胃腸の調子を整えて健康になる
Coaching
腸にはすごいパワーがある。エキスパートが紹介する6つのヒントで、このパワーをワークアウト、リカバリーなどの向上に活用し、心にゆとりを持とう。
腸などの消化管からなる消化器系(胃腸)は、食べ物を分解するだけではない。実際には、体のすべての部位と機能に影響を与えており、健康の鍵を握っていると言っても過言ではない。
「体内と体表には、ヒト細胞の3倍もの微生物細胞があります」と、登録栄養士でロサンゼルスを拠点とするPacific Nutrition Partnersの共同創設者のジョセリン・ハリソン氏は言う。(微生物細胞にはウイルス、細菌、真菌が含まれ、ヒト細胞には血球、血小板、皮膚細胞、生殖細胞、脂肪細胞などが含まれる。)微生物細胞のほとんどは大腸に生息しており、免疫系、代謝、脳機能などに欠かせない要素だ。
微生物には良性のものと悪性のものがあり、健康的な腸には悪性微生物より良性微生物が多い。自然食品や食物繊維が豊富な高品質の食事をし、体をケアすると、消化管を正常に機能させ、全体的に良い健康状態を手に入れるための土台ができる、とハリソン氏は言う。
一方、悪性微生物が定着すると、心臓血管や体重の問題、抑うつや不安、疲労や炎症といったさまざまな症状が現れる場合がある。また、ストレスの原因となり、頭痛、肌荒れ、睡眠障害にもつながりかねない。(これらの症状によく悩まされているが原因が分からない場合は、消化器科の医師に相談してみよう。)そして、これらの問題によって、マイクロバイオームと総称される体内の微生物細胞が破壊される可能性がある。しかし、この因果関係は、良い方向にも働く。「腸の回復に取り組めば、他の器官も回復します。その逆も同様です」とハリソン氏は述べている。
研究者も、まだその仕組みの全貌を完全には把握できていない。腸に関するほとんどの研究は、動物を対象として行われている。なぜなら、腸内細菌が脳に与える影響を解明するには、その両方を直接調べなければならず、それは生きた人間の体では行えないからだ。そう説明するのは、コロラド大学ボルダー校の統合生理学部と神経科学センターで幅広く研究を主導してきたモニカ・フレシュナー博士だ。しかし、腸の力を解き明かそうとする研究者が増えれば増えるほど、腸の潜在能力を最大限に引き出す方法を詳しく調べられる。現在のところ、研究者たちは次のことを勧めている。
「腸の回復に取り組めば、他の器官も回復します。その逆も同様です」
ジョセリン・ハリソン氏、登録栄養士、Pacific Nutrition Partners共同創設者(ロサンゼルス)
- 良性の微生物を体内に取り込む。
これは雑草ではなく花を育てるための環境作りだと考えてほしいと、消化管の問題を専門とするハリソン氏は述べている。健康に良い微生物の成長を促進するための最善の方法は、果物、野菜、全粒穀物、豆類など食物繊維が豊富な自然植物食品を食べることだ。「プレバイオティクス」と呼ばれる可溶性の食物繊維は、玉ねぎ、にんにく、バナナ、全粒穀物、キクイモに含まれており、特に効果的だ。このように食習慣を変えれば、数日以内に症状の変化に気付くだろう、とハリソン氏は言う。
- 栄養バランスの悪い食事をやめる。
「加工度の高い食品や肉に偏った食事をとると、悪性微生物の成長が進んでしまいます」とハリソン氏は警告する。「冷凍ピザ、ホットドッグ、ソフトドリンクなどの加工食品を中心としたアメリカ風の食習慣と不安や抑うつのレベルに関連性があるとする、興味深い研究結果も出ています」とハリソン氏。食物繊維などの栄養素が不足すると、良性微生物が餓死してしまい、悪性微生物が勢いを増してしまうのだ。
肉を食べるなら、現地の業者が牧草で育てたオーガニックの肉(または自分の財布が許す範囲の最高品質の肉)を選び、さらに全粒穀物、豆類、野菜を組み合わせて、健康に良い食物繊維などの植物由来の栄養素をたくさん摂取するとよい、とハリソン氏は言う。
- 自分のストレス解消法を見つける。
「ストレスを受けると、体内でアドレナリンが分泌され、非生産的な微生物が生きやすい環境になってしまいます」とハリソン氏は言う。そうして悪性微生物が過度に成長すると、さらにストレスや不安が助長される場合もある。あらゆるタイプのストレスに上手く対処するには、今という時間に集中する能力を高めることが効果的だ。数分間瞑想をして心を整えたり、外を散歩したりすることを、ハリソン氏は勧めている。
- 腸内環境に良いものをプラスする。
プレバイオティクスが微生物にとっての栄養源を指すのに対し、プロバイオティクスは腸内のバランス維持をサポートする生きた良性の細菌を指す。キムチ、味噌、コンブチャなど、プロバイオティクスを豊富に含む食べ物や飲み物はたくさんある。これらを食習慣に取り入れ、定期的に摂取することで(目標は1日1回)、腸の健康状態を高めることができる。これまでのところ、消化管に関する研究ではヨーグルトとケフィア(ヨーグルトのような発酵乳性飲料)が最も頻繁に取り上げられている。そう語るのは、サンフランシスコ湾岸地帯で活動するGut Health Connectionのオーナーを務める登録栄養士のキム・カルプ氏だ。
- 十分に睡眠をとる。
「よく眠れないと、消化管内の微生物のバランスが崩れて食欲が強くなり始めます。これは、優勢となっている悪性微生物に栄養を与えることを意味します」とハリソン氏は語る。そして、そのようなサイクルに陥ると、ますます眠れなくなる。National Sleep Foundationによると、通常、成人には一晩に7-9時間の睡眠が必要だ。十分に休めていると感じても、腸のために、睡眠を疎かにしてはならない。
- 汗を流す。.
『PLOS One』に掲載された動物研究の結果によると、特に有酸素運動によって定期的に体を動かすことで、良性微生物が増加し、脳に良い影響が生じるという。腸の健康のためのおすすめのエクササイズというものはないが、1週間に適度な有酸素運動を合計150分以上(体への負荷が強すぎる場合はその半分でもよい)、さらに筋力トレーニングを2日以上行うのが効果的だとする研究結果はたくさんある。
これらは、どれも聞き覚えのあるアドバイスかもしれない。体の健康全般に良いことは、腸の健康の維持にも役立つ。これを耳に留め、胃腸、体、脳に良い生活を心がけよう。