目標達成に向けた (再) スタートの切り方
Coaching
ここで紹介するステップごとのプランを活用して、健康的なルーティンを継続させよう。
- 健康への道のりの途中で、ルーティンから外れてしまうことは避けられない。
- 自分自身に語りかける方法を変え、不完全であることを受け入れれば、自信がつき目標達成に挑戦できるようになる。
- 「TRAINEDトレーニング最前線」でアスリートから刺激をもらい、気合いが入ったら、専門家がすすめするさまざまな健康的な習慣をチェックし、自分のルーティンに取り入れてみよう。
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1. 本物の動機を特定する。
漠然とした目標は役に立たない。そう指摘するのは、ニック・ウィグノール博士。メンタルヘルスとパフォーマンスを題材にしたポッドキャスト「Minds & Mics」のホストを務める臨床心理士だ。「健康的な食事をして体調を整え、睡眠を改善するのは本当に良いこと。でもそういった大雑把で曖昧な目標は、真剣なやる気を引き出す原動力に欠けているのです」
ルーティンをしっかり定着させるには、なぜそれが自分にとって重要なのかを理解しなければならない、とウィグノール博士。まずは自分自身に問いかけてみよう。強くなりたいと思っているのなら、なぜ強くなることが自分にとって重要なのか。どんな短期的メリットや長期的メリットが得られるのか。筋力トレーニングのルーティンを継続したら、人生がどう変わるのか。そんな具体的な問いに答えることで、「強くなりたい」という目標もまた具体化してくる。「ウェイトトレーニングをすれば、力強くなって自信が持てるようになるから。自身を持てば、他の日常の課題にも取り組みやすくなるから」といった答えが出ればいい。これにより、漠然としていた目標が本物の目標へと変わっていく。
2. 行動を起こし、その情熱をキープする。
決めたことを効果的に継続させるシンプルな方法がある。それは机や壁にカレンダーを置いて、健康になるための日々のルーティンを継続すること。たとえば毎食野菜を食べる、午後10時までに就寝するという目標を達成したら、カレンダーに赤色で「X」(好みの色や記号でもOK)を書き込んでいくとやる気が出る。ウィグノール博士はこれを「大きな赤字のXマーキング戦略(BRXS)」と呼んでいる。この戦略には、以下の3つの効果が期待できるという。
第1の効果は、BRXSによって否が応でもルーティンが生活の中心に据えられること。つまり明確で一貫したリマインダーが得られる、とウィグノール博士は説明する。そして第2の効果は、「X」を書き入れる行為に報酬としての満足が伴い、病みつきになること。「見返りというのは、即時性が重要です。大きな赤いマーカーで印をつけ、その日を達成感で締めくくる。これは『30日間のエクササイズが終わったら、ご褒美にスパへ行く』といった目標設定よりもはるかに見返りが実感できます」
そして第3の効果。「ずらりと並んだ赤く美しい「X」を見ると、これまでに実践できた数々の偉業が強調され自信がつくでしょう」とウィグノール博士は言う。
3. 自分との対話を進化させる。
何か変化を起こそうとするとき、よく頭の中で自分の心の声が聞こえてくる。その口調は、大きく2つのタイプに分類されることが多い。ウィグノール博士によると、その1つは「鬼軍曹タイプ」で、戦争映画で新兵をしごく大柄で逞しい教官のような声。もう1つは「批判家タイプ」だと語るのは、サーシャ・ハインツ博士(発達心理学者)。目標設定と行動変化を専門とするマインドセットのコーチだ。体形を維持したり、食生活を改善できなければ、自分は受け入れられない、無価値だという恥辱に訴えて責め立てる声だ。
どちらも破壊的なアプローチだとウィグノール博士は指摘する。「自分自身に対してむやみに厳しくすると、過度に否定的な感情が生まれます。すると自分自身と目標との間に、より多くの摩擦が生じるのです。そういう負担を取り除けば、目指す目標に向かって驚くほどのエネルギーを発揮できるようになります」
達成したい健康上の目標を声に出して言ってみよう。そして、すぐ後に頭の中で聞こえる声の反応に耳を澄ませてみよう。「そうだ、その通り」と言ってくれているだろうか。軍曹のように大声でげきを飛ばしてはいないだろうか。あるいは批判家のように落ち込ませるようなことを言ってはいないだろうか。
もし自分の声が「鬼軍曹タイプ」か「批判家タイプ」のように聞こえたら、自問自答の口調を変えてみよう。たとえば「~すべき」「~する必要がある」「~しなきゃダメ」といった言い方を「~できる」「~したい」「~しよう」といった肯定的な言い方に置き換えるだけでいい。自分を勇気づけるような優しい、少なくともニュートラルなセルフトークを身に付けるのだ。ウィグノール博士いわく、効果はすぐに現れる。「目に見える改善がなくとも、そのような自問自答の後でルーティンを続けられたら大成功です。自分自身を見下しても、何もいいことはありません。あなたの脳はそんな真理を記憶してくれるでしょう」
4. メリットだけに狙いを定める。
定期的に走ろうと決めた場合でも、早朝に目覚まし時計で起こされるのは億劫だ。しかしワークアウトを完了するたびに味わえる達成感は素晴らしい。成功の鍵は、この後者だけに執着することだとハインツ博士は言う。ルーティンをこなしている中で、自分の脳がネガティブな反応を示すこともある。そんな瞬間に直面したら、意識的にメリット優先の方針へと引き戻すのだ。早く寝るのは難しいが、朝の目覚めはとても気持ち良い。ウォームアップは面倒だが、おかげで何ヶ月もけがをしていない、といった具合に。
これほどのメリットを忘れて、わざわざネガティブな世界に身を置く必要はないだろう。目標を達成できなかった場合に、どれほど大変な目に遭うのか考えてみてもいい。そんな見通しがあれば、あなたは「根本的な真実」に導かれる。こうした思考訓練が、生活の質を高めてくれるのだとハインツ博士は言う。
5. 自分の不完全さを受け入れる。
ルーティンを軌道に乗せる過程で、多少のつまずきは避けられない。そんな失望感に対しても、ウィグノール博士は助言を用意している。モチベーション専門家、ジェームズ・クリアが提唱する魔法の言葉は「繰り返さなければOK」。やるべきランを忘れたり、テレビを観すぎて夜更かししたりしたときも「繰り返さなければOK」と自分に言い聞かせよう。「向上心を駆り立て、ルーティン継続に効果のある言葉です。ポイントは自分への思いやり。誰でもうっかり忘れてしまうことはあるのだから、それぐらいは許してやろうと理解することです」とウィグノール博士は説明する。鬼軍曹や批判家の声に頼ることなく、この魔法の言葉を実行するにはコツがある。「ルーティンを守れなかったときは、親友に接するのと同じように自分に接しましょう。つまりミスを正直に認めつつ、寛容に励ましてサポートしようとすること。親友をただ批判するようなことはしませんよね」とウィグノール博士。
以上のアドバイスに共通するのは、完璧でなくていい、小さな変化でいいということ。でも小さな変化が積み重なったとき、非常に大きな見返りを得られる。今年は健康的な生活を誓うだけではなく、実際にそのような1年にできるはずだ。
文:マリッサ・スティーブンソン
イラスト:ダビデ・ボナッツィ
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健康になるためのルーティンについてもっとアドバイスが欲しい人は、「TRAINED トレーニング最前線」を聴いてみよう。クロスフィットアスリートのローガン・オールドリッジが登場し、エールを送ってくれる。さらに、専門家からの健康になるためのアドバイスにも注目だ。