けがを防ぎながら走行距離を伸ばす方法
Coaching
ランニングとの付き合い方をレベルアップしたいあなたへ。このガイドラインを参考にすれば、きっと自信を持って走り続けることができる。
- ランニングを始めたばかりのランナーは、早い段階で無理を重ねてしまうことがよくあるが、そんなことをしていると、そのうち怪我をしてランニングを中断することになる。
- 良好な体調を保ちながら、徐々に距離を伸ばすための指針が必要なら、簡単な自己評価法を利用するのがおすすめだ。
- NRC で自分のランを記録して、理想の範囲をキープしよう(もちろん、その方法も伝授する)。
知っておくべきポイント
ランニングで感じるときほどの幸福感はめったにない。ルーティンの持続や進化への気持ちの高まりは突然始まる。だが、文字どおり、急いては事を仕損じる。本当の意味でランナーとして成長したければ、無理をせず、忍耐強く取り組まなければならない。
「ランナーが犯す最大の過ちの1つは、急激にランニングの距離や回数を増やして過労と衰弱を招き、怪我をしてしまうことです」と言うのは、イリノイ州のNorthwestern Medicine Regional Medical Groupでスポーツ医学の医師を務めるスティーブン・メイヤー博士だ。
ランニングは高インパクトのアクティビティだ。全体重を一度に片足に乗せながら繰り返し前に運んで行く間、体の筋肉、関節、骨、結合組織は路面から衝撃を受け続ける。オーストラリアのブリスベーンにあるGabbett Performance Solutionsの生理学者であり、応用スポーツ科学者でもあるティム・ガベット博士は、体の組織が鍛えられて衝撃に耐えられるようになる前に、毎日走り始めたり、走る距離を急に2倍にしたりすると、組織が壊れ始める可能性があると言う。
体の組織が破綻し始めても、気づかないかも知れない。それは、心肺機能(心臓と肺の機能)の方が筋肉より早く向上するからだとメイヤー博士は言う。数回の3マイル走を5マイル走に伸ばせるぐらいコンディションが整ってきたと思っていても、シンスプリントやハムストリングの痛みに悩まされることがある。そうなると、それまでの進歩も台無しだ。
過去の武勇伝は忘れる
もっと距離を伸ばそう、スピードを上げよう、頻繁に走ろうと思うこと自体は悪くない。週に3回、いつも同じ5キロを走り続けるのは、あまりにも退屈だ。自信を持って進歩したければ、少しずつ着実に自分を追い込みながら、ストレスと負荷を増やすことが重要だとガベット博士はアドバイスする。
距離を伸ばしたりペースを上げたりするなら、毎週10%以内に留めるのが良いという考え方が広く知られているが、この「10%ルール」には科学的根拠がないことが判明している。メイヤー博士によると「必ずしも怪我を予防できるとは限らない」。実際、オランダのフローニンゲン大学で行われたある研究では、週に50%までトレーニングの負荷を増やしたランナーが怪我をする度合いが、10%ルールを守ったランナーと同程度だった。さらに心強いことに、デンマークのオーフス大学の研究では、初心者ランナーが週に平均20-25%負荷を増やした場合、怪我を回避することができた。
進歩の方法をパーソナライズする
それでは、どうやれば進歩できるのか。ガベット博士が推奨しているのは、パーソナライズされたガイドラインを使うことだ。彼は、自分が担当するアスリートたちにもこの方法を採用している、このガイドラインでは、急性-慢性負荷比が考慮される。堅苦しく聞こえるかもしれないが、考え方は実にシンプルだ。「今週どれだけ走ったか[急性期]と過去4週間にどれだけ走ったか[慢性期]を考慮するのです」と博士は説明する。まだ4週間の記録がない場合、最初の1ヶ月は比較的楽に感じられる距離を走って基礎を固めてから、この比率を使って距離を伸ばしていくと良い。
「これはフィードバックサイクルです」とガベット博士は続ける。毎週、距離を伸ばして負荷を増やすたびに、直後の気分(「あの坂道を登りきった」など)と48時間後の気分(脚がとても痛い」など)をチェックする。これら両方の気分をベースにすれば、次回は負荷を増やすか、それとももう少しリカバリーに時間をかけるかを判断するのに十分な情報が得られると博士は言う。
たとえば、これまでの数週間、週に10マイル走っていた人が、今週は15マイル走ったとすると、その負荷は1.5倍になる。それを辛いと感じたり、厳しいと感じたりした場合は、あと1週間15マイルを走ってみるか、10マイルに戻すかを考えるだろう。しかし、気分良く走れた場合は、翌週も同じ比率で走る距離を増やしてもかまわない。ただし、どんなに良い気分だったとしても、1.5倍以上に増やすのはやめたほうが良い。研究によれば、急性-慢性負荷比が0.8-1.3の範囲内であれば怪我のリスクは低く抑えられているが、1.5倍を超えると大幅に増加することがわかっているからだ。
自信を持ってさらにランニングを続けていくために不可欠なものがもう1つある。それは筋力トレーニングだ。筋力トレーニングでは、特に臀部と体幹を鍛えよう。研究によれば、こうしたエクササイズは、骨、腱、筋肉を鍛えて、ストレスに強くするので、よくある酷使による怪我を防ぐことができることがわかっているからだとメイヤー博士は言う。1日おきにランニングをして、間の日を筋力トレーニングとリカバリーに充てると良いだろう。
辛抱強く取り組むこと(または考えること)が得意ではなくても、どこかが痛んだり問題を抱えたりすることなく、向上していく自分を目の当たりにすれば、辛抱強くあることも悪くないと思えるようになるだろうし、毎日鍛えられていく自分の体にも改めて感謝の気持ちが芽生えるのではないだろうか。
文:アシュリー・マテオ
イラスト:ライアン・ジョンソン
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