Nikeコーチが解説する、最適なランニングペースの見つけ方
スポーツ・アクティビティ
ペースに変化をつけると、けがの予防やパフォーマンスの向上といった効果が期待できる。 基本的な知識についてコーチが解説しよう。
ランニングは、心身両面で健康上のメリットが得られるアクティビティとして人気を集めている。 しかし、毎回同じペースで走っているならペースの変更がもたらす恩恵とは無縁のままだ。 いつも最速のペースで走っていると、体への負担が高まりけがの原因にもなりかねない。
人間が走るときの最高速度はおよそ時速44km、これは短距離走者のウサイン・ボルトが2009年に100メートル走で世界記録を樹立した際に到達したペースだ。 もちろん、普通のランナーには近づくことすらできない速さであり、ボルトでさえ、彼のキャリアの中でこの水準に達したのはごく短い期間だった。 こうしたハイスピードのランニングは持続可能ではない。 「どんなにベテランのランナーでも、ゆっくり、楽なペースでたくさん走る必要があります」と、ランニングコーチのデイブ・リドリーは言う。
ポイントはランニングペースに変化をつけること。これはどんなランナーにとっても重要だ。 「さまざまな種類のランニングでペースを変える主な理由は、トレーニングのピリオダイゼーション(期分け)のためです。そうすることで、ランニングを最適化し、レースの日でも目標を達成したい日でも重要な場面で最高のパフォーマンスを発揮できます」ランニングコーチのリディア・オドネルはそう話す。
では、自分に最適なランニングペースはどれくらいで、それを見極めるにはどうすればよいのだろう? リドリーやオドネルをはじめとするNikeのランニングコーチが、プロセスと重要性について説明する。
目的や目標を意識する
ランニングに出かけるときは、毎回、目的や目標を意識しよう。 目標に応じて、走るたびにペースを変える必要がある。
「すべてのランには目的があり、ペースがあります」とオドネルは言う。 「それぞれのランの目的を知っておくことは重要です。そうすれば、そのセッションの強度とペースに基づいて正しい走りを実践する絶好の機会になります」
オドネルによると、ランニングはトレーニングの目標別に、長距離ラン、スピードラン、リカバリーランに分類される。 「長距離ランで何よりも重要なのは持久力をつけること」であり、このランの目標は快適で持続可能なペースを維持することだと説明する。 スピードランについては「ペース、筋力、スピードを向上させ、目標であるレースペースに近づけること」とのこと。このタイプのランは強度を高めて目標の達成を目指す。 そしてリカバリーランは、ゆっくりとした「楽な」ペースで走る。「その前のハードなランからの回復や、次のランに向けた準備といった効果があります」と彼女は指摘する。
ロングランやリカバリーランの最中に息切れしやすい場合は、ペースの見直しが必要だ。
「楽なペースのランとリカバリーランを始めるときに最もよくある間違いは、軽く走る日なのにペースが速すぎることです」と、ランニングコーチのジェス・ウッズは言う。 彼女が推奨するリカバリーランのペースは、3kmレースを走るときより1マイル(約1.6km)あたり2~3分、遅いペースだ。 「ハードに走る日とメリハリがつくように、楽に走る日は楽なペースを守りましょう」とすすめている。
適切なシューズを履けば、ランニングがより快適になるはず。 ロードレース用にデザインされたアルファフライ 3はマラソンランナーにおすすめだ。
短距離走用の新しいシューズを探しているなら、ナイキ マックスフライ 2 ブループリントがおすすめだ。
長距離に対応する最速のトラックスパイクに興味があるなら、ナイキ ドラゴンフライ 2 ブループリントが最適な選択かもしれない。
快適に感じるペースを土台として設定する
最適なランニングペースを把握しておけば、いつも速すぎるペースで走ることもなくなり、持久力を高めながら必要なときにベストな走りができるようになる。 それぞれのタイプのランで最適なペースを見つけるにはどうすればよいだろうか?
初心者ランナーはそれを知るのに時間がかかるだろう。 「一番よい方法は、自分にとって快適なタイムを目標とすることです」とオドネルは言う。 このタイムの基となるのは、体力、経験レベル、現在のランニング能力とコンディション、そしてランニングが体に与える影響だ。
走りながら誰かと会話を続けられるなら、それは快適なペースで走っているということだ。 オドネルによると、これが基本的な指標となる。 「ジョギングというより、達成できそうだと感じるペースです」と彼女は説明する。 このペースが決まったら、1kmあたりのタイムを30〜90秒ほど遅くしたり速めたりして、自分にとっての遅いペース、速いペースを把握しよう。
また、ウッズのおすすめは自分だけのベンチマークテストの実施だ。3km走ってみてから、ペース計算ツールを使って安定したペースを割り出す。 これで、レースのコースの長さやその他の距離でのランニングペースが決まるので、最初の目安として参考になる。
時間をかけて習得する
「ランニングのリズムに慣れてくると、自分のペースや、異なるタイプのランでのペースの変え方を理解して快適に走れるようになります」とオドネルは言い、さまざまなペースを試してみるのも効果的だと付け加える。 「マラソンに向けて練習しているわけではない人も、マラソンのペースで走ると短い距離での持久力を強化できるかもしれません」と彼女は説明する。
ランニングは簡単ではないが、諦めずに走り続ければ徐々にポジティブな変化が見られるはずだ。 「ランニングによる影響に体が慣れて、メンタル面でも困難に打ち勝てるようになるには、時間と忍耐が必要です」と彼女は言う。 「時間をかけて、こうした課題を乗り越えていくことが重要です。ランニングに夢中になり、できればずっと続けられる運動だと思えることが目標ですから」
ペースの変更はあらゆるタイプのランナーに恩恵をもたらす
ペースは人それぞれ違って当然であり、それは「初心者からベテランまで、どんなランナーにも当てはまります」とウッズは言う。
ペースの変更は、初心者とベテランの双方にメリットをもたらすが、その内容には違いがあるかもしれない。 「ランニングのメンタル面での調整に関して言えば、初心者ランナーがランニングを楽しむための有効なアプローチの1つとして、トレーニングに変化を加えることが挙げられます」とオドネルは話す。 「さまざまなペースで異なるタイプのランに挑戦すると、毎回やることが違うので、ランニングへの集中とモチベーションの維持に役立ちます」
ペースを変えることが有効である理由は他にもある。 出産可能年齢の女性は、月経周期によって引き起こされるホルモンの変動に合わせてペースの調整が必要になるかもしれない。 「ホルモン変動の影響を受けやすい人は、周期の中で、回復に時間がかかり推奨されるペースまで引き上げるのが難しい時期が来るので、そのときはペースを落としましょう」オドネルはそう説明する。 「そうすれば、生理機能だけでなくトレーニングも最適化できます」
ベテランランナーは、ペースの切り替えによって練習のバリエーションが増え、少しずつランナーとして強くなれる。 「これはトレーニングのピリオダイゼーションに関連します。ピリオダイゼーションは、トレーニングのブロック内だけでなく、週の中でも重要な役割を果たします」とオドネルは話す。 「ピリオダイゼーションによってトレーニングの一貫性が実現します。そして一貫性は、さらに優れたランナーになるための鍵なのです」
文:エリカ・ブルック・ゴードン