピクルス液のメリットは、主に(酢のおかげで)筋肉のけいれんを緩和できるという点にあり、電解質成分が理由ではないということを覚えておこう。

筋肉のけいれんの緩和が一番の目的であれば、ピクルス液のほか、酢をベースにした他の漬物用塩水、たとえばキムチやザワークラウトの漬け汁も役に立つかもしれない。 脱水症対策の水分補給としては、ピクルス液が水より効果的であることはない、と上記の研究記事は示唆している。

先ほども説明したとおり、ピクルス液はナトリウムを大量に含んでいるので、高血圧の人は摂取を最小限に留めた方がいい。 また、胃腸障害、あるいは過敏性腸症候群の人は、ピクルス液の酢の成分によって胃腸の調子が悪くなる可能性がある。

水分補給のヒント

水分補給が目的の場合、さまざまな方法で脱水症を防止できる。 全米医学アカデミーによれば、1日に飲むべき水の量は成人男性でコップ約13杯、女性で約9杯だという(1杯=約240mlで計算)。 エクササイズで大量に汗をかくアスリートの場合、これより多い水が必要なのは言うまでもない。 十分な水分補給は、脱水症や、それに伴う筋肉のけいれんなどの諸症状を防止するうえで特に有効だ。

(関連記事:専門家に聞いた、1日に飲むべき水の量

好きな味の液体ならたくさん飲めるはず。 水を味気なく感じるなら、フルーツ(レモンやライムのスライスなど)で風味を加えてみよう。 水を飲みたくなるもう1つの工夫は、フレッシュな果汁をキューブ状に凍らせたものを水を飲むときに入れて風味を高めること。 ハーブティーや炭酸水も毎日の水分補給の目標達成にカウントされる。 スポーツに熱中している人、暑い地域に住んでいる人は、スポーツドリンクやココナッツウォーターを飲むのもいい。電解質を適切に補給できる。

結論

つまるところ、ピクルス液を飲むのは悪いことではないが、劇的な改善が見込めるわけでもなさそうだ。 筋肉のけいれんを抑える効果については個人的な体験談と非常に少ない研究によって示唆されているものの、それ以外、水分補給の面では水と効能は変わらない。



文:シドニー・グリーン(理学修士、 管理栄養士)

ピクルス液は体に良いか? その秘められたメリットについて管理栄養士が解説

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公開日:2022年12月8日