ワークアウトに本当に必要な時間とは エキスパートの解説

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運動に割ける時間がどんなに限られていてもかまわない。ワークアウトはごく短時間のものも、また長時間のものも、それぞれ健康に多大な効果をもたらす。

最終更新日:2022年7月27日
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ワークアウトに本当に必要な時間とは

やる気満々でワークアウトの計画に臨んだとしても、日々の生活が忙しく思うようにいかなくなるときがある。 しかしある調査によると、ほぼどんな長さのエクササイズでも健康に大きなメリットをもたらすことが示されている。

「身体的にアクティブな生活を送ることが健康で幸福な人生につながるということは実証済みです」と話すのは、米国運動評議会(ACE)と全米スポーツ医学協会(NASM)の認定を受けたパーソナルトレーナーで、インストラクター団体のAFAA認定グループエクササイズインストラクターを務めるデニス・セルバンテス。

「運動をすると、心臓病、2型糖尿病のような慢性疾患や、一部のがんにかかるリスクが下がります」と説明する。

さらに喜ばしいニュースは、汗をかく時間の長短にかかわらず、短時間と長時間の両方のワークアウトの効果が実証されているという点だ。

長時間のワークアウトに取り組むメリット

「フィットネスの目標やエクササイズの経験によって、長時間にわたる各々のワークアウトの意義は他人とは違うものになるでしょう」と話すのは、エイミー・ニコテラ。 理学修士で、AFAAのパーソナルトレーナーとアメリカスポーツ医学会(ACSM)認定の運動生理学者としての資格を持ち、Virtual Fitness Studioを運営している。 ニコテラによれば、長時間のワークアウトとは、一般的に、平均して1時間ほどの長さを指す。

「持久力を鍛えたいアスリート、あるいは自転車で100マイル(約160キロ)を走破するセンチュリーライドや初マラソンを目指してトレーニングをしたい初心者は、ランニングや自転車のような心血管系を鍛える長時間の運動に取り組めば、パフォーマンスの向上を期待できます。 こういった目標を目指すのなら、2時間かそれ以上、トレーニングに励む必要があるでしょう」と彼女は話す。

長時間のワークアウトに取り組んで効果を上げるには、短時間のワークアウトよりも低い強度で行う必要があると説明するのは、体育学修士で、NASM認定のパフォーマンスエンハンスメントスペシャリストでもあるパーソナルトレーナーのショーン・ラフ

「このすべての根拠は、運動代謝学と生体エネルギー論にあります。運動によって起きる変化と必要性に応じて、さまざまな化学反応でエネルギーが変換される仕組みを調べる分野です」

  1. 1.慢性疾患予防に効果を発揮しうる長時間ワークアウト

    British Journal of Sports Medicine』で発表された16の研究のメタ分析と系統的レビューでは、30〜60分の筋力強化ワークアウトと重い疾患のリスクの低下に関連性があることが明らかにされた。 このレビューでは、長時間の筋力強化エクササイズ(レジスタンストレーニング、筋力トレーニング、ウェイトトレーニング、自重トレーニングなど)に取り組んだ成人(19〜97歳)において、循環器系疾患やがんをはじめ、あらゆる死亡リスクが10〜20%低下し、さらに1時間のセッションになると糖尿病のリスクが下がることが示された。

    ただし、この論文の著者は、最適な運動量を知るためには、さらなる調査が必要だと補足している。

  2. 2.気分の落ち込みを軽減しうる長時間ワークアウト

    デューク大学の医学研究者が2021年に発表したレビュー論文によると、週に150分の運動が、メンタルヘルスに投薬治療と同等のプラスの効果をもたらすという。 このレビュー論文で言及されている他の追跡調査では、体を使う活動レベルが高いと、抑うつ状態や不安障害に陥るリスクが低下することが示されている。

  3. 3.寿命を延ばしうる長時間ワークアウト

    40万人を超える成人を対象とした2020年のコホート研究によると、長時間のワークアウト習慣は寿命をより長くすることにつながるという。 中程度の負荷の運動を週に150〜299分、または、高負荷の運動を週に75〜149分行う人は、まったく運動をしない人と比べて、死亡リスクが低い可能性があることがこの研究で示された。

短時間のワークアウトに取り組むメリット

短時間のワークアウトとは、10〜30分程度を指す。

「時間に追われているとしても、たとえ10分でも運動を続ければ、効果はあります」とニコテラは言う。 身体面の効果だけではない。精神面にも大きなメリットがある。

ニコテラはこう続ける。「短時間のワークアウトに積極的に取り組めば、運動を継続し、毎日の習慣にしていくことができます。 要するに、たくさん体を動かすことです。時間や場所にかかわらず、可能な限り長時間、体を動かすことが肝心です」

  1. 1.フィットネスレベルが向上する短時間ワークアウト

    International Journal of Exercise Science』に掲載された2021年の研究では、運動習慣のない成人を2つのグループに分割。一方のグループは運動を行わず、もう一方は5種類各1分の運動(バーピー、ハイニー、スプリットスクワットジャンプ、ハイニー、スクワットジャンプ)を組み合わせ、間に60秒ずつの休憩を挟む計11分間のワークアウトに取り組むよう指示された。後者は6週間にわたり、この11分間のワークアウトを18回行った。

    この調査の結果、短時間ワークアウトに取り組んだ参加者は、VO2 Max(最大酸素摂取量、運動中に体が取り込める酸素の量)が平均7%向上したことがわかった。

  2. 2.筋肉量を増やせる短時間ワークアウト

    学術誌『Medicine and Science in Sports and Exercise』に発表された2020年の研究では、負荷の高い4秒間のエクササイズによって筋力がつき、さらに長時間座ったままの生活によって生じるダメージを修復する効果も期待できることがわかった。

    対象は年配の成人(50〜65歳)で、週3回、15分のインターバルワークアウトに取り組んでもらって調査した。 短いワークアウトの中で、4秒間の全力での自転車こぎを、15〜30回繰り返してもらった。 8週間後、参加者には太ももの筋肉量と除脂肪体重の増加が見られた。さらに酸素消費量の増加と動脈硬化の改善も見られ、循環器系の健康の向上が示された。

  3. 3.心臓を健康にする短時間ワークアウト

    短時間のワークアウトは心臓に効果があるということも明らかになっている。 『PLoS One』に掲載された研究によると、肥満または太りすぎとされる成人が、30分のワークアウトを週1回以上行うと、血圧やVO2 Maxといった、心血管代謝の健康の指標となる数値に改善が見られた。 ポイントは? インターバル。3分間のハードな運動の間に2分間のリカバリーを挟むことで、効果が現れたのだ。

結論

これまで述べてきたように、長時間と短時間のどちらのワークアウトにも多大な効果が期待できることが、さまざまな研究で明らかになっている。 長時間のエクササイズはメンタルヘルスの向上や長生きにつながり、短時間でも負荷の高いワークアウトは筋肉量の増加と循環器系の健康促進に効果的。

「ルーティンの中で、短時間で追い込むワークアウトと長時間のトレーニングを定期的に切り替えると、生き生きと健康に暮らせる、回復力の高い体づくりができます」とニコテラはつけ加える。

自分の目標に合ったワークアウトの長さを知るために、目標を追求する上で問題がないかどうか、まずはかかりつけの医師や資格を持つ専門家に相談してみるとよいだろう。

文:エイミー・カペッタ

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ワークアウトに本当に必要な時間とは

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公開日:2022年4月21日