大人にテニスのサーブの打ち方を教えるには
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テニスのサーブは、極めて重要なショット。エキスパートがサーブの打ち方を基本から解説する。
テニスは必ずサーブからゲームが始まるスポーツ。 これは誰もが知っている常識なのに、サーブこそが最も難しく、最も重要なショットであるという認識はあまり普及していない。
「テニスの得点の半分は、サーブやリターンから生まれています」と話すのは、PTR認定指導者のアンソニー・エヴラード(ベルギーの元プロテニスプレーヤー)。 「ネットの向こう側から飛んでくるフォアハンドやバックハンドのショットとは異なり、サーブはバスケットボールのフリースローのようなもの。100%自分でコントロールできる唯一のショットです。 でも自分で完全にコントロールできる反面、サーブは一貫性を保つのが最も難しいショットでもあります」
サーブの動きは習得が難しい。それでもゲーム全体の質を向上させるためには、サーブを基礎から学ぶことが欠かせない。
正しいサーブのやり方を学ぶ際には、サーブを「チェックポイント」に分解してみることが役に立つ。そう語るのは、ブランダイス大学で男子テニス部のヘッドコーチを務めるクリスト・シュルツだ。
テニスのサーブの基本
トス
サーブの技について語る前に、まずはトスの重要性について触れておこう。
「トスはまず間違いなく、サーブの最も重要な要素です」とエヴラードは話す。 「適切な位置にボールを投げて、正しい場所に当てなければ、サーブはうまくいきません」
エヴラードは、テニスのゲーム前に(もちろんゲーム後も)自宅でトスの練習をするように勧めている。 ボールをトスするときは、利き手と逆の手を使用する。 右利きの選手は、左腕をまっすぐ伸ばして、時計の1時の方向に向かってトスする。やや前方に向かって、頭上にボールが来るように投げる。 左利きの選手は、時計の11時の方向を狙ってやや前方にボールをトスする。
「ボールを握った手を緩めてボールを離し、高いトスが上げられるように練習しましょう」とエヴラードは言う。
サーブをマスターするための手順
1.正しい位置から打つ
テニスの試合では、最初のサーブは右側のベースラインから打つ。
「センターマークの右側であれば、立つ場所はどこでも構いません。 サーブを打つときは、斜め前方のサービスボックスに向かってサーブします」とエヴラードは言う。つまり、相手側コート前方の小さな四角枠に向かって打つ。
2.サーブをイメージする
他の多くのスポーツと同じく、サーブもイメージが大切だ。サーブに慣れていない人には大いに役立つ。 「目標地点を見て、ボールがどこに飛んで行って欲しいかをイメージします」とエヴラードは言う。 「最初はサービスボックスにボールが入れば成功。上達するに従って、正確さも高めていきます」
またエヴラードは、ネットをやや高めにイメージしておくように勧めている。そうすることで、多少のミスをしてもネットにかからない余裕が生まれる。 次にトスをイメージして、一連のサーブの動きまでイメージする。
3.スタンスを決める
「まずは横を向き、ボールを持った手を前方に出して、つま先がベースラインと平行になるように立ちます」とシュルツは言う。 「両手を前に出してラケットとボールが触れる位置まで伸ばし、前足に体重を乗せます」
多くの選手は、ワインドアップする前にこのポジションで地面に何度かボールをバウンドさせるが、初心者はあえて難しくしない方が無難だ。
4.体重を移動する
サーブに力を乗せるには、後足から前足に体重を移動させる必要がある。
この移動は、左右に揺れる動きと異なる。だが初心者はユラユラしてしまい、タイミングを見誤ってしまいがちだ。そう説明するのは、ビーナス・ウィリアムズとセリーナ・ウィリアムズのコーチであるエリック・ヘクトマンだ。
「体を揺らさないように、まずは頭を下に向けたまま肩を回転させ、前側の腰をできる限り前方に押し出す動きに集中します」とヘクトマンは語る。 「そうすることで、自然な体重移動ができるようになります」
上達してきたら、さらに上体をしならせて、もっと大きく体重移動ができるようにしてみよう。
5.ラケットを後ろに引いて、ボールをトスする。
ラケットを後ろに引いて肘を90度に。背中の方向にラケットを下ろす。 「それと同時に、空に向かってまっすぐボールを上げます」とエヴラードは言う。 「一方の手でトスをして、もう一方の手でラケットを背中側に下ろします」
トスを上げる方の腕はしっかりと固めて、ラケットを持つ手はリラックスさせるのがコツだ。
「初心者はサーブの動きを分割して、この部分だけを繰り返し練習してもいいでしょう」とエヴラードは言う。 つまり実際にサーブを打つ前に、動きをパートごとに分けて繰り返し練習するのが効果的ということだ。 「トスをしながら、ラケットを後ろに下ろしてボールをキャッチ。ここまでの動作を繰り返してみましょう。 シャドーで動きだけをシミュレーションしていいし、ラケットを持たずに一連の動きを確認してもいいでしょう。シャドーで動くときは、細部をしっかり意識してください。 ボールが当たる場所をイメージするようにしましょう」
6.力強く内向きに振る
最後のステップは、空中の最も高い位置でボールを打つこと。 後足でグッと押しながら、ラケットを前方に向けて振り下ろす。
初心者が意識すべきことは、トスの最高到達点でボールに当てて振り切ることだとエヴラードは説明する。「これが適切にできれば、動きの終わりで体と腕がリラックスして腕が内向きに回転し、その結果としてラケットが体の前側に下りてきます」とエヴラードは述べる。 「ただし、ここまでできるようになるのは少し先の話です」
初心者向けのサーブの訓練として、エヴラードは膝を使ってサーブを打つことも勧めている。 「膝を曲げることで、高いトスを上げる必要が生じます。必然的に腕を伸ばしたままでボールを打つことにもなるため、トスがうまくできるようになるのです」とエヴラードは語る。
文:エイミー・シュリンガー(NASM認定パーソナルトレーナー)