スプリントのスピードを上げる秘訣をエキスパートが伝授
スポーツ&アクティビティ
スプリントのスキルを高め、スピードを安全かつ最大限に高める方法を紹介しよう。
速く走るだけがスプリントではない。 正しいフォームとテクニック、練習方法を身につければ、ランニングの飛躍的な上達につながる。 スプリントの上達方法についてエキスパートからのヒントを紹介する。
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正しいスプリント方法
スプリントの最適なフォームは、人によって異なる。 とはいえ、基本を身につけておけば最適なフォームを獲得するのに役立つ。USATFおよびRRCAレベルI、レベルII認定ランニングコーチのエイミー・ドレッキによると、基本は以下のようにまとめられる。
- 背筋を伸ばし、頭、首、肩がヒップと一直線になるように走る。
- 腕を前後に振る。左右斜めに振らないように注意する。
- 肘の角度は90度に保つ。
- 足は体の真下に着地するように運ぶ。大きく前に踏みだそうとしない。
- 膝を高く上げて走る。
- つま先ではなく、母指球で着地する。
スプリントのワークアウトは高強度であるため、他のワークアウトに比べて短時間で行い、長めの休憩を挟むことが多い。 鍛えるには5~10秒間のスプリントに20~30秒の休憩を挟むとよい、とドレッキは言う。 初めてスプリントのワークアウトを行う人は、2、3セットからスタートし、徐々に5、6セットまで増やしていくとよい。 筋力とスタミナがついてきたら、セット数を追加していこう。
スプリントに取り組むときは、90%の力に留めるようにしよう。「すべての力を出し切ると、筋肉に支障が生じたり、ワークアウトが終わる前に力尽きてしまうこともあります」とドレッキは言う。 初心者はやや低めの強度(80%程度)からスタートするとよい。
トレッドミルでスプリントを行う方法
トレッドミルでのスプリントのフォームについては、屋外でのスプリントのヒントの多くが適用できる。 ただし、トレッドミルに対応するためにちょっとしたフォームの調整が必要になることもある。
「(トレッドミルで)走っていると、無意識のうちにベルトのスピードに合わせて歩幅を小さくしたり腕振りを早めたりしがちです」と、ニューヨーク市でCPT兼USATF認定ランニングコーチを務めるブリアナ・ウィリアムズは指摘する。
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できるなら電動ではなく自走式のトレッドミルで走ることをウィリアムズは勧める。 自走式のトレッドミルでは、ベルトを動かすのは自分自身なので 屋外でのスプリントに近い感覚が得られる。
電動式しか使えない場合は、歩幅がやや小さくなっている可能性を意識するとよい。 歩幅が小さいことは必ずしも悪いことではない。オーバーストライディングを防止することになるからだ。しかし、屋外で走るときとは感覚が少々異なるかもしれない。
屋外でいつもワークアウトするときよりも少ないインターバル数で始め、体の反応を見てみることをドレッキは推奨する。 また、トレッドミルの前側に近づきすぎると、うっかり腕がディスプレイやハンドルにぶつかることがあるので注意が必要だと付け加える。
力強くスプリントを行う方法
スプリントのテクニックを磨くベストな方法は、もちろんスプリントを実践することだ。 そうは言っても、特定のランニングドリルやエクササイズにより、トップスピードまで加速するスキルの獲得を目指す方法もある。
ウィリアムズのお気に入りのドリルの1つがスレッドスプリントだ。 この動きを練習しておくと、地面を蹴り出してスプリントを始めた直後の初期の加速フェーズで、水平方向に向かう力を高める方法が身につく。 National Strength and Conditioning Associationによると、加速フェーズではストライドが大きくなるにつれて、体が徐々に直立していく。
スレッドスプリント
この動きを練習するには、スピードスレッドかプロウラースレッドが必要になる(これらを備えているジムは多い)。 近くになければ、工夫を凝らして自作してみよう。 ポイントは、自分の体を重い物体かスレッドとハーネスで繋ぐことだ。 後ろに置いた重い物体かスレッドを全力で引っ張って走る。 軽い負荷でスタートし、慣れてくるにしたがって徐々に重量を増やしていく。
自作が難しい場合は、レジスタンスバンドを自分のウエストに巻きつけ、背後のパートナーにバンドをしっかり持ってもらう。 背後のパートナーを引っ張るようにスプリントする。 まずは20メートルスプリントを数回やってみよう。
スレッドを押すのもスプリントテクニックの向上に効果があると、ウィリアムズは付け加える。
この場合は、スレッドに重りを乗せて負荷とし、床の上を押し進めていく。 スレッドに乗せる重量次第で、スピードと筋力の向上効果が期待できる。 ジムにスレッドがない場合は、トレッドミルを使ったプッシュワークアウトも効果的だ。
トレッドミルでプッシュワークアウトを行うには、トレッドミルの速度を1mphに、傾斜を0%に設定する。 手すり(またはコンソール)につかまり、足を使って自力でトレッドベルトを動かす。 プロからのアドバイス:ふくらはぎに効いているのを体感しよう!
