幸せになるための近道
Coaching
にっこり笑った絵文字のように、人生を楽しく過ごすことはできる。簡単なアドバイスをチェックしてみよう。
なぜ自分はもっと幸福になれないのだろう。そんな釈然としない気持ちになったことはないだろうか。有名企業でのインターンや仕事、素敵なマンション暮らし、大人数のソーシャルグループなどがあれば、あなたの生活はインスタ映えしそうなものだ。何も悪いことはないのに、何かが足りない。
著名な心理学者であるマーティン・セリグマン博士は指摘する。あなたは本当に幸福なのではなく、上手に立ち回っているだけだ。楽しい区切り(新しい洋服を買ったり、スマホを上位機種に変えたり)を喜んだり、仕事や学業で成果を積み上げたりすれば幸せな気持ちになれる。だがその幸せは、つかの間の感情に過ぎない。
本当の幸福は、深い充足感を持って生きることだとセリグマン博士は言う。自分が没頭できることを見つけ、自分にとって重要な活動や人間関係に時間を費やすことで、永続的な目的意識が持てるようになる。この目的意識こそが、あなたの心を本当に満たしてくれるのだ。
「幸福感の追求は永遠に続く旅のようなもので、究極の目的地はありません」
メリッサ・グリーン博士
(認定臨床心理学者)
心を豊かにする3ステップ
自分の目的を見つけて生きるなんて、少々億劫に感じるかもしれない。最高の瞬間に到達しようと努力しても、いずれ至福の境地で年中24時間過ごせるようになる訳ではない。認定臨床心理学者のメリッサ・グリーン博士は説明する。「幸福感の追求は永遠に続く旅のようなもので、究極の目的地はありません。これさえやり遂げれば、すべてがうまくいくという種類の法則はないのです」
もうひとつ重要なことがある。本当の幸福を追求するからといって、大掛かりなイメージを持つ必要はない。生活を根底から変えたり、物欲をすべて諦めたり、毎朝何時間も瞑想したりする必要はないのだ。セリグマン博士の理論に基づいて、ただ中心に据える行動を実践すればいい。
1. 瞬間的な喜びをもっと増やす(ただし、ほどほどに)。
仕組み:何か楽しいことをすると、瞬時に気分が高揚するとグリーン博士は言う。気分を上げるドーパミン(神経伝達物質)が分泌されるからだ。懸垂をマスターしたり、朝のコーヒーを屋外で飲んだり、新しいミニ観葉植物を手に入れることでも効果がある。
昇進や結婚のように、頻度は低くても大きな出来事がある。だがそれよりも、日々の小さな喜びや幸せの瞬間を多く体験した方が、気分を高揚させる効果が長続きする。「だからこそ、小さな喜びを十分に味わうことが重要なのです」とグリーン博士は言う。
試してみる:自分を喜ばせるコツは、もうご理解いただけたことだろう。大事なのは、常に際限なく新しい喜びを求めるモードにならないことだ。グリーン博士いわく、このモードに入ると現在の喜びに対する満足感が低下する。行動をどんどん活発化したり、テレビをアップグレードしたり、次のパーティーに期待したりするのが喜びの源なら、もっと自分の内面を見つめ直すべきだ。そう助言するのは、ポッドキャスト「Let's Talk」のホストでもあるアーロン・ワイナー博士(心理学カウンセラー)。次のステップでは、幸福についてもっと深く掘り下げる。
2. 全力で取り組める活動を見つけよう。
仕組み:食事やショッピングは楽しい。でも、自分が夢中になれる活動の方が満足感は大きい。夢中になっている時間は、何かに没頭している状態だ。たとえば長距離を走っているときや、面白い本を読み耽っているときや、ヨガに集中しているとき。どんな気分かと尋ねられたら、「幸せ」だとは答えなくても、心の平穏を感じているはずだ。『Joy From Fear』を著したカーラ・マリー=マンリー博士(臨床心理士)はそう語る。フロー状態にあるあなたは、100%集中しているため、脳がおしゃべりを止めているのだ。
試してみる:1日や1週間のどこかで、自分が何かに没頭している瞬間を見つけてみよう。リモート会議などではなく、何か楽しいことをしている瞬間だ。以前はやっていたのに挫折したことや、興味が少し薄れてしまったことは、振り出しに戻って計画を練り直した方がいい。「まだ止めたくないと言い切れるようようなら、すぐにでもその活動に戻って没頭できるでしょう」とマンリー博士は言う。
まずは、自分の強みを活かせる活動から検討を始めよう。「エネルギーを注いだ分だけ、活動にも熱が入るものです」とマンリー博士は言う。学ぶプロセスが好きなら、新しいスポーツを始めてみよう。リビングルームいっぱいの観葉植物を育ててもいいし、地域の農園で区画を買って小さな菜園を作ってもいい。美しいものを見るたびに写真を撮ってしまうタイプなら、地元の美術館や博物館を訪ね歩いたり、写真教室に参加したりしてみては?
それでも自分の楽しみが見つからない場合は、パートナーや友人に聞いてみるのもグリーン博士のおすすめだ。自分が完全に没頭していたり、幸せな気分に浸っていたりするように見えるのは、一体どんなときなのか。自分が没頭している瞬間、何か有意義なことを経験している瞬間、上手に何かできた瞬間を見つけて、日記に書き留めてもいいだろう。日記に書いたら、そんな瞬間が生まれた原因を振り返る。研究によると、このような日記の振り返りだけでも幸福感が増す。そして時間が経つごとに、自分の深い関心について知るヒントにもなる。
3. 他人の役に立つ。
仕組み:本当の充実感は、世界に意味を見出すことで得られるとセリグマン博士は言う。具体的には、自分が重視している大きな価値、つまり感謝、正義、勇気などの美徳を体現するために生きることだ。
自分の行動が変化をもたらすと信じられることで、その行動から意味が生まれる。「思いやりの心を持って行動し、積極的に人を助けること。これは自分の行動に意味を見出し、確実に喜びを得られる方法のひとつです」と、ワイナー博士は言う。自分が行動する代わりに、正しいと信じる考え方や活動を支援する方法もある。「共通しているのは、自分自身より偉大なものに貢献するという感覚です」
試してみる:意味を見出す方法は、いくらでもある。ボランティア、やりがいのある仕事、政治理念の支援、精神世界の探求。ワイナー博士いわく、重要なのは自分が関心を持っていることや、得意なことに合致する対象を見つけることだ。
仕事では、中心的な価値(職場の多様性や公平性、環境問題への取り組みなど)が自分と一致する会社や、心から信じられる目標を目指して働ける会社を探せばいい。そしてプライベートの時間には、どこにエネルギーを注ぐかを戦略的に決め、情熱を保ちながら取り組んでいくことが重要だとワイナー博士は語る。
もしあなたが環境問題に関心があるリーダータイプなら、近隣の公園の清掃活動や野生動物のための募金活動を組織することに情熱を見出だせるだろう。人と話をしたり、さまざまな意見を聞いたりするのが好きなら、困窮者のために食事を配達する活動に参加してもいい。自分が関心を持っている問題への認識を広めるため、地域での普及活動に参加するのもワイナー博士のおすすめだ。
現在の自分から見れば、それが大それた行動に思える人もいるだろう。ならばとにかく何かにイエスと言ってみよう。ダンベルに取り組んだり、新しい趣味を始めたり、ボランティア活動に参加したりすることでもいい。後悔する可能性は小さいはずだ。かなりの確率で、幸せな気分になれると言い切れる。
文:マリーグレイス・テイラー
絵:ケシア・ガブリエラ