睡眠が免疫システムに与える影響
Coaching
体は、侵入者から守るための抗体を睡眠中に作り出している。ここで紹介する3つのヒントで睡眠の質を上げ、健康をキープしよう。
ストレスの多い状況の中で健康を維持するというと、少し横になってひと眠りすることを考えるかもしれない。実のところ、そうすべきなのだ。
何もせず、ただ横になっているだけなのだが、睡眠は免疫システムを強化する上で重要な役割を果たしている。
免疫システムのしくみ
ここでちょっと生物学の復習をしよう。免疫システムは、細胞とタンパク質で構成される複雑なネットワークであり、有害なウイルスや細菌に対する防御を体内で最初に、そして最善の方法で行うものだ。免疫システムを強化するには、そのネットワークに直接影響を与える他の健康の側面(この場合は睡眠)に注目しなければならない。
「睡眠中に免疫システムが働いていることを示す強力な証拠があります」カリフォルニア大学サンフランシスコ校の精神医学および行動科学の准教授を務めるアリック・プレイサー博士は語る。人間は適切な睡眠が取れていないと、病原体から攻撃されやすくなってしまうという。
実際、プレイサー博士の研究チームは、風邪のウイルスを被験者の鼻の中に直接吹きかける実験を行っている。この研究では、平均睡眠時間が6時間以下の人たちは、1日に平均して7時間以上眠る人たちと比べて、風邪をひく可能性が4倍以上高いことがわかった。
睡眠不足がこれほどまで免疫システムに影響を与えるのはなぜなのか。まず、十分な睡眠が取れないと、侵入者を探して破壊する戦士の細胞、T細胞の産出量が減ってしまう。T細胞は起きている間も作られているが、十分な睡眠が取れていないと、体はT細胞を作ることよりも損傷した箇所の対応に多くの時間を費やす場合がある。
「睡眠中は、体と脳がその日に集めた情報を統合し、記憶と抗体を生み出す時間」
ローガン・シュナイダー医学博士
スタンフォード大学睡眠医学の客員臨床助教授
さらに、こんな事実もある。スタンフォード大学睡眠医学の客員臨床助教授を務めるローガン・シュナイダー医学博士は、「睡眠中は、体と脳がその日に集めた情報を統合し、記憶と抗体の療法を生み出す時間」だと語る。抗体とは特定の病原体を標的とし、それを記憶するためだけに生み出されたタンパク質だ。たとえば水ぼうそうなど、一度かかると免疫ができるのは、この抗体のおかげなのだ。
シュナイダー博士によると、これによって多くの人にインフルエンザの予防接種が効かない理由を説明できる可能性があるという。博士はこの関係性を裏付ける研究を示し、「睡眠不足の状態だと、ワクチンに対する免疫反応が低い傾向があることに気付きました」と説明する。
周知の事実かもしれないが、ほとんどの成人は7時間以上の睡眠を必要とする。だが、時間だけでなく質も重要だ。「今後より効果的に戦えるよう、感染の短期記憶を長期記憶に変えるには、熟睡状態(ノンレム睡眠)が必要になります」シュナイダー博士は語る。
睡眠の質を高め、より深く眠るためのヒントがほしい場合は、以下で紹介する3つの方法を試してみよう。
01. 汗を流す
エクササイズは質の高い睡眠を促進するための最も効果的な方法だとシュナイダー博士は語る。その理由の1つ目は、特に早い時間帯に行うことで、疲れて眠りやすくなること。そして2つ目は、回復効果のある深い眠りを促進することが挙げられる。アメリカ心臓協会が推奨するように、週に150分以上の中程度の有酸素活動と週に2日以上の筋力トレーニングを目標にしてみよう。ただし、やり過ぎは禁物だ。ある研究では、過剰なトレーニングが炎症を引き起こし、免疫細胞が侵入者に十分に対応できなくなることが示唆されている。
02. アルコールの量を減らす
お酒を飲むと眠りにつきやすくなるかもしれないが、睡眠の質は低下してしまう。研究結果によると、アルコールには休息(睡眠ではない)と関連した脳のパターンを活性化させる効果があるため、本当の意味で回復につながる睡眠を妨げてしまうという。法定年齢に達していて、どうしてもお酒が飲みたい場合は、少なくとも就寝の2、3時間前に一杯だけ飲むようにしよう。また、食事と組み合わせるのもポイントだ。こうすれば体がアルコールを代謝でき、影響を最小限に抑えられるとシュナイダー博士は語る。
03. 明らかに睡眠の妨げになるものを避ける
夜中に頻繁に起きる、または長時間起きてしまうと、睡眠サイクルの最も回復効果がある段階に入りにくいとシュナイダー博士は語る。トイレに行くために夜中に起きてしまうのを避けるには、ベッドに入る2、3時間前までに食べるのを(できれば水を飲むのも)やめておこう。
結局のところ、健康な状態を保ちたい場合も、何らかの病気にかかってしまった場合も、睡眠はあなたの一番の味方になる。病気になってしまった場合は、おそらくいつもより疲れを感じているから尚更だ。体の声によく耳を傾け、自分にとってベストな選択をしよう。