ヒルリピート
ジムが近くになく、スレッドも手に入らない人や、屋外のトラックランでさまざまなメニューをミックスさせたい人は、いつものトレーニングにヒルリピートを取り入れてみよう。 上り坂でランニング、スキップ、バウンドを行うと、正しいスプリントに必要な足の推進力と筋力が鍛えられると、ドレッキは言う。
ヒルリピートをやったことのない人には、 ある程度の傾斜の坂で数回スプリントすることから始めるのを彼女は勧めている。 上り坂でランニングしてもよいし、スキップやバウンドに挑戦してもよい。 はじめの数セットでまだ元気が残っているなら回数を増やしてもよい。ただし、この種のワークアウトでは徐々に慣れていくことが大切だ。
スプリントのドリル
「私はAシリーズドリル(Aウォーク、Aマーチ、Aスキップ、Aスイッチ)と交互のバウンドを強くお勧めします。 Aシリーズドリルでスプリントテクニックを鍛えて磨き、交互のバウンドで効率的なスプリントに必要な柔軟性を鍛えることができます」とウィリアムズは言う。
さらに、Aシリーズのドリルをやっている間、棒状の小物を頭の上に置いておくとランニングの姿勢が正しくなる、と付け加える。 このドリルはウォームアップとしても使えるし、トレーニングセッション内に取り込むことも可能だ。 ウィリアムズが推奨するドリルは、以下のとおり。
- ウォームアップとして:10~20メートル走を(合計)3~6セット。 休憩の目安:1分半以上。
- トレーニングセッションの一部として:20メートル走を(バリエーションごとに)2セット。 休憩の目安:2分以上。
「トレーニングセッションでは、スプリントに乱れが見られ始めたら、休憩時間を増やすかセッションを終わらせることが重要です」と彼女は言う。 「このドリルでは高い負荷をかけることが目標です。 集中できるかどうかで全てが決まります」
スプリントを鍛える最適なウォームアップ方法
スプリントは激しい有酸素運動のワークアウトのため、力強く走るためには筋肉の適切な準備が不可欠だ。
「強度が上がるとけがのリスクも高まるので、時間を取ってしっかりウォームアップすることが非常に重要です」とウィリアムズは説明する。10~15分ウォームアップすることで、体温が上がり、血流が良くなり、神経系がスプリントに対応できる状態になる。
以下のウォームアップルーティンが効果的だ。
- ダイナミックストレッチ:一般的に、ダイナミックストレッチとはこれから行おうとしているアクティビティを模した運動を指す。 これによって筋肉と関節がスプリントできる状態になり、速く走る準備が整う。 『Journal of Strength and Conditioning Research』に掲載された2012年の研究では、ダイナミックストレッチ(ハイニーウォーキング、トイソルジャーウォーキング、ハードラーウォーキング、ヒップキックウォーキング、つま先立ちウォーキング)を1~2セット行ってウォーミングアップすると、20mスプリントのタイムが改善した。
- プライオメトリックドリル:バウンドやスキップのようなエクササイズを行うことで筋肉が活性化し、スプリントに必要なパワーとスピードが備わる。
「このような複合的な運動を行うと、ヒップ、ハムストリングス、大腿四頭筋、胸椎、腹斜筋が鍛えられ、ワークアウトの効果が向上します」とウィリアムズは言う。 それぞれ30~40秒を2セット取り組もう。
スプリントの前にやるべき3つの運動
1.ワールド グレーテスト ストレッチ
- プッシュアッププランクの姿勢になり、手を肩の真下に置く。
- 左足を左手の外に移動する。
- 体を回転させて左腕を上に伸ばす。指先を天井に届かせるイメージ。 腕の動きを目で追いかける。
- 逆の動きで最初のプランクの姿勢に戻る。
- 反対側で同じことを繰り返す。
- 交互に30~40秒ずつ繰り返す。
2.ハムストリング スイープ
- 立ったまま右足を数インチ先前方に伸ばし、かかとを地面に着ける。 足を屈曲させてつま先を床から浮かせる。
- 左膝を曲げ、腰を落とす。
- 上体を低くして、両手を床に着けて(またはできる限り床に近づけて)床を掃くように前方に向かって払う動作をする。
- 上体を持ち上げて右足を前に出して左足に揃える。
- この動作を繰り返す。
- 30~40秒行って、足を入れ替える。
3.クアッド ストレッチ ウィズ リーチ
- 立っている状態で左膝を曲げて足を後ろに出し、かかとを臀部に持って行く。 左手で左足をつかむ。 左膝は床に向ける。外側に流れないように注意。
- 右腕を頭上に伸ばす。
- 上体をゆっくりと床の方向に倒していく。 その際、右手を前に伸ばす。左のかかとを臀部に軽く引き寄せる。
- 上体が床と平行になるまで続ける。 膝が外側に流れないように注意する。
- 立っている状態に戻り、繰り返す。
- 30~40秒行って、足を入れ替える。
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