正しいステップを積み上げる
Coaching
休止期間を経てトレーニングを再開する際は、自分の体をいたわりながら復帰しよう。大切なアドバイスをチェック。
- ワークアウトを休む期間があっても、長期的な進歩は達成できる。
- うまく再開するには、焦らずゆっくり取り組んで、自分に優しくすることが大切だ。
- 気分を上げてくれるギアがあれば、俄然やる気も湧いてくる。
もっと読む...
しばらくエクササイズから遠ざかっていても、後ろめたい気持ちになる必要はない。熱心に取り組んでいた人でも、一時的にルーティンをやめてしまうことはある。そう語るのは、コートニー・フィアロン(Nikeトレーナー)。早く以前の状態に戻したい気持ちもわかるが、生理学的な適応力が落ちると早期の復帰は難しい。怪我もしやすくなっているので、体をいたわりながら積み上げていこう。
1週間ほど運動から遠ざかっただけで、人は活力、マインドセット、運動能力の低下を実感する。たった1つのワークアウトでも、以前より苦しく感じるのだ。そう指摘するのは、アレックス・ロススタイン(ストレングス&コンディショニング認定スペシャリスト)。ニューヨーク工科大学運動科学プログラムのコーディネーターでもある。
リバプール大学の研究によると、運動から2週間遠ざかった人には、筋肉の減少、心肺機能の低下、体脂肪の増加、ミトコンドリア機能(身体のエネルギー源)の低下、健康リスクの増加が見られた。
運動から3週間遠ざかると、シンスプリントやハムストリングなどの筋肉をオーバーユース障害で痛めやすくなる。以前のフィットネスレベルに戻すには、短期間のビルドアップ期間を設けるべきだとロススタインは言う。
運動から6週間離れた場合は、「トレーニング効果の消失」を自覚した方がいい。安全かつ効果的に元のトレーニング強度へ復帰するには、ゆっくりと穏やかに取り組んでいく必要がある。
以下が確かなステップアップの手順だ。
1. 状況を客観的に評価する。
ベンチマークとなるワークアウトを繰り返すたびに、自分の進歩を測ることができる。ジョスリン・トンプソン=ルール(Nikeトレーナー)いわく、5キロが全力で走れる状態を取り戻したいのなら、最初のステップは、走ったり歩いたりしながら5キロまでの到達時間を計ってみること。以前のようにプッシュアップを楽々とこなしたいのなら、まずは何回できるか試してみよう。
かつて定期的に運動していた頃の自分自身と比べてはならない。「以前はできたのに今はできない。そんな現実を前にして気分が落ち込み、ネガティブな反応やモチベーションの低下を招く恐れがあります」とフィアロンは忠告する。記憶の中のワークアウトは、実際よりも楽だったと誤認されがちな傾向もある。だから以前より能力が低下した状態で同じワークアウトに取り組むと、余計にフラストレーションを感じて復帰の意欲を喪失しかねない。落ち込む代わりに、以前の状態をモチベーションの燃料にしよう。「一度は到達したレベルだから、もう一度そこに戻れるはずだ」と考えるのだ。
2. 計画を立てて、しっかり実行する。
無理のない計画を立てておくのが、フィアロンのおすすめだ。計画があれば、一度に多くのワークアウトに手を出し、どれも中途半端に終わる事態を防げる。仕事やプライベートで邪魔が入っても、淡々とワークアウトを続けられるだろう。
復帰したいレベルも決めておこう。ルーティンの維持だけでもいいし、特定スキルの再習得でもいい。週ごとの目標(週3回ペースの維持など)、月ごとの目標(デッドリフトの負荷アップなど)、3カ月ごとの目標(デッドリフトの自己ベスト更新など)をそれぞれ立てるのがロススタインのおすすめ。少なくとも、ワークアウト再開の1週間前には計画を立てる。以下が具体的なアドバイスだ。
- 最初の3-4週間は、低強度から中強度のワークアウトに取り組む、
- 週に1つずつワークアウトを追加し、合計6つまで増やす。
- カーディオはまず週に45分間から始めて、毎週5分ずつ増やす。自分に最適な時間に達したら、その時間内で強度を上げていく。
- 筋肉痛を経験したワークアウトを再度やってみて、48時間後に筋肉痛をほとんど感じなくなったら、それがウェイトを追加したり、動きの負荷を高めたりするタイミングだ。
3. 自分の行動を振り返る。
定期的に進捗状況を確認しよう。小さな進歩に気づけないと、すべてを投げ出したくなることもあるとフィアロンは言う。停滞期のように感じても、実際は活力が増している可能性がある。バスケットボールなら、以前より高く跳べているかもしれない。睡眠の質の改善にも気づいて欲しい。どれも立派な成果だ。次の2つの方法で、進歩を自己評価してみよう。
- トンプソン=ルールのおすすめは、毎度のワークアウト後に3つの自問をすること。上手くできたことは何か。変えるべきことはあるか。次回は何が上手くできそうか。こんな自問の習慣によって、毎回のトレーニングからポジティブな要素が引き出せる。現状を正確に把握することで、ワークアウトの改善点も浮かび上がり、前進も加速できるのだ。
- ベンチマークワークアウトを繰り返し、4-8週間ごとに全体的なフィットネスの推移を把握しよう。これはロススタインからのアドバイスだ。
トンプソン=ルールいわく、ワークアウトを続けて数週間が経つと、自分が以前のレベルに戻ってきた実感が得られる。それでも最初の1カ月は猶予期間とみなし、「生活にトレーニングの習慣を取り戻す」ことに重点を置こう。気分を上げてくれる新しいギアを探すのもいい。新しいワークアウトの時間帯を見つけ、新しいルーティンに体を慣らし、調整を重ねながら自分にとってのベストな選択肢をゆっくり探していこう。
復帰を焦って、急に付加を上げてはいけない。緩やかな上昇で自分にやさしくすることが、着実に長期的な向上を成し遂げる秘訣なのだ。
文:ロザリン・フレイジャー
絵:グラシア・ラム