専門家に聞いた、1日に飲むべき水の量
食事
本当に1日8杯もの水を飲む必要があるのだろうか?
どんな人にでも当てはまる事実は、人体の半分以上が水でできているということ。 米国地質調査所(USGS)のウォーターサイエンススクールによると、人体の最大60%は水分であり、極めて重要な臓器には特に水が多く含まれている。 そのため、水分は常に補給しなければならない。 しかし、水分補給は何のために必要なのか? 実際のところ、1日にどれくらいの水を飲めばよいのだろうか?
皮膚、筋肉、そして精神に至るまで、全身の機能を維持するためには、毎日一定量の水を摂取しなければならない。 水分補給には、以下のようなメリットがある。
· 消化の改善
· 体温調節
· 脳による重要なホルモンや神経伝達物質の生成
· 脳や脊髄に対する衝撃の吸収
· 細胞の成長と増殖
· 全身への酸素の運搬
上記の項目は、多くがアスリートのパフォーマンスの向上にも関係している。 たとえば、発汗による体温調節がエクササイズ中のオーバーヒートを防いでくれる。 衝撃吸収効果により、高負荷トレーニングのHIITでも脳や脊髄が保護される。 水によって筋細胞に栄養が運ばれ、老廃物が取り除かれる。その結果、エネルギー効率が高まって筋力の増強にもつながる。
これらのメリットをすべて享受するためには、食事、飲料、水などから毎日十分な水分を摂取するということだ。 さらに詳しく見てみよう。
1日に必要な水分量はどのくらいか?
ニュージャージーのケルシー&クーパーズ・キッチンで管理栄養士を務めるケルシー・サックマンによると、水分補給の必要性はさまざまな要因で高まる。日常的な活動だけでも、女性は1日11.5杯分、男性は15.5杯分に相当する水を摂取することが推奨される。
「一日を通して、何度も水を飲み続けることがとても重要」とサックマンは言う。水を1-2回がぶ飲みして必要量をまかなおうとすると、裏目に出る可能性があるのだ。 水分を摂り過ぎて、体内のナトリウム濃度が著しく低下する低ナトリウム血症になることは稀だが、それでも一度に大量の水を飲む行為はリスクを伴う。 体が一度に吸収できる水分量は限られているため、電解質のバランスも無駄に崩れてしまう。
サックマンいわく、朝一番、食事中、食間、特に喉の渇きを感じたときに水分補給をするのが賢いやり方だ。
水分補給のタイミングは?
喉が渇いているときや、サックマンが推奨する上記の時間は、明らかに水分を補給すべきタイミングだ。 だが水分補給が必要なタイミングは他にないのだろうか? 以下の4つの要素に基づいて、水分補給の習慣を全体的に見直そう。
1.運動
汗をかくような運動をする場合、水分を多めに摂って、失われる水分を補う必要がある。 サックマンいわく、ワークアウト前後やワークアウト中の水分補給は重要だ。 ハードな運動を1時間以上続ける場合、スポーツドリンクを飲めば汗で失われた電解質を補える。
喉が渇くのは脱水症状の兆候であり、疲労感や頭痛などの副次的な影響が生じる可能性がある。 ワークアウト中に体内の水分を保つため、運動の2時間前に355-475mlほどの水分を摂り、ワークアウト中も15-20分ごとに150-300mlの水分を摂る。こうすることで、発汗により失われた水分を補うのがサックマンからのアドバイスだ。
2.環境
高温や多湿の状況下では汗をかきやすくなるため、さらに水分補給が必要になる。 また、高地では脱水症状が生じる可能性が高まる。高地トレーニングの際は、より多くの水分を補給できるよう準備しておかなければならない。 さらに、冬は寒いため発汗しづらく、速乾性に優れたウェアを着ていると汗をかいている自覚が少ない。そのためかえって脱水症状を起こす危険性が高いとサックマンは注意を促している。
3.健康状態全般
4.その他の重要な兆候
メイヨー・クリニックによると、脱水症状は年齢に関係なく起こる可能性があり、軽い病気でもそのリスクは高まるため、初期の兆候を把握してあらかじめ水分を補給できるようにしておくことが重要だ。 軽度から中程度の脱水症状なら、通常は多めに水分を摂れば回復できる。 以下の脱水症状の兆候に気を付けよう。
· 濃い黄色の尿
· 疲労感
· 排尿頻度の低下
· めまい
· 極度の喉の渇き
Food Addiction Solutionsの栄養健康コーチであるジョアン・ケント博士によると、脱水症状によって脳の飢餓中枢と口渇中枢が活性化する。 あまり知られていない脱水症状の兆候として、 無性に甘いものを食べたくなるのも要注意だ。
この兆候は、特にワークアウト後に表れる。筋肉に蓄積されている炭水化物が消費され、体内のグリコーゲン(エネルギー源として体内に蓄えられている炭水化物)が減少するためだ。 そうすると、手っ取り早く炭水化物を補給できる食べ物や甘いものを食べたくなるのだとケント博士は説明する。 脱水症状が悪化すると、この欲求はさらに強くなる。
錯乱、色の濃い尿、血便や黒色便、24時間以上の下痢などは深刻な脱水症状の兆候だ。このような兆候が表れたら、できる限り早く医師の診察を受けよう。
水を飲む以外の水分補給方法
水分補給の定番は、水を飲むこと。だが他にも水分を摂る方法はある。 水分は以下のようなものからも摂取できる。
· ハーブティー
· 糖分ゼロのスポーツドリンク
· 植物性ミルク
· 牛乳
· 果物
· 野菜
コーヒーなどのカフェイン飲料は、長年にわたって脱水症状を悪化させる懸念が寄せられてきた。そのため水分補給の方法として推奨すべきか数々の議論がなされてきた。 だがこの懸念が見当違いである可能性もわかってきた。 学術誌「PLoS One」に掲載された2014年の研究結果によると、毎日の運動にあわせて適量のコーヒーを飲むことが脱水症状の原因になるという証拠はなく、むしろ水と同等の水分補給効果があるという。
だがアルコールについては議論の余地はない。 アルコールには利尿作用があるため、脱水症状のリスクが高まることが研究で示されている。カクテルを飲むと排尿が増えるため、水分補給が困難になるのだ。 そのため、夜に数杯お酒を飲む予定があるなら、予め水分を蓄えておき、お酒の合間にも少しずつ水を飲み、翌日も水分補給をするのがサックマンからの助言だ。
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アルコールはさておき、人体に必要な水分の約20%は食べ物や水以外の飲料から得られている。 サックマンによると、電解質と水分を自然に補給するのには、バナナ、じゃがいも、すいか、ほうれん草、ブルーベリー、ブロッコリー、グレープフルーツなどが最適だ。
ワークアウト後のアスリートには、チョコレートミルクもお勧めだという。 学術誌「European Journal of Clinical Nutrition」(欧州臨床栄養学ジャーナル)に掲載された2018年のメタ分析では、チョコレートミルクに他のリカバリー飲料と同等以上の効果があることが分かった。
結論
水分補給を数学のように考える必要はない。 一日を通して水や食べ物を摂取する意識を高め、運動量に応じてその回数を増やすこともサックマンは勧めている。
